3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

149章 ラストダンジョン

 【当たり前だけど、罠だぜ。それでも来るしかねーよな。ばーか】

 ご丁寧に入り口に看板があった。
 ダンジョンへの入り口に……

 「ほんっとムカつくねアイツ」

 「性格悪すぎ」

 「絶対女性にモテないね」

 「黒龍さんって話せるの?」

 【なんじゃ?】

 「おお、普通に出てくるんだな」

 【貸してるだけだからな、で、なんじゃ?】

 「このダンジョンっていじれるの?」

 【まぁ、アイツの能力なら出来るんだろうな。【統率者】の加護がなければ改ざんし放題だから、
 たぶん際限なくダンジョンもいじれるんだろうな、厄介なことだ】

 「逆に言えば【統率者】の加護を与えればもういじれなくなるのか。
 それだったらこのダンジョンに閉じ込めて外への影響を防げるな……
 やる価値はあるな」

 「ワタ兄がいい顔してる」

 「ワタルがああいう顔してる時は碌でもないこと考えてるんだよね……」

 「だいたい非道な事言い出しますよねあの素敵なお顔して考えた後」

 (ワタル君はどういう評価なんだ?)

 「だって前にモンスターをマグマで……」

 ワタルがブツブツと考えている間過去にワタルの考えたゲームブレイカーな数々を一同で話す。

 「よし! 皆、協力してほしい」

 いつの間にテーブルを広げて軽食とお茶をしていた一同。
 それからワタルのまたもいい性格をしているプランが提示される。

 「ワタル君も大概だな……」

 「なんか、こっちが卑怯じゃないか?」

 真面目なバルビタールも少し引いている。
 ワタルが考えたダンジョン外部を全て閉じ込めて全部マグマで埋めちゃおう作戦は不評みたいだ。

 「なるべく被害も出したくないし、相手も罠って言ってるし飛び込むのも馬鹿馬鹿しいじゃん」

 「ワタルといると所々で緊張感が無くなるんだよね-」

 「それがワタ兄のいいところ」

 「それでは早速始めましょうか」

 まずはダンジョンへの【統率者】ワクチン投与。
 上位管理者の黒龍がこちらへいる以上それは簡単に、ほんとうに拍子抜けするほど簡単にできた。
 バックドアのあるパソコンへの侵入みたいなものだ。
 ダンジョン全体にガルゴによる改変を受け入れないワクチンが行き渡る。

 【かぁーなんじゃこのダンジョンは、ただただ長いだけ、無駄に大量に罠とモンスター置くだけ、
 センスの欠片もないな】

 散々である。

 「よっし、これで実質このダンジョン内にガルゴを固定できたね。
 そしたら俺とカイとカレン、ユウキでガンガンやってこう」

 黒龍によって得られたMAPからダンジョン全体にマグマで満たされるように生成、流れを操作していく。
 バルビタールはドン引きしていたがワタルは1ミリも気にしていなかった。
 こういうところは図太いというかマイペースだった。
 この送り込んでいるマグマも普通のマグマではない、いろいろなものを使って融点を高めている。
 普通のマグマは1000度くらいだがこのワタル特製マグマは3000度近くまで温度を上げる事に成功している。つまり、壁面の岩もガンガン溶けていく。
 風魔法を使って熱風も全てダンジョン内に送り込む。
 ダンジョン構造を変化させるシステムはすでにこちらで掌握している。
 正直これは無理だろうなと思っていた。普通だったらそこの防御をしっかりとするはずだと思っていた。完全にこちらを舐めているかバカのどちらかだなとワタルとユウキは思っていた。

 黒龍が把握したガルゴのいる場所が一番最後になるように調整されたマグマはダンジョンのほぼ全域に行き渡った。
 意図的に熱を送らないようにしていた防壁を取り除けば凄まじい熱量と高圧に圧縮された熱風がガルゴに噴きつける事になる。

 「その瞬間みたいなぁ……」

 【ん? 見れるぞ。出してやろう】

 首輪から画像が立体的に投影される。
 ガルゴが頭をかきむしりながらダンジョン操作用のコンソールをガンガン叩いている。

 「ぶはっ! あいつ完全に焦ってんじゃん!」

 【なんだよ! なんで動かねーんだよ!! ざっけんなクソゲーだこれチクショウ!!】

 【声も出せるぞ】

 ワタルは腹を抱えて笑っている、ユウキも我慢しているがクックと笑いが漏れる、
 他のメンバーもガルゴの滑稽な姿に苦笑いだ。

 「こんなくだらない奴にあいつらは……」

 バルビタールは少し複雑だ。

 「それでは、防壁を解きます」

 カレンは冷静に仕事をする。

 【ん? 暑いな、ん?? 暑い、熱い!! なんだこりゃ!! 熱い熱い!! 熱風か!
 くそ!! なんなんだよ!!】

 画面の中のガルゴが部屋の中を行ったり来たりしている、

 【クソが! ってなんだこれ!! おい、何だよこれ!!】

 外に出ようとして一面のマグマ、そして少しづつそのマグマが迫ってくる。

 【ふざけんな!! あいつら何しやがった!!】

 そこら中の壁とかに八つ当たりをするガルゴ、完全に癇癪を起こした子供だ。
 ユウキもこらえきれず吹き出してしまう。

 「やっぱりコイツ、ただの我侭な子供だな」

 ワタルは最初に受けた印象を思い出す。
 自分勝手で傲慢、基本的に自分が正しくて悪いことは全部回り。
 どこにでも一人ぐらいはいるどうしようもないタイプの男。
 ガルゴはそういう風にワタルには写っていた。

 「自分に力があると思い込んで、それがうまくいかないと他人の所為にする。
 本当は劣等感の塊。私をからかってる奴らもそんな奴らが多かった」

 ユウキがすこし苛ついたように吐き捨てる。

 画面に映し出されたガルゴの部屋にマグマが流れ込んできた瞬間であった。
 

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