3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

164章 正解のない問題

 一通り軽食に手を付けてティータイムを満喫して、
 現状からどうするかの話し合いを続ける。
 なお、結界内部の状態は【中央】に細かな監視はされていないが、
 転送装置には擬似的な戦いの情報を送っている。
 あまりに情報が送られないと【中央】による世界ごとの消去が始まることを恐れての処置だ。

 「情報が送れるってことは隔絶した結界ではないってことなんですか?」

 「ああ、結局この装置を使えばケイズを【中央】に送れるわけだからね。
 かなり困難ではあるけれどもパスがあれば外部との伝達が可能な結界。ってとこだね」

 指先で転送装置を弾きながらデルスが説明をする。

 「さて、これからどうするのが一番いいのかなぁ。
 個人的にはきちんと情報を開示した時に【中央】がどういう反応をするのかは興味がある」

 「それは危険だろ、もし排除の方向になったら誰がその事実を広めるんだ?」

 「もう君の種は発芽してるし、あとは最後のスイッチだろ?
 それに僕のワールドクリエーターは定期的に僕自身で触らないと維持できないよ、
 それが交渉条件にならないかな?」

 「封印されたり洗脳されたりする可能性は?」

 「そんな状態で触ってもあのプログラムは動かないようになってるよ、
 僕が僕の意思で触ることが大事なんだ」

 「想像もできないが、デルスがそう言うならそうなんだろう、だがそれでも危険だ」

 「そこには保険もかけてある。今実際に君たちが見ている僕。コレが保険さ」

 デルスは自分の胸に手を当てる。

 「さっきも話したけど、この体は特別なんだ、ゲーム内のキャラとは違う。
 完全に今も外にいるデルスと同一の存在なんだ。
 コピーじゃない、霊体でもない【魂の回廊】と僕は名付けたんだが、それがつなぐ同一存在なんだ」

 「【魂の回廊】?」

 「ああ、僕達の存在を作り出す魂、これは特別な力を持っている。
 感情や感動により生産されるエネルギーは多分コレが関係している。
 この回廊はたとえ完全に隔絶した障壁を隔てても魂間の情報の行き来を可能とする。
 ワールドクリエイターを通して僕はその存在を知ることになり、
 そしてそれを利用した同位体を創ることに成功した。それが、今の僕さ
 そして同時に外の世界でヴェルダンディさんやアルスさんと一緒にワタルを応援しているデルスと情報の共有が出来ているんだ。」

 「やはり君は天才だな。そんなものの存在は悠久の時間の中で気がついた者などいなかった……」

 「ワールドクリエイターの基礎理論と絡んでいたからね、ま、発見は偶然だけど。
 なんにせよ、この方法なら外にいるデルスで【中央】と対話して、何かをされたとしても別のデルスが無事なら何の問題もないってことだよ。
 この世界に関して言えば【世界樹】の権限は何者よりも僕が上だ。
 たとえ【中央】でもワールドクリエイター内では僕のほうが権限を持つ」

 「そういえば【世界樹】にも関与している種は除去したのかい?」

 「ああ、でもあの案は面白いから僕の手でやろうかと思ってる。
 全ての世界の並列多元世界化は夢があるね、今の【世界樹】のシステムなら可能だろう」

 「そうなると【中央】との正面から対話していくという方向でいいんだな。
 俺は自分の身がどうなろうが別に気にしないが、
 万が一の可能性だってあるんだぞ?」

 「そうだね、リスクが無いわけじゃないんだよね……」

 「あのー……」

 今まで完全に傍観者になってしまっていたワタルが恐る恐る発言をする。

 「何となく今聞いていた話からすると、その中央と話す役目って……
 僕達が丁度いいんじゃないんですか?」

 「それは……」

 「デルスさんならこの世界の中の人物なら再生も可能ってことですよね、
 俺達が行けばリスク無いじゃないですか」

 「確かに君たちは外の世界にもいけるから可能だけど、
 なんか親が子供を危ない橋渡らせているような気分になるんだよね……」

 「それに、この状態で君たちが行ったらどっちにしろデルスが絡んでいることは【中央】の知ることになると思うのだが」

 「そこは外に流しているデータで戦いの激しさから時空の亀裂に巻き込まれたとかなんとか、
 その過程で外の世界の真実に気がついた的なご都合主義で……」

 「……なんか、それありな気もしてきたな……」

 「そもそもこの結界から出られるのか?」

 「それは、ちょっとバックドア作ってあるから可能」

 「結構黒いなデルスは……」

 「勝手にこの世界を消すとか決められて不愉快だったからさ、
 とりあえず方針としてはワタル君たちとケイズが激しい激闘のさなか、
 次元に干渉して外世界へと偶然繋がる裂け目に落ちてしまい、
 その過程で外の世界の真理を知ることになってしまい【中央】にその真意を確かめに行く。
 こんなシナリオになるのかな?」

 「いかにもRPGなストーリーでいいですね!」

 ワタルはちょっとワクワクしていた。
 本来なら王道RPGのラスト的な展開を期待していたのに、
 小難しい話がずーっと続いてものすごく消化不良になっていた。

 「ケイズの種と僕の【世界樹】の力でもし万が一の場合は【中央】をワールドクリエイター内に引きずりこんでしまおう。その上で神達に情報をさらけ出す……」

 「作戦は決まったな。まぁいざとなったら俺は覚悟は決まっている。スイッチを発動させるさ」

 「外部への情報を作ったりするから少しだけ待機していてほしい。
 君たちの魂の保全も完璧にしておかないとね。
 それからは君たちの動向をしっかりと見守っているよ」

 デルスの目の前に多数のコンソールが現れ、すぐにそれを操作し始める。
 興味深そうにケイズが覗き込んでいる、時たま言葉を交わしたりしているが専門的な話しすぎてワタル達には理解ができそうになかった。
 なんにせよ、方針は決定した。
 おそらく最後の戦いになるであろう舞台の幕は上がり始めていた。



 

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