3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

163章 重なる思考

 「【中央】の監視って言い方をするってことはデルス氏も【中央】に疑問を持っていたということか?」

 明らかに興奮気味にデルスに話しかけるケイズ、
 いままで自分以外この考えに賛同するものもおらず、一人で戦ってきた彼の初めての理解者になりうる存在に興奮を隠し切れないといった様子だ。

 『ワールドクリエイターを作っている時から変なエネルギーの流れは感じていたんだけど、
 今回の件で【世界樹】を通して【中央】へのアクセス権の一部を手に入れていたから、
 ワールドクリエイターは【中央】が気持ち悪いくらいに協力的で、
 裏がわかると色々なことが符合していったんだ。
 その過程でケイズ氏の種も気がついたんだけど、
 同時に彼の狙いにも気がつけた、と言う訳さ』

 「おお……ようやく、ようやく、俺は、俺の考えを理解してもらえる人に出会えた……」

 『あ、でも僕のプログラムに手を出したのは許してないから』

 感極まっているケイズに容赦なく冷たいセリフを浴びせるデルス。結構クールだね。

 「あ、ああ。そ、それはすまなかったと思っている。
 しかし、他に方法が……」

 『うん、それは聞いててわかった。でもプログラムは自分の子供みたいなものだから嫌だ。
 まぁいいや、今はそれどころじゃないからね』

 ケイズは初めての友達にそっけなくされたみたいに少ししょぼんとしている。

 『とりあえずケイズは【中央】の正体についてはどこまで掴んでいるの?』

 ケイズと呼び捨てされたのに嬉しそうに顔を赤らめる、気持ち悪い。

 「あ、ああ。そうなんだよデルス! 正体、正体だったな。別次元の存在、そこまでしか正直わかっていない、ただ周囲の約500光年の範囲に幾つもの我々の餌や肉体のための工場を持っていて、
 それらから自在に物資を利用していることから、高次元な存在であることが示唆される」

 呼び捨てされて明らかに嫌そうな顔しているのをワタルは見逃さなかった。
 ケイズは友達創るのが下手なタイプだなと瞬時にわかる距離感を取るのが下手だった。

 『そうだね、僕もそう思う。ただ、なんか意思みたいなのが感じられないんだよね。
 必死さも対してないし、機械的にエネルギーを送っているのに、あっちからの指示とかがあるとは思えない。こっちの状況の変化に任せている感じで関与は大してしてきてないんだよね。
 まぁ、感情の動きを吸い取られるのは困ってしまうけど、
 与えられているものから考えると、ある面で古いシステムの税金みたいな物なのかなとも思う』

 「ライフラインの代わりにその対価としてのエネルギー供給だとデルスは言うのか?
 しかし、感情の変動もなくただ生きている生に執着して、それで生物として正しいのか?」

 『そこは哲学みたいな話になってきてしまうから、
 個人個人によって見解は異なるんだと思う。
 ケイズはその情報を公開しようとして実際に妨害されたことある?』

 「我々のライフラインを握っている奴らの不利益になる情報を広めたら何らかの処分が来るのは当然だろう?」

 『つまり、実際には行動はまだ起こしていないし、妨害も受けていないってことでいいのかな?』

 「まぁ、そうだが。しかし今回の事があるじゃないか!?」

 『それ、たぶんワールドクリエイターを破壊しようとしてるからって思ってるんじゃない?』

 「……ぬ……確かに、そうかも知れない……」

 『彼らからしたらエネルギー供給の鍵となるこの世界を壊そうとすると困るから止めようとしてるだけで、別に情報を止めようとしてるわけじゃないんだと思う。
 デルス君の治療もかなり一生懸命やってくれているしね』

 「し、しかし! そ、そうだ! 情報の隠蔽についてはどうなんだ!
 エネルギーを送付していることを皆に知らさず、無気力症候群なんて虚偽の発表をしている!」

 『そうだね、それは確かに【中央】に非がある点だろうね。
 あ、ワタル君僕もスコーンとアップルティーがいいな』

 完全に二人の話になっていたので、ワタル達はすでに戦いの状態を解除してテーブルに軽食を広げて二人の話に耳を傾けていた。

 「え? 飲めるんですか?」

 『あ、うん。ちょっとまってね実体化する』

 ホログラムのようだったデルスの姿がハッキリとした姿になっていく。
 よっ、と地面に降り立つとテーブルにつく。

 「ケイズも座りなよ、今後の事を考えてどうするか、長くなりそうだし。
 ワタルくんの料理はそれこそ心が踊り出すほど美味しいよ?」

 「あ、ああ……」

 ケイズも遠慮がちに席につく。

 「どうぞ、コーヒーか紅茶か何か用意しますか?」

 「それではコーヒーで」

 カイが二人にスコーンやサンドイッチを載せた皿と、香ばしい香りのアップルティーとコーヒを置く。
 デルスはひとくち食べるとうんうんと頷きながら楽しんでいる。
 ケイズは恐る恐る一口くちに入れるとカッ! と目を見開いて残りを一気に口に入れる。
 あまりに急いで食べるから喉につまり、コーヒーで流し込む、
 そしてコーヒーの味と香りにもまた目を見開いている。

 「な、なんという美味! 与えられた情報とは別格だな!」

 「そう言ってもらえると嬉しいです」

 「哀れな羊だ何だと言ってしまったが、このような素晴らしい物を創るのだ。
 我らよりも遥かに優れた存在だな!」

 ケイズの発言はデルスには意外であった。が、同時に嬉しくもあった。
 

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