3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

156章 新たな世界

 「わたるきゅーーーん!!」

 体の右側は漆黒のスーツ、左側はまっピンクのヒラヒラのドレスというわけのわからない生物が手を振っている。もちろんバッツなんだけど、あごひげが立派になって坊主頭にガッツリと真っ赤なタトゥーを入れている。正直首から上は戦闘部族のようだ。それがくねくねと手を振っている。

 「なんか皆集まるのは久しぶりねー、子どもたちは?」

 「ああ、スタッフに任せてきたよ。戦いになる可能性もあるからね」

 「バッティーなんかまたかっこ良くなってるねー」

 「バッティ、その服すごいね」

 「バッツさんのデザインした服は大人気でなかなかてにはいらないんですよねー」

 久々の集合に皆テンションが上がる。
 ワタルは一時の平穏の時のあいだに皆と盛大な結婚式を上げ新婚生活を送った。
 多忙ではあっても商会自慢の看板商品をふんだんに使い夫婦の時間を大切にした。
 その結果。

 ワタルはリクとの間に長男、次男。
 カイとの間に長女、長男。
 クウとの間に長男、長女、次女。
 カレンとの間に長女、次女、長男。
 ユウキとの間に長男、長女。
 ゲーツとの間に長男、次男、三男。

 なんと7年の歳月が経って15人の子供のパパになっていた。
 バルビタールとセイの間にも長男、次男、三男、長女が生まれている。

 「ワタル様バルビタール様も到着しました」

 カレンが未だに衰えることのない万里眼でバルビタールの到着を教えてくれる。
 バルビタールと話している時には注意しないといけないことがある。
 子供の話題を出すと1時間ぐらい子供自慢と惚気を聞かされるのだ。
 全員すでにその洗礼を受けているのでもうその過ちはおかさない。

 「ワタル、久しぶりだな。元気にしていたか? そういえばうちのこ……」

 「やあ!! バルビタール! 元気にしていたか! ヨシ! 皆揃ったし塔へ入ろう!!」

 「あ、ああ……そうだな。しかし、とうとうこの日が来たか」

 「まだ何の話かは聞いていないけど、たぶんあれの話だと思うよな……」

 女神の盾のメンバーはこの七年、出産による休息はあるものの厳しい鍛錬を続けていた、
 副産物として優秀な武官も多数産出している。
 各国にてその手腕を遺憾なく発揮しており、七年前よりも全員が肉体的な成長も相まって強靭な強さを維持、向上している。
 もちろん、いずれ襲いかかる可能性のある【絶対者】との戦いのためだ。

 現在この世界は四カ国の王が全て協力体制にあるために戦争というものは起こらず、
 またワタル達のおかげで食料生産、生活レベルの向上、医療知識、技術の向上、
 魔道具をふくめて様々な技術革新が急速に行われており、
 人口は爆発的に増加している。
 栄養状態の改善から出生率や出産後の健康管理も遥かに改善されており、
 空前のベビーブームが訪れている。
 いち早く子供向けの商品開発に尽力していた女神の盾商会は莫大な利益を上げる。
 これはユウキからの助言によるものだ。
 同時に教育部門を創設している。幼少期の教育を積極的に行う。
 これは単純な利益を生むというものではないが、上等教育を受け優秀な人物を商会に青田刈りできるというメリットが有る。
 なんといっても人というものは最大の財産である。
 七年という月日は冒険者達も若い冒険者が高い教育と訓練を受けて一人前になるのに十分な時間であった、今ではたくさんの腕利きの冒険者が各地のダンジョンや地方魔物の征伐を行い、
 それもまた国土を潤わせている。
 カイとワタルの組み合わせによる土壌変革はまさに神の奇跡と呼ぶにふさわしく、
 圧倒的速度でありとあらゆる土木工事が進められる。
 人間超重機、ワタルは自分のことをそう呼んでいるほどだ。
 農地改革を最も得意としているが、鉱山発見、整備、治水などありとあらゆることにその能力を思いっきり奮っている。

 そんな順風満帆にみえる女神の盾にも不安はある、
 自分たちは実際に神と対話しまだ大きな敵がいることを知っているのだ。
 しかも敵は神である。
 それ故にいつでも強大な敵に対抗できるように鍛錬を欠かさず、また世界全体を神との戦いに抵抗できる組織として成長させていく必要性があった。
 紹介を通しての経済活動やメンバーによる人材育成は全てそのためと言っても良かった。

 そしてとうとう女神の盾は女神ヴェルダンディからの招集の日を迎えることとなった。

 懐かしの女神の塔へ入り休憩所へ続く扉を開けると、
 以前にも来たことがあるジュラの部屋へ通じていた。

 「そちらでは七年たっているのでしたね、お久しぶりです皆さん」

 そこで待っていたのはジュラとヴェルダンディ、アレスそしてもう一人初めて見る男性だった。
 長い黒髪を後ろでまとめており、下半分しか縁のない銀色のメガネ、
 開いているのか閉まっているのかわからない糸目だが、全体として知的な雰囲気を醸し出している。
 肌が白いのが目立つが身長は190cmはありそうだ、ただものすごくスリムだ。
 以前の時もヴェルダンディとアレスは緊張していたがこの日は更に緊張した面持ちであった。
 それはジュラも同様だった。その理由はその男性の言葉で明らかになる。

 「はじめまして、今回の作戦に巻き込んでしまって申し訳ない。
 私がこのワールドクリエイター開発者、【統率者】の長を努めさせてもらっているデルスです」

 

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