3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

135章 入れ替え

 プロポが去ってワタル達はボー然とその場に立ち尽くすしかなかった。

 「また、分からなかった」

 「ワタ兄、ちゃんと見張ってたけど何の気配もなかった」

 「ユウキ様何かわかったのですか?」

 プロポに指名されたユウキに注目が集まる。
 ちょうど周囲にいた帝国軍とノーザンラクト軍が突然の戦闘の終わりにざわつき始めてきた。

 「とりあえず、まずはジークフリード皇子とタイラー提督に報告に行きましょう。
 そこで私の仮定をお話します。」

 とりあえず、現状に起きたことをきちっと説明しないといけない。
 ワタル達は本陣にもどり今起きた出来事を説明することにした。

 陣へと戻ると喝采をもって迎えられた、皆口々に戦いの凄さを讃え4魔将を撃退した事を褒め称えた。
 しかし女神の盾メンバー自身はその賞賛を素直に受ける事ができなかった。

 「どうやら何かあったようですね、浮かない顔をされている」

 「お主達は4魔将を退けた、もう少し誇ってもいいと思うが……」

 皇子は皆を気遣い優しい言葉をかけてくれる。

 「実は敵軍の将にプロポという男がいまして、今のところ直接戦ったことはないのですが、
 まるでその手の内が読めずに今回もまんまと4魔将を救出されてしまったのです」

 「手の内が読めないというのは……」

 「それについては私がお話します。プロポは不思議な方法で我々のあらゆる警戒を突破して、
 好きなところに現れ、そして消えるのです……」

 「神出鬼没というやつか……」

 「はい。魔法の気配もなく、移動した痕跡も感じられない。謎の能力です」

 「ほんとうにそんな能力ならいつどんなときも一方的に殺られてしまいますね……」

 タイラー提督がその能力の恐ろしい点を端的に言い当てる。

 「はい、ただプロポは今のところその能力を用いて直接的な攻撃は仕掛けて来ていません。
 一応今回目の前でその能力を見ることができて一つ仮定は立てられました」

 女神の盾の他のメンバーも初めて聞くその過程の話に静かに耳を傾ける。

 「今回突然現れたプロポの周囲の気温が異なっていたのです、そして4魔将の二人を連れて去った後の空間の温度も変化していました。そしてプロポと4魔将が移動した先の周囲の温度と残された空間の温度はかなり近かったです。戦いの場であった中心部は斬撃などの影響で高温になっていたのでその変化がハッキリと捉えられました」

 「つまり……?」

 「たぶんプロポの能力は空間を切り抜き、入れ替える能力なんだと思います」

 「……よくわかんない、ワタルわかる?」

 「なんとなくな、瞬間移動みたいなもんだな。問題はその発動が全くわからんってことか」

 「アニメや漫画ではよくある能力だからね。常に周囲を把握してプロポが現れてから攻撃までを察知すれば対処できると思います、もし直接的な攻撃ができるなら我々はもう生きてはいないでしょうから」

 「ああ、ワタ兄がよく見てるやつだね漫画って!」

 「瞬間移動だとすると対応策もあるけど、厄介な能力であるのは間違いないな……」

 「決めつけるのは危険ですが、たぶんプロポ本人とその周囲を入れ替えるのではないかなと思います」

 ワタルは内心胸をなでおろす、自分だったら相手の上に大量の土砂やマグマやらなんやら危険な物を転移させるよな-とか考えていたからである。基本ワタルは可愛い顔しながら考えることが鬼畜だ。

 「とりあえずイステポネ、ウェスティア両大陸から魔神軍は追い出せた。
 さらに4魔将に手傷を与えている、ここでできれば攻勢に出たいところなのだが、
 それには女神の盾の皆さんの状態が非常に重要になってくるがいかがかな?」

 タイラー提督の問いかけにワタルは一同を見渡す。
 全員自分たちの体調の良さに驚いているくらいだ、
 いま一戦を終えたばかりなのに目立った負傷も疲れもなかった。

 「大丈夫です。俺達に問題はありません」

 「それでは侵攻計画を皇子と打ち合わせしていく、女神の盾のメンバーには先行してノーザンラクト大陸へ上陸してノーザンラクト城への道程を調べて教えていただきたい。頼めるかな?」

 「お任せ下さい。すぐにでも出立します!」

 こうしてノーザンラクト城奪還作戦がスタートした。
 これから始まるノーザンラクト大陸での戦いへの大事な大事な足がかりとなる。
 作戦の決行は明朝日の出とともに開始されることになり、まだ昼過ぎではあったがこの日は解散となった。

 「明日からの戦いは長くなりそうだ、今日は腕によりをかけるぞー!」

 ワタルのその一言で女神の盾のメンバーの眼の色は変わる。
 そして偶然その言葉を聞いてしまったジークフリード皇子はすぐに他の王たちへそのことを伝える。
 女神の商会へ各地の豊富な食材と王たちの訪問を伝える使いが来たのはそれから間もなくであった。
 ワタルは快くその申し出を受けて豊富な食材を前に楽しそうに商会の料理人とともに下拵へを始めた。
 各王国の宮廷料理人も手伝いを申し出てワタルの神の料理人としての全てを吸収しようと必死に目を凝らしていた。
 当然人数もおおくなり規模も大きくなったのでジークフリード皇子は帝城のキッチンを提供し皇帝もぜひ食事に参加させたいと思っていた。

 「ワタル殿、どうか父を喜ばしてあげて欲しい。
 体調を崩してからすっかり食も細くなってしまい、今ではあまり食事を楽しそうに取っている姿も見ていない、どうか。頼む。父に食事の喜びを思い出させて欲しい」

 ワタルは以前お見かけした皇帝の姿を思い浮かべる。
 それだけでワタルはその人間が何を欲しているのかわかってしまう。
 そして体の弱っている部分、それを補うための料理も……
 後に神の晩餐と呼ばれる宴は間もなく執り行われようとしていた。


 

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