3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

138章 語られる真実

 中央に置かれた水晶には美しい大地が映しだされていた。
 アルス神が納めていた世界、エイゼリーナの姿だ。
 バルビタールが異世界へ送られた後人間は復興を開始していた。
 モンスターに荒らされた大地はゆっくりと回復をしていた、
 時空間転送時に時間軸のズレが生じており、すでに魔神が去ってから15年の月日が流れている。
 アルス神はそう説明した。

 【そもそもバルビタールはただの一人の魔人でしかなかったはずなのだ、
 特別な能力も与えてはおらん。普通の魔人の集落で穏やかに過ごす魔人の一人。
 ただそれだけのはずだったのだ】

 画面が移り変わり、荒廃した村の後のような映像が映し出される。

 【バルビタールが現れたことにより魔人達は人間と激しく争うことになり、
 結果として勇者と人間との戦いに敗れ、全ての魔人は倒れてしまった】

 【アルス神の世界はそこまで大きな世界ではないため、バルビタールのような存在が生まれると世界全体で大きな傷跡を残してしまいます。魔人種の全滅はその最たるものでしょう】

 【私はあまり世界に干渉しないタイプの神でな、バルビタールのようなイレギュラーなことが起きても静観をしていたのだが、まさかバルビタールの出現が他の神の干渉によるものだとは思いもよらなかったのだ、結果として魔人種の絶滅という結果になってしまった。私の実力不足だ】

 【普通世界の理にその世界の神以外が干渉することは重大な違反、それこそ神としての能力権利の剥奪を意味します。マトモな神ならそんなことはしません】

 「前に話していた、狂神の仕業なんですね」

 【ガルゴ、奴は面白半分にバルビタールに力を与え私の世界を滅茶苦茶にしようとした。
 私の世界は小さく私自身の力もそこまで高位ではない。奴は適当に楽そうなとこを狙った、
 たまたまそれが私の世界だったのだ】

 【魔剣バグオス、それがガルゴの送り込んだウイルスだった……】

 【実は勇者と聖剣も【統率者ルーラー】による介入だったのだが、それにも私は気がつけなかった……。
 そっちはきちんと通知があったにも関わらず……不徳のいたす限りだ……】

 【案外がさつなところがあるのよねアルスは、そこが可愛いんだけどね】

 「運営からのメールを見ないでほっといたみたいな感じですか?」

 【いい表現ね~ワタル君! そういうこと。実は最近私のところにも連絡が来たの。
 私自身の権限を侵されているので当然【統率者】も動いたわけね。
 それで、話の中心はこれになるのだけど、今回の騒動、あなた達がもしバルビタール側に敗北して世界に重大な影響をおよぼす行為にバルビタールが及んだ場合、【統率者】権限でバルビタールを隔離、消去することになったわ】

 「え? それって俺達何もしなくていいのでは?」

 【いえ、この処置を行われればバルビタール周囲30キロ圏内のデータは全て消失する。
 つまりセイちゃんや黒竜、その周囲の地理もすべて失うわ。さらに、その影響でセイちゃんに関わる人々にどんな影響が起きるか未知数なの、特に幼少の頃から一緒に暮らしているような関わりの大きな人への影響が……】

 女神はリク、カイ、クウの方を向く。
 3人は話していることを100%理解しているわけではなかったが、
 それでもセイが帰ってこないということだけはしっかりと理解していた。

 「それじゃぁ、ダメですよ!」

 【そう、だから私はあなた達が失敗したらという条件をつけたの】

 【あと、ワタル君にユウキ君。君らの世界の神達からこの戦いが終わったら元の世界へ戻すことも出来るように計らうと言ってもらっている。しかも、君たちは自由に行き来出来るシステムにできるそうだ】

 「え……!?」

 【二人の世界の神達はかなり巨大な世界を作るほどの実力者で神の世界でも有名人なのよ、
 すごく優しくて技術もあって尊敬している神も多いわ、私もその一人】

 【当然私も尊敬している。何よりも自分の世界の全てを愛する態度は素晴らしい】

 何やら興奮してきた二人の神様。しかしワタルとユウキはその告げられた事実にただ驚くしかできなかった、正直想像もできないことだったからだ。

 「いきなりそんなこと言われても、なんだかわからないというのが正直なところです……」

 「私は別に帰りたくないけど……ワタル君と一緒にはいたいです」

 【ああ、もちろん強制ではない。そういうのも可能だよと言ってもらえたってだけだからな】

 「ワタル、いっちゃうの?」

 「いやいや、全然そんなの考えてないよ! それよりもバルビタールとの戦いだってどうなるか」

 【あともう一点、【統率者】からあなた達の体の内部にある聖剣の力の補完を許可されました。
 それは今から行います】

 「聖剣の力の補完?」

 【ええ、あなた達の体内に分割して存在する聖剣の力はもともと【統率者】のアンチウイルスワクチンです。その力はたとえこの世界の神である私達でもどうこうできるものではありません。
 創りだした【統率者】しかいじることができません。
 そしてその【統率者】から、えーと補完パッチって言えばワタル君はわかるかな? それをもらいました。これがそうです】

 女神は机の上に7つの光り輝く玉を出してくる。

 【それを私の腕輪に当ててね、そうすれば自動的にパッチが充てられるから】

 全員が玉を取り腕輪にかざす。
 まばゆい光が玉から腕輪に流れ込みその光は全員を包み込むのだった。

 

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