3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

148章 龍魔人バルビタール

 「ぐおっ!」

 「きゃっ!」

 「ん!」

 全員の体を何かが通りすぎたような衝撃が襲う。
 バルビタールを包む黒鱗の卵は今までよりも激しく鳴動している。
 魔法陣の展開もあと一歩というところで霧散してしまった……

 「ご、ごめんなさい、維持できなかった……」

 「いいえ、私もバランスを崩しました」

 「ワタル様申し訳ございません、もう一度チャレンジします!」

 「カレン、とりあえず今はバルビタールを待とう。さっき見たいのまた来たら難しいだろ」

 「……そうですね」

 「それに、多分もうすぐだろ……」

 バキバキと卵の外郭にヒビが入る。
 隙間から光と熱が漏れる、とても中に生命がいるとは思えない熱量だ。

 「バル……」

 セイの心配そうな声が聞こえる。
 漏れだす光と熱はどんどんと増していく。
 より一層放たれる光は熱線となり周囲に広がっていく、
 女神の盾のメンバーもその光を受けるが暖かく穏やかな光と感じた。
 バルビタールのうちに秘めた優しさを表すような光、
 不思議とその光を浴びるだけで疲労感なども薄れていった。

 そうでないものもいる、偽物達だ。
 偽物達がその光を浴びると苦しそうに悶て表皮は沸騰したように泡立ち、そして弾けて分解されていくようだった。周囲を囲む偽物共に降り注ぐ光、
 罪人に神からの罰が降り注ぐかのように次々に消滅していく敵。
 その光に撃たれた物は再生もできずに敵の数はみるみる減少していく。

 より一層の輝きを見せる卵、ついにはあたり一面を光で包み込んだ。
 女神の盾のメンバーもその光から目をそらすしかなかった。
 次の瞬間すべての光が一点に集中する。
 光さえも集めとるブラックホールのような中心、
 そこにバルビタールはいた。

 黒龍の鱗によって作られたスケイルメール。やはりうろこの隙間から呼吸するかのような光が漏れる。
 その両手には黒龍の持つ爪が煌めきを放っている。
 ワタル達の武器と同じように幾重もの光の筋による文様が刻まれている。
 見た目は20歳位の青年のように見えるがミステリアスな中性的な美しさ、
 美しい黄金の髪が黒色の鎧と合わせて神々しささえある。
 音もなく地面に立つ。

 周囲から敵の気配はない、先ほどの光で全て消滅していた。

 「バル……?」

 恐る恐るセイが話しかける。

 「ああ、セイ。そうだよ。皆の無念を晴らすために俺は生まれ変わった」

 自らの全身を自分自身で確かめる。
 力が満ち溢れている。首輪を通じて女神の盾のメンバーとの力の循環を感じる。
 過去の自分さえも超える力を手に入れられた。
 それでも心は涼やかであった。
 思うことはただ一つ。大切な仲間であり家族であった者達の願いを叶えること。
 そのためにはガルゴは倒さないといけない。

 「しばらく付き合ってもらうぞ女神の盾」

 「こちらこそ、よろしく」

 ワタルが手を伸ばす。自然とバルビタールも手を握り返す。
 白き鎧、黒い髪のワタル、漆黒の鎧、金髪のバルビタール。
 その姿の美しさにバッツの創作意欲が爆発していた。
 こっそりとユウキとカイが興奮していた。

 「行こう、全てに決着をつけなければ」

 「ああ……」

 決意を新たにする二人、そして他のメンバー。
 セイはバルビタールのあまりの変貌に頭が混乱していた。
 ブツブツとかっこ良くなりすぎでしょ、とか、でも中身はバルだから、とか、でもでも、いや、カッコいいけどアイツはガキだから……などとブツクサと言っていた。

 「大丈夫かセイ?」

 「ふぇっ!? だ、大丈夫だ、です。よ!」

 「ん? 熱でもあるのか顔が赤いぞ?」

 バルビタールはセイのおでこに自分のおでこを当てる。

 「どんどん熱くなる! 大丈夫か!?」

 「……もう! バカ!!」

 ばちーん。

 可哀想なバルビタールはなんで自分がひっぱたかれたかわからないまま混乱してしまう。
 セイはにやにやしているリク、カイ、クウに囲まれている。

 「バルビタール、ラブコメしている時に申し訳ないがセイは一旦ノーザンラクト城に保護してもらおうと思うんだが?」

 「(ラブコメ?)あ、ああ。そうだな。これ以上危険に巻き込みたくない。
 セイ、それでいいか?」

 「……いい、必ず帰ってきてね」

 「ああ!」

 にっこりと笑うバルビタールの笑顔にセイの心は完全に撃ち抜かれるのでありました。
 3人娘にセイの転送を任せて残ったメンバーは突入の相談をする。
 ガルゴが消えていったのは元魔神城の深部へ続く通路だった。

 「あの奥には黒龍のいた龍の巣へと続く道がある。
 一応ダンジョンではあるんだが一本道で所々の大部屋に敵がいるという特殊な作りだ」

 「黒龍の試練、ね。最後に構えている黒龍が圧倒的すぎるために挑む人間はいないダンジョンね」

 「実際に流れこんでくる力からしても黒龍は圧倒的な力を持っているのがわかるな」

 女神の盾の一員となったバルビタールの手にした力は全員に循環しているエネルギーに加えられている。

 「お前らが強い理由がわかったよ。とんでもない相手と喧嘩しようとしてたもんだ」

 「もともとバルビタールもアイツのせいでおかしくなっていたんだもんな、
 そうじゃなければこうして普通に話せるんだな」

 「バルでいいぞ、セイもそう呼ぶ。ならセイの友人であるお前らも同じだ。
 前の世界の行動は思い出してもなにかモヤのような物がかかっているようだ、
 しかし、申し訳ないことをしたとは思っている……」

 それから3人が戻るまで話を交わすことでバルビタールが実直で真面目な男であることは皆理解した。
 背を預ける仲間として足ることもお互いに理解した。

 今、最後の戦いの本格的なスタートの狼煙があがった。

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