3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

157章 罠

 【統率者】デルス。世界ワールドクリエイターるの製作者。
 全ての欲求が満たされ、退屈な病に侵されていた神達に生きる活力である娯楽をもたらしたもの。
 あまりの大物の登場にワタル達は逆に冷静になっていた。

 「はじめまして。だからみなさんそんなにカチカチなんですね」

 「ははは、僕は気にしないで欲しいんだけどね。
 ただいろいろと作るのが好きでたまたま楽しそうな物ができたから皆でやってみようかなって思ったら、
 ものすごく支持してもらえただけだから」

 「い、いやいやいや! あんなものを作れるなんて信じられない天才ですよ!!」

 ジュラが上ずって早口でまくし立てる。
 彼女のデルスへの崇拝にも似た感情は今極地に至っている。

 「僕はあまり外に出ないでソフト弄くってるのが好きだから、【統率者】の他のみんなに実務を任せっきりだからね。今回はネットワーク全体が壊されたら哀しいから頑張るよ」

 「きょ、恐縮です!!」

 「ネットワーク全体?」

 「ああ、このワールドクリエイターを管理しているのは【世界樹イグドラシル】って呼んでる君たちの世界で言うところのパソコンの集合体によって行っているんだよ。
 【絶対者】達の最終目標は【世界樹】の乗っ取りなんだよね。
 それをされてしまえばすべての世界、全ての神の力を自由に【絶対者】がいじれるようになっちゃうんだ。そうすると、ガルゴみたいに実世界の精神、魂を握るのと同じなんだ」

 「そ、そういえばガルゴはどうなったんですか?」

 デルスの代わりにジュラが答える。

 「ガルゴは今眠っています。精神、魂というものをこわされてしまっており、
 現在治療中です。目が覚めるかどうかはわからないそうです」

 「今回の件で我々【統率者】もかなり叩かれてね、【絶対者】に手を貸すのが悪いって言ってくれる人もいるんだけど、それでももう【絶対者】を野放しにはしておけないんだ。実世界に危害を加えた以上もう許されることではない」

 「今回の件で我々の世界を管理している【中央セントラル】が動いてくれて、
 【絶対者】の実体はすでに抑えています。問題はワールドクリエイター内に逃げ込んだ霊体アストラルボディと呼ばれる精神体の確保なんです」

 ジュラは一口紅茶を飲むと更に続ける。

 「前にも話したとおり、我々はその霊体さえ無事であれば肉体を変えることも出来ますし、全く別の人間として生まれ変わることも出来ます。もちろん勝手にそういったことをやるのは【中央】によって禁止されていますが、やろうと思えば誰でも出来ます」

 「【中央】に手伝ってもらうことによって霊体の位置のトレースが可能になり、
 【世界樹】によって今霊体をある世界に誘導しているんだよ、今日はその報告なんだ。
 もう、わかったと思うけど、最終誘導地点はこの世界。【絶対者】が唯一足跡を残したこの場所が最も適しているという事になったんだ」

 「それで……」

 「ジュラ様それは私から言います」

 今までカチコチに緊張していたヴェルダンディが口を開く。

 「【中央】はこの世界に霊体を閉じ込めたことを確認したらこの世界ごと霊体を引きずり出す事を計画しています。それが行われれば、この世界は消滅します……」

 膝の上で拳を握り震える声で絞り出すように告げる。

 「それは、どうにかならないのですか?」

 「僕たちは【中央】に逆らえない。それでもなんとか出来ないかいろいろと考えたんだ、
 その結果、唯一この世界が残る可能性がある方法を創りだした。
 それがこれなんだ」

 デルスが机の上に置いたのはふわふわとキューブが浮いている置物だった。

 「これを展開すると半径10メートル以内の空間を完全に閉鎖し、固定する。そしてその後【中央】へと転送される。これを使って【絶対者】の霊体を捉える。それができれば世界ごと回収という方法は取らない、そう【中央】と約束を取り付けた」

 「問題は、【絶対者】の霊体を確実に取り込まないといけないこと、そして、展開に時間がかかるのです。その間そのエリア内にとどめておかないといけない。さらに、その戦いに我らは参加できません。
 この世界に【絶対者】が誘い込まれ侵入した時点で神の関与が出来ないように世界を閉じます。
 つまり、この世界は女神の加護を失います」

 「すみません、これしかこの世界を残す方法がなかったのです……」

 ポタポタとテーブルにヴェルダンディの涙が落ちる。

 「償いではないけど、その世界封鎖の前に今の世界の外界に未開拓の世界を増設する事になっている。
 戦いの場所はそこになる。人口増加に伴い新天地開放ができるようになった、君たちの世界の人間が数世紀かけても踏破出来ないほど僕自身で作りこんだ自信作ではある」

 コンコンとテーブルを叩くと女神ヴェルダンディの納めるバスタールの世界が空中に映し出される。

 「これが今の君たちの世界だ、今は外界へ行こうとすると謎の力で戻されるが、
 これが、こうなる」

 デルスが何かを操作すると平面だった地図は球状に変化して自分たちの世界が、
 簡単にいえば日本くらいの大きさだった以前の世界の周りに地球上の大陸のように海上に浮いた幾つもの大陸が作られている。あまりの縮尺の変化にこの世界がどれだけの広大な物か想像もつかなかった。

 「あまり、見ると冒険の楽しみがなくなるな」

 ぱっと地球儀が消える。

 「今の世界のそばの大陸に【絶対者】を誘導する。すぐには出られないように周囲5キロほどは簡易結界で包み込み、その内部で君たちは【絶対者】の霊体を封じ込めてもらいたい」

 「……選択肢はないんですよね。世界ごと消すか、俺らが頑張って封じ込めるか、どっちかってことなんですよね」

 「ほ、ほんどうにもうじわけありません……」

 ヴェルダンディはぼたぼたと大粒のナミダを流している。
 アルスが優しく肩を抱いている。

 「ヴェルダンディさんが謝ることではない、私の実力不足、それをこの世界の人間に背負わせてしまうことは申し訳ないと思う」

 「やるしかないよワタル!!」

 「そう、やろう。子どもたちのためにも」

 「あの世界に生きるみんなのためにも、私達が頑張りましょうワタルさん」

 「俺はやるぞワタル! セイと愛する子どもたちの世界を壊す訳にはいかない!」

 「まだまだ作りたいものもあるし、あの世界が好きだから、バッティも頑張っちゃう」

 「ワタル様の御心のままに……」

 ワタルは拳をぐっと握りしめる。

 「分かりました、俺達で【絶対者】を封印します」

 女神の盾の最後の大戦が始まろうとしていた。

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