3人の勇者と俺の物語
154章 生きている。
テーブルに広げられるたくさんの料理、
立ち上がる香りは鼻を楽しませ、胃がそれを早くよこせと暴れだす。
見た目が眼を楽しませる、口の中いっぱいに唾液が溢れてくる。
「それではどうぞご賞味下さい」
「……!? 美味しい……」
神である3人はぐっとその味を確かめるようにゆっくりと飲み込む。
「味も素晴らしいけど、歯ざわり、舌触り、飲み込む際の感覚。
食事が素晴らしいものだと教えてくれるようです……」
「理想の味をデータとして取り込んで、理想の栄養素を摂取しても、
食事というものの楽しみは全く別なんですね……」
「体に悪くても、油は美味しい、しょっぱいものは美味しい、甘いモノは美味しい。
熱々のご飯の上に油の滴る肉を乗せて掻き込む、なんという悪魔的な美味しさだ……」
「誰かが自分のために作ってくれたというのも嬉しいですね、
こうして皆で食卓を囲むのも……やはり、我々は永遠の安定を手にする代わりに大切なものをたくさんなくしてしまった。ワールドクリエイターでもそれを強く感じさせられました……」
「不完全で、うまくいかないで失敗ばかり、でもその過程があるからうまくいった時の達成感と言ったら……失敗など無駄となにも挑戦することもなく生きていた頃がもったいないです……」
「生きているのではなく、ただ生かされていた。あの頃を振り返ると強くそう思います」
「なんでも出来てなんでも与えられていても、みなさんは満たされていないのですね。
物が満たされていけば行くほど、心が飢えていったのですね」
カレンは一息をつくとそう切り出した。
「エルフもそういった面があるの?」
リクの問いかけにカレンは頷く。
「長寿になるといろいろな欲は魂を汚していく、すべてのものに感謝をしながら平穏に暮らす、
コレがエルフの考え方です。ただ、それを退屈に思う若いエルフなんかは私みたいに冒険者になったりしますね。やはり刺激は求めるものなのでしょうね」
「好きな体験や活動は全て脳内で完結してしまうからな、そうすると虚しくなってくるんだ。
だからといって実際に体験できる環境はすでにないし……」
アルスは痩せの大食いのようで未だに色んな物を皿にとっては楽しんでいる。
先程までと変わってその顔には笑顔が絶えない。
ワタルの料理が素晴らしいことも大きな要因ではあるが、
人と話しながら食事を囲む、その当たり前のことが幸せになる。
そんな未来もあるのかもしれない、ユウキ辺りは思うことが多かった。
ワタルの料理を家族で囲む未来、そんな未来を妄想しているのはユウキだけではなかった。
「話が大きくそれてしまいましたが、【絶対者】の痕跡を【統率者】を支持してくれる神達で現在解析をしているのです。膨大な数のデータを検証しないといけませんが、それでも人海戦術で今も割り出しているところなのです」
「それこそ無数にあるワールドクリエイターを全てチェックしていく作業ですから、
それでも今まで全く痕跡さえもなかったことから考えればこれ以上ない一歩です。
ワタルたちには感謝してもしきれないのですよ」
「俺達は自分たちの世界のために進んでいただけなんですが、何やらすごいことに巻き込まれて頭が追いついていないです……」
「そうですね、あなた方を神のゴタゴタに巻き込んでしまったことは本当に申し訳ありません。
でも、あなた方と我々がそんなに変わらないこともわかってもらえたでしょ?
あなたの料理に感動して、あなた達と卓を囲むことができるのです、
私も神であることは隠して普通に生活してますから。
自分が作った世界であっても、私が生きていると一番強く感じられるのはこの世界の中でなのです」
物憂げな表情でそう語るジュラは少し悲しげで、それでも満たされているような複雑な顔を見せる。
「皆さんが普段暮らしている世界はどんなところなんですか?」
カイの質問に答えるのはヴェルダンディだった。
「寂しい世界、ですね。すでに生命に関わる事は満たされていますから、
とくに欲求もなく、ただ生きている。そんな感じです。
ワールドクリエイターがなければ私も恋なんて物をするなんて考えられなかったです」
見つめ合うヴェルダンディとアレス……二人だけの世界が広がっていく……
「いいなぁ……」
ボソッっとジュラがこぼしたセリフを聞き逃さないワタルであったが、そっとしておく紳士な一面を持っていた。
他の人たちもしっかりと空気を読んでいた。
「ところでジュラ様、我々は元の世界に戻るわけには行かないのですか?
その、俺は、その、セイに早く逢いたいのだが……」
空気を読めなかった元魔神がここにいた。
モジモジと顔を赤らめる美青年。
なんというか、もげろ! っていうのがぴったりだ。
「あ、ああ……そうだね。多分解析にはまだ時間がかかります。
一度君たちは君たちの世界に戻ってもらうことにしまう。
君たちの世界に迫った脅威は取り除かれたし、再建に勤しんでくれていいよ」
「ありがたい、セイの安心した顔が見られると思うと心が踊るようだ!」
この人こんなキャラだったっけ?
全員そう思わないではなかったが口にだすことはなかった。
立ち上がる香りは鼻を楽しませ、胃がそれを早くよこせと暴れだす。
見た目が眼を楽しませる、口の中いっぱいに唾液が溢れてくる。
「それではどうぞご賞味下さい」
「……!? 美味しい……」
神である3人はぐっとその味を確かめるようにゆっくりと飲み込む。
「味も素晴らしいけど、歯ざわり、舌触り、飲み込む際の感覚。
食事が素晴らしいものだと教えてくれるようです……」
「理想の味をデータとして取り込んで、理想の栄養素を摂取しても、
食事というものの楽しみは全く別なんですね……」
「体に悪くても、油は美味しい、しょっぱいものは美味しい、甘いモノは美味しい。
熱々のご飯の上に油の滴る肉を乗せて掻き込む、なんという悪魔的な美味しさだ……」
「誰かが自分のために作ってくれたというのも嬉しいですね、
こうして皆で食卓を囲むのも……やはり、我々は永遠の安定を手にする代わりに大切なものをたくさんなくしてしまった。ワールドクリエイターでもそれを強く感じさせられました……」
「不完全で、うまくいかないで失敗ばかり、でもその過程があるからうまくいった時の達成感と言ったら……失敗など無駄となにも挑戦することもなく生きていた頃がもったいないです……」
「生きているのではなく、ただ生かされていた。あの頃を振り返ると強くそう思います」
「なんでも出来てなんでも与えられていても、みなさんは満たされていないのですね。
物が満たされていけば行くほど、心が飢えていったのですね」
カレンは一息をつくとそう切り出した。
「エルフもそういった面があるの?」
リクの問いかけにカレンは頷く。
「長寿になるといろいろな欲は魂を汚していく、すべてのものに感謝をしながら平穏に暮らす、
コレがエルフの考え方です。ただ、それを退屈に思う若いエルフなんかは私みたいに冒険者になったりしますね。やはり刺激は求めるものなのでしょうね」
「好きな体験や活動は全て脳内で完結してしまうからな、そうすると虚しくなってくるんだ。
だからといって実際に体験できる環境はすでにないし……」
アルスは痩せの大食いのようで未だに色んな物を皿にとっては楽しんでいる。
先程までと変わってその顔には笑顔が絶えない。
ワタルの料理が素晴らしいことも大きな要因ではあるが、
人と話しながら食事を囲む、その当たり前のことが幸せになる。
そんな未来もあるのかもしれない、ユウキ辺りは思うことが多かった。
ワタルの料理を家族で囲む未来、そんな未来を妄想しているのはユウキだけではなかった。
「話が大きくそれてしまいましたが、【絶対者】の痕跡を【統率者】を支持してくれる神達で現在解析をしているのです。膨大な数のデータを検証しないといけませんが、それでも人海戦術で今も割り出しているところなのです」
「それこそ無数にあるワールドクリエイターを全てチェックしていく作業ですから、
それでも今まで全く痕跡さえもなかったことから考えればこれ以上ない一歩です。
ワタルたちには感謝してもしきれないのですよ」
「俺達は自分たちの世界のために進んでいただけなんですが、何やらすごいことに巻き込まれて頭が追いついていないです……」
「そうですね、あなた方を神のゴタゴタに巻き込んでしまったことは本当に申し訳ありません。
でも、あなた方と我々がそんなに変わらないこともわかってもらえたでしょ?
あなたの料理に感動して、あなた達と卓を囲むことができるのです、
私も神であることは隠して普通に生活してますから。
自分が作った世界であっても、私が生きていると一番強く感じられるのはこの世界の中でなのです」
物憂げな表情でそう語るジュラは少し悲しげで、それでも満たされているような複雑な顔を見せる。
「皆さんが普段暮らしている世界はどんなところなんですか?」
カイの質問に答えるのはヴェルダンディだった。
「寂しい世界、ですね。すでに生命に関わる事は満たされていますから、
とくに欲求もなく、ただ生きている。そんな感じです。
ワールドクリエイターがなければ私も恋なんて物をするなんて考えられなかったです」
見つめ合うヴェルダンディとアレス……二人だけの世界が広がっていく……
「いいなぁ……」
ボソッっとジュラがこぼしたセリフを聞き逃さないワタルであったが、そっとしておく紳士な一面を持っていた。
他の人たちもしっかりと空気を読んでいた。
「ところでジュラ様、我々は元の世界に戻るわけには行かないのですか?
その、俺は、その、セイに早く逢いたいのだが……」
空気を読めなかった元魔神がここにいた。
モジモジと顔を赤らめる美青年。
なんというか、もげろ! っていうのがぴったりだ。
「あ、ああ……そうだね。多分解析にはまだ時間がかかります。
一度君たちは君たちの世界に戻ってもらうことにしまう。
君たちの世界に迫った脅威は取り除かれたし、再建に勤しんでくれていいよ」
「ありがたい、セイの安心した顔が見られると思うと心が踊るようだ!」
この人こんなキャラだったっけ?
全員そう思わないではなかったが口にだすことはなかった。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
63
-
-
0
-
-
37
-
-
157
-
-
149
-
-
841
-
-
3395
-
-
4112
-
-
439
コメント