3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

162章 問答

 「もっと他にやり方はなかったのか?
 ゲームを不法にいじれるツールを配るなんて方法以外に……」

 ワタルは言っていることを全部信じたわけではないが、
 【絶対者】の言葉に聞くべき部分を見出していた。

 「いろいろ考えたさ、情報の配信に関しては必ず【中央】の検閲がはいる。
 奴らに不利益な情報は広げることが出来ないばかりか、
 自らを危機に晒す、全てのネットワークに奴らの目がいたるところに張り巡らされている、
 その網目をかいくぐって神達に【中央】の情報を広げる、
 さらにそれを事実だとわかってもらうのにどれだけの時間がかかる?
 もうすでに洗脳に近く【中央】に管理されているんだよ俺たちは。
 与えられた情報を疑うことなく信じて、自らの頭で考えることもしない、
 【中央】の発する言葉だけが真実でそれ以外など妄想としか捉えられない……
 しかし、そこに光明が生まれた、ワールドクリエイター。
 ほぼすべての神がそのプログラムを利用し、
 しかも自らが作り上げた世界の中で擬似生活を送っている神が大多数だった。
 これしかないと思ったんだよ、ツール用パッチとしてプログラムに芽を植えていく。
 しかもそのプログラムはややダーティな面を出したほうが、
 製作者の姿が表に出ないことに正当性をもたせられる。
 悪辣なプログラムだから徹底して足跡を残していない、
 そういう印象を植え付けることで、本当の意図を隠すことに成功した。
 そして同時に中枢管理システムを利用して多くの神のところのに芽を植え付けていく。
 可能なら【中央】に芽を植えたかったんだが、それはガルゴ氏のおかげで可能になった。
 まぁ、彼もあのように処分したように見せたが、きちんといつでも体に戻せるさ、
 俺の目的のために犠牲になってもらうわけにはいかないからな、
 俺だけでいいんだよ。犠牲、いや、救いなのかもしれないがな。
 まぁ、【絶対者】のイメージを利用するから乱暴なことも言わねばならない。
 俺はな、救いたいんだよ。奴らから俺たちの魂を……」

 小声でリクがワタルにつぶやく、

 「あのさぁ、ほとんど話はわからないんだけど、
 なんかこの人悪い人じゃないように思えるんだけど……」

 「うーん……」

 正直ワタルもどうすればいいかわからなくなっていた、
 ワタルの中ではラストバトルをドカーンとやって、悪の魔王を倒し、世界は平和になり、
 みんなで平和に暮らしていきました。めでたしめでたし。
 こんな事を想像していた。
 実際に蓋を開けたら、いきなりの超展開、
 いままで聞いたこともないような話がマシンガンのように撃ち込まれて、
 思考回路はショート寸前からショートしてしまっている状態だ。

 「ユウキ、どう思う?」

 「……正直、今はじめて聞く話が多すぎてまとまる考えもまとまらない状態だね。
 とりあえず、プランAは無くなったかな、【絶対者】を倒して平和エンドはね」

 ユウキもワタルと同じようなこと考えていたようだ。
 ワタルはにやりと笑い聞き返す。

 「プランBは?」

 「そんなもんねぇよ、ね。懐かしい」

 昔二人でやったゲームのセリフだ。

 「ともかく、貴方の言っていることが本当だとすると、私たちには考える時間と、より詳しい情報が必要になります。そもそも貴方は【中央】に送ってくれといいますが、
 もうすでに【中央】にも芽を生やしている、あとは発芽を待つだけだと思うのですが、
 発芽とは具体的に何なのですか?」

 「やはり、貴方は聡明だな……。
 俺が蒔いた芽が花開く時、奴らとの次元間エネルギー転送システムを停止し、
 神々からのエネルギー供給装置も停止する。
 同時に神々への各種インフラも停止することになる。
 今の神々でその状況で生きていけるものは少ない、
 そうなればワールドクリエイター内へと逃げこむはずだ。
 あのデルス氏はまごうことなき天才だ。
 独立して自ら永遠に動き続ける【世界樹】のシステムのもとに、
 我々は終わりのある真の生きる事を手に入れ、奴らの奴隷の首輪を手に入れることができる。
 そして、ワールドクリエイターで作られた世界は全て一つになり、
 我々も含め全ての生命が当たり前の生命の誕生と終了を享受して必死に生きていくのだ。
 それこそが私の望みなのだよ」

 『過大評価されてるなぁ……』

 「誰だ!?」

 突然の第三者の声に【絶対者】も驚く。

 「ワタル君ちょっとポケットから出してもらえるかい?」

 その声はワタルの持つ【絶対者】を転送するための装置からしていた。
 ワタルがその装置を出すと空中にホログラムが浮き出る。

 『君が【絶対者】か、はじめまして、僕はデルス。ワールドクリエイターの製作者だよ』

 「ほう、貴方が……お初にお目にかかる。私は【絶対者】と呼ばれている、
 名を名乗るならケイズと言う」

 「ど、どうしてデルスさんが!?」

 『話すと長くなるんだけど、この僕はデルスであってデルスで無いんだ、人工知能ともまた違う、
 もう一人の僕としか言いようが無いんだ。
 外とは隔離されているから、ここなら【中央】の監視の目もごまかしやすくなると踏んだんだ』

 「私は頼まれてたから知っていたんですけどね、なるべく【破壊者】、
 ケイズさんから情報を引き出すように頼まれていたの」

 ユウキだけは知らされていたデルスの乱入によりケイズとの問答も確信に近づいていく……


 

「3人の勇者と俺の物語」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く