3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

144章 異形

 「ガルゴだって!?」

 『ふざけるな!? バルビタール様はどうした!?』

 『ギャハハハハハハ!! アイツはうるせぇから今殺してるとこだよ!!
 俺に口答えする奴は皆死ぬんだ!! ヒャーーーーーッハッハッッハッッハ!!』

 狂ったように笑い出すその男はガルゴと名乗った。

 「お前は【統率者】に神としての力を奪われたんじゃないのか!?」

 ワタルの問いかけにピタリと笑い声を止め、憤怒の表情で睨みつける。

 『ああ!? なんでお前がそんなこと知ってんだ!? あんな老いぼれに俺の力を奪うなんて出来ねーんだよ!! 俺は最強なんだ!! 俺がやりたいことを邪魔する奴らが間違ってんだよ!!』

 狂ったようにそこら中に攻撃を仕掛けて無駄な破壊を続けるガルゴ、
 その攻撃も壁や床を壊せないことにも苛立ち始める。

 『なんなんだよ!? 俺に壊されりゃ-いいんだよ!! クソが!!』

 子供のように地団駄を踏み始める、先程からのあまりに身勝手な言動と子供っぽい行動にドニは怒りさえも通り越して呆れてきてしまっていた。

 『いい加減にしろ、お前の中にいらっしゃるバルビタール様は返してもらう』

 一足でガルゴとの間合いを詰め、それと同時に払う一閃。
 怪我も完全に治り自身でも最高の一振りと確信できる完璧な攻撃。

 『あーあ、まじくだらねぇ。暇つぶしだったけど止めた。もう、ぶっ壊す!』

 ガルゴが何かを手の上でポンポンと遊んでいる。
 それが自分の腕だと気がついた時ドニはワタルに弾き飛ばされていた。

 ガルゴを中心に黒い球体がどんどん膨れ上がっている。
 ワタルの持つ盾に触れてバチバチと反発しながら巨大化はとまらない。

 「まずい!! 皆、転送するぞ!! ユウキ道を開いてくれ!!」

 ワタルはその球体の危険性をすぐに察知して撤退を選択する。
 女神の盾、4魔将、プロポ、セイ、そしていつの間にかセイの腕の中に収まっているウサギ。
 ユウキは空間固定を解除して転移への道を作る、
 即座にワタル、カレン、カイが転移魔法を組み上げる。
 球体が彼らのいた場所を飲み込む寸前に転移に成功した。

 魔人城を見渡せる平原に転送した一同、細かく地面が揺れていることに気がつく、
 しばらくすると先ほどの球体が城を飲み込んで広がっていくのが確認できた。

 「おいおい、このまま世界中飲み込むんじゃないだろうな!?」

 ワタルは自らの盾と触れてわかっていた、
 【統率者】の加護のない物質が触れればすべて【消えて】しまうことが。

 「まずいぞ、なんとかしないと!?」

 【女神の盾の皆さん、腕輪を、腕輪を全員で空にかざして下さい!!】

 「女神様!? どういうことですか?」

 【説明は後!! かざして!!】

 女神の指示通り腕輪を空に掲げる。
 まばゆい光の柱が腕輪から天に向かって伸びる。
 空に巨大な魔法陣が形成されていく、
 数キロレベルの複雑な魔法陣、ユウキが目を爛々と輝かす。
 完成した魔法陣が黒い球体に飛んでいきぶつかり合う。

 周囲に放電現象が起きて大地が振るえる、黒い球体の拡大速度は目に見えて落ちている。
 しばらくすると拡大は完全に停止して球体の表面に魔法陣が侵食していく。

 【どうやら間に合いそうですね、あのままだったら本当にこの世界が全て分解されてしまうところでした、【統率者】の方々の上位アクセスでガルゴのハッキングに対抗してくれています】

 「あいつは本当にガルゴだったんですね」

 【ええ、とうとう完全に【統率者】を怒らせたガルゴを永久追放するために謹慎場所に行ったところ、
 魔剣バグオスにすでに自身のパーソナルデータを写していたことがわかりました】

 「パーソナルデータを……写す?」

 【我々はすでに肉体を必要としない生活が可能なのです。パーソナルデータさえあればどの世界のどの生物にでもなれます。今回の魔法陣は現在の肉体にそのパーソナルデータを固定するためのプログラムなのです】

 黒い球体の8割ほどが魔法陣からの侵食が終了した辺りで異変が起きた。
 球体が急速に縮小して行く、

 【これは……?】

 『ヴェルダンディィィィィィ!!! このアバズレがぁ!! てめぇの仕業かぁ!!
 俺様がせっかく女にしてやるっていうのも断りやがって!!
 さらに、俺の邪魔か! 死ねぇ死ねぇ死ねぇ!!!!!』

 ガルゴの声が周囲に響く、口汚く女神を罵る聞くに堪えない罵詈雑言の数々だ。

 【黙れ下種! 貴様のような男がヴェルに近づくのも痴がましい!】

 アルス神の怒気が周囲に広がる。

 『低級神のくせに偉そうに俺に話しかけんじゃねェェェ!!!
 クソがぁ!! こんなもんで俺を縛れると思うなよぉぉォォ!!!』

 急速に小さくなった球体の表面にビキビキとヒビが入る、
 黒い球体が飲み込んだ場所は綺麗に球体状に何も残っていない。
 表面を魔法陣に覆われながらすでに直径5メートルほどに成った黒珠が更にひび割れていく。

 【諦めなさい、【統率者】の定めたルールを繰り返し破ったあなたに転生はありません。
 そのまま永遠の刻を封印の中で過ごしなさい】

 『はっ!! めでてぇ頭してんな! オメェらの尺度で俺様を図ろうってのが愚かなんだよ!!』

 バキン、
 黒珠が完全に砕ける。
 その場所を中心に白黒が反転したような空間が食い取られた空間を満たし、
 一気に収縮していく。
 魔法陣は完全に消え去っている。
 収縮の中心部から姿を表わす者がいる。

 身の丈3m、額に第3の目をもち、顔は下品に薄ら笑いを浮かべ、
 バルビタールの創りだした筋骨隆々な肉体をベースに翼竜のような翼を背に携え、
 トカゲのような尾をもち、頭部からは二本の角が天をつく、
 腕は2対4本、その姿は見る者に畏怖と恐怖を与えるまさに悪魔のようであった。
 

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