3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

128章 バトルジャンキー

 『ハハハ!! いいぞ、いいぞ!! 俺が押されてる!!
 こんなことあるんだな!!』

 「どこが押されてんだよ!! こっちだって必死だっつうの!!」

 ワタルは攻撃を盾で受ける事を諦めて完全に攻撃方法として盾を利用していた。
 ショウの攻撃を受ければ紙のように盾が破壊されることは間違いない、
 しっかりと避けなければならないのだ。
 しかしワタルの盾を利用した3次元戦闘は致命的なショウの攻撃力を十分に発揮させない重要な手段になっていた。
 なんとか押さえ込みながらリクとバッツが激しい攻撃を続けている。
 この3人の猛攻をすべてさばき続けているショウ、とんでもない実力を持っている。
 ワタルの魔法と物理攻撃を交えた攻撃、リク、バッツによる強烈な攻撃、そのすべてを受けきってなお一撃喰らえば致命傷は間違いのない鋭い攻撃を続けてくるショウはどこまでも楽しそうに戦っている。
 ショウは戦いの中に喜びと楽しみを見出すタイプの人間、バトルジャンキーなのだ。

 しばらく戦いを続けていると超速のムチを操るペントにはリク、カイ、カレン、ユウキ。
 完全近接型のショウをワタル、リク、バッツで相手をする形に自然になっていた。

 『あちらは盛り上がっているのぉ』

 涼しい顔で苛烈な攻撃を続けているペント、その変幻自在なムチと魔法の攻撃にユウキ達は未だに攻撃の機会を得られずにいた。

 「あーもう、邪魔だなぁ」

 クウは常人には捉えられない動きで接近を試みるがすべてムチの言ってみれば壁に阻まれている。
 中距離から四方八方より迫るムチ、まるで獰猛なコブラのように襲い掛かってくる。
 喰らえば皮膚は弾け骨は砕ける。そんな力を持つことは想像に容易かった。
 ユウキは後衛に襲いかかる攻撃を出来る限り防いでいる、
 前で果敢に攻めるクウへの対処は怠らず同時に隙あらば後衛を落としにかかってくるペントの実力はたいしたものだった、
 攻撃もムチだけではなく数々の魔法攻撃も交えてくる。
 カレンとカイは魔法攻撃を無力化しつつ逆にこちらからの魔法攻撃を試みているが、
 めまぐるしく続く戦闘中にもかかわらず完全にレジストしてくる。

 『はぁ、休む暇もないねぇ。あんた達ホントに強いんだから……』

 「もうちょっと苦戦してるふうに言ってくれないとその余裕あふれる物言いは挑発のようだね」

 『いやいや、ほんに感心しておるのよ。人間とはここまで到れるものなのじゃな』

 「4人を手球に取っている人にほめられるのは光栄ですね」

 『わらわも余裕はないのじゃぞ、ショウの方を気にしておる暇もない』

 「こんなに! 必死なのに、なんかその話し方だと、緊張感が! 感じられない!」

 クウが迫るムチを次から次へと斬りつける、
 段々と踏み込む際に残像まで感じる速度だ、その残像はどんどんとはっきりとした姿になっていく。

 『ん? なんじゃ、妖面な技を……』

 クウの姿は4人になり、5人になりそれぞれがムチをはたき落としていく、
 それと同時に明らかにユウキ側への攻撃は弱まっていく。

 「カレンさん!」

 「はい! アローストリーム!!」

 カレンは一気に攻勢に転じる、膨大な矢の雨、いや嵐がペントに降り注ぐ、

 『ほう、ただの矢ではないな』

 その矢の一撃一撃にカイによる魔法付与がなされており、降り注ぐ矢から風の刃が巻き起こる。
 ユウキはペント周囲の空間に干渉して次元軸を歪ませる、
 時間の流れが早い場所、遅い場所、ランダムに散らばめることで矢の軌道は複雑怪奇なものになり、
 ペント自体の動きを阻害する。
 すこしでも注意が攻撃にそれればクウのもチャンスが訪れる、
 分身の術を駆使しながらその分身が強力な攻撃を放つ、

 「牙突龍牙爪撃~乱れ~」

 分身から放たれる無数の斬撃、それぞれが複雑な動きをしながらペントに襲いかかる。

 『チィ!』

 初めてペントの表情から余裕がなくなる。
 すべてのムチで自らを包むように防御壁を形成する、
 ムチの動きに合わせて竜巻のような衝撃波が発生する、
 音速を超えたことで生じるソニックブームだ。
 しかし歪められた次元によって衝撃波もまばらにしか生じていない、

 『まだまだぁ!』

 ユウキたちと同じようにムチの衝撃波に魔法によって装飾する、
 ユウキ達が4人で行っていることを一人で行ってしまう、
 ペントの魔人としての圧倒的な実力が垣間見える。
 ユウキ達の攻撃とペントの防御壁が激しくぶつかり合い爆発にも似た衝撃が周囲に広がる。
 流石にクウも距離を取る、激しく舞い上げられた土砂と土埃が視界を遮る。

 『ふん』

 それらを絡めとるように小規模な竜巻が上空に土煙を運んでいく。
 そしてその場には強力な攻撃によってできたクレーターと無傷に見えるペントだ。

 「今の攻撃でも……」

 カイが驚きの声を上げる。

 「いえ、手傷は追わせられました」

 カレンはペントの腕とこめかみから流れる青い血をいち早く捉える。

 『ふむ、今のは少し焦った。まさか妾が手傷を負うとはな。これが戦いか、いや、愉快』

 にやぁっと口角を持ち上げて笑うペント。
 そこには純粋な戦いを楽しんでいる人間だけが発する狂気が浮かび上がっていた。
 ペントも実はショウに負けずとも劣らぬバトルジャンキーなのだった。

 4人の力を合わせた渾身の一撃でも追わせられた手傷はほんの少し、
 それでも攻撃が全く通用しないわけではないことに4人は手応えを感じていた。
 自分たちの動きの限界もまだまだあるはず、
 彼女たちの戦いはもう一段ギアが上がっていく。

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