3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

146章 花火

 【あん、なんだよ、逃げられたん?
 まーいいや、どーでもいいな。これから死ぬんだからちょっと伸びただけだ】

 本当に興味がなさそうにガルゴは足元の4魔将たちを蹴り飛ばす、
 光になり消えていく途中のかけらが宙に舞い風にさらわれていく。

 『どーでもいいだと……』

 バルビタールの魂と同化したウサギは鼻と耳をピクピクと怒りに震わせている。
 凄まじい怒りなのだが、どうしても見た目はキュートでユウキ辺りは内心はぁはぁしている。

 「すまない、何もできなかった……
 あいつらの敵は俺らが討つ、セイと一緒に下がっていてくれ……」

 『……俺は……自分では何もできないのか……!?』

 「すまないが、今のアイツに対抗できるのは俺らだけだ、【統率者】の力がなければアイツに触れるだけで消されてしまうだけだ」

 『くそ……』

 「バル……私の友達とその仲間を信じましょう」

 セイに抱かれたままバルビタール(うさぎ)は後方へ下がるしかない、今の彼ではちょっと歯が延びてしまうだけで食事もとれなくなってしまう小動物なのだ。

 「ガルゴ! 散々好き勝手やってきたようだが、ここで必ず終わらせてやる!
 頼みのその力も俺らには通用しない、覚悟しろ!!」

 【はぁ!? 頼みの力!? この消すやつかぁ??
 ぶはっ!! ばっかじゃねーの!? ヒャッヒャッヒャ!!】

 ワタルの叫びを聞いたバルゴは大笑いを始める。

 「何がおかしい!?」

 【お前の頭があまりにもおめでたいから笑ってんだよバーカ!
 俺の力がこれだけなわけねーだろ、お前らと戦う? めんどくせー。
 んなことしなくたってあのじじー共のプログラミングぶっ壊せば好き放題なんだよ!】

 バルゴは両手を前方に出す。
 ボトボトと黒い液体がその手から地面に落ちていく、
 ボトボトボトボトと……

 【だいたいお前ら虫けらなんて一方的に潰されるだけなんだから俺と戦えるわけねーだろ、
 勝手にこいつらと戦って疲弊して死んでけよ、ブッヒャッヒャッヒャ!
 さぁ、前夜祭の始まりだ! 全ての世界をぶっ壊すさいっこうの祭りのなぁ!!】

 バルゴの背後から花火が上がる、真っ黒な花火。
 そしてその飛び散った火花は地面に落ちてベチャリと広がる。
 地面に落ちた黒い液体がボコリと盛り上がる、そこら中に飛び散った場所全てから。
 その数は万に足りるほどだ。

 【さっき潰した奴らにでもしてやろーか、サービスだよサービス。
 良かったなぁ再会出来てケッケッッケケッケ!】

 ガルゴの言葉通り姿形だけは4魔将とプロポの形を取っている。

 『くそ!! 貴様はどこまで!!』

 バルビタールだけではない、女神の盾のメンバーも腸が煮えくり返りそうだった。

 『バルビタール様ぁ……なんで助けてくれなかったんですかぁ……』

 『痛いよぉ、苦しいよぉー……』

 『自分だけしあわせになろうなんて酷いですよ……』

 『あなたが強ければ死ななくて済んだのに……』

 同じ顔、同じ姿、同じ声でバルビタールに対する怨嗟の声を上げる、
 今のバルビタールにとって最も辛い事だった……

 『うう……』

 苦悶の表情をうかべる(たぶん)バルビタール。

 「聞くな!! 短い付き合いだがあいつらがそんなことを言うやつじゃないのはわかってる!
 お前はもっとわかってるだろうが!!」

 ワタルが珍しく怒りを隠さずに大声を張る。

 「ガルゴ!! てめぇは本当の屑だな!! ぜってぇ殺すぞ!」

 【虫が偉そうに人間の言葉吐くなよ……ま、ここまで来てから偉そうな事は言えよな、じゃ】

 ガルゴは振り返り魔神城があった後のクレーターの向こうへ飛び去っていく。
 振り返ることもなく無造作に、女神の盾なんかに何の興味もないように去っていく。
 それが女神の盾の一同にとっては何よりも腹立たしかった。

 「あの野郎、ホントなめやがって」

 「さいっこうに頭に来る!!」

 「絶対に泣かす!」

 「無礼な奴には教育が必要です」

 「あのような外道に情けは無用。ワタル様行きましょう」

 「もう謝ったって許してあげないんだからぁ」

 『なぜ俺には力がないんだ!! あいつらの無念を、こんなことを見ているしかないのか!!』

 【バルビタールよ、そなたはこの世界に仇なすものではないですね?】

 『セイ?』

 セイの様子がおかしい。表情がなくぼーっとしている。そして話す言葉は霊言が籠っている。

 【一時的に体を借りています、バルビタール、あなたに【統率者】の力と神の力を貸すことはできます。女神の盾を手助けしてガルゴを滅ぼすと誓えますか?】

 『誓う!! 何があろうとアイツを滅ぼす!! こいつらにも喜んで力を貸す!』

 【戦いが終わると、ただの魔人、いや、ただの人間になってもですか?】

 『むしろ望むところ、俺はセイと幸せになる! それがあいつらとの約束だ!!』

 【分かりました】

 フッとセイから力が抜け出しセイが一歩ふらつく。リクとクウが左右からセイを支える。
 同時に地鳴りが起こり始める、敵達とワタルの間の地面にヒビが生じていく、
 どんどんと地鳴りは大きくなって行く、ヒビも増えガラガラと地面に穴を作っていく。

 ドドドドドド

 その地鳴りが最高潮に達した時、地割れから一匹の黒竜が飛び出してきた。
 その巨大な龍はバルビタールを睨みつける。

 【ふん。いい面構えと覚悟を持った目だ。
 貴様らに封印されていていいように利用されていたからどうしてやろうかと思ったが、
 この世界最古にして最強の龍である儂が、お主に力を与えてやろう!!】


  

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