3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

127章 ペントとショウ

 予想外に正々堂々とした戦いの開始であった。
 女神の盾は前衛リク、クウ、ワタル、バッツ、
 後衛カイ、ユウキ、カレン。

 対する4魔将はショウが前、ペントが後ろ。
 ペントが武器としてムチを取り出した時は全員やっぱり! と思った。
 ショウの手には巨大な手甲を装備している、ボーリングの玉ぐらいの大きさがある。
 アレで殴られたら頭部ならまず助からなそうな予感がする。

 『行くぞ』

 発生と同時に激しい土煙の爆発と同時に飛び込んでくる、
 まっすぐ正直に向かってくる、
 ワタルは相手の攻撃力を慎重に探る意味も込めて全員に慎重な立ち回りをお願いしている。

 「来い!!」

 わざと正面から受け止める、魔力障壁盾も全開でこの一撃で敵の攻撃力を量る事が目的だ。

 『オラァ!』

 大ぶりの一撃がワタルの盾を捉える、3枚の魔法盾を重ねあわせた大盾で受け止める。

 「ぐふっ……」

 ワタルの唇から一筋の血が流れる、
 ギリギリ受け止めたが魔法盾は原型もなくボロボロだ、
 これが相手の攻撃力を示している。
 今まで出会ったことのない規格外の威力。
 反動でワタルの肉体にも少しダメージが行くほどだ。

 『ほぅ、俺の一撃を止められるものなんてこの世にあるんだな! 
 俄然楽しくなってきたぜー!!』

 心から嬉しそうにいつの間にかペントのそばまで戻っていたショウが叫ぶ。

 『わらわの神速の一撃もきちんと防御しおったし、強いのぉ心躍るのぉ♪』

 今のショウの攻撃に合わせてペントもそのムチでワタル以外のメンバーに攻撃を加えていた。
 ムチというものは先端部分は人間の達人が使用すれば音速を越える、
 それをペントという魔人が用いればその速度は肉眼で捉えられるものではない、
 それでも女神の盾のメンバーは不可視の速度にもきちんと対応して防御する。
 どちらも人の域を超えた実力を兼ね備えている。

 こないだのエネルギー騒ぎの前のメンバーなら、
 実はもう。終わっていた。
 そのことに気がつく人間はいなかった。
 何がどういう結果を生むかなんて誰もわからないものだ。
 もちろんあのミサイル攻撃は二度と使うなと全員からユウキは釘を差された。
 しかしユウキは大規模魔法陣展開に可能性を見出してコツコツと研究を続けていくのであった。

 「思ったより真っ直ぐなやり方で戦うんだな、プロポみたいに分けの分からない力を使うのかと思ったぜ……」

 『あいつのこねくり回した戦い方は相手しててイライラするからな、
 やっぱ気持ちいいのは力と力を真正面からぶつけあう戦い方だろ!』

 かするだけですべてを持って行きそうな豪腕を避ける、確かにギリギリのスリルというのは存在する。
 今も女神の盾のメンバーは強力な敵と対峙することである種の楽しさを感じている。

 球形に近い手甲は攻撃をいなすことにも優れていて斬撃だろうが刺突だろうが見事に流し、
 崩したところに鋭い攻撃を加える、攻防一体の非常に洗練された武技を振るってくる。

 『すげぇな、ここまで激しい攻撃も俺の攻撃を避ける奴も身内以外初めてだ!』

 『私の攻撃も少しは早さに自信を持っておったんじゃがのぉ……同格の早さ鋭さを持つ使い手がこんなにいるとは、世界は広いのぉ』

 「まったくだ。俺ら7人の攻撃を見事にかわされて悔しさもない、見事としか思わない」

 「しかも、まだ本気じゃないですよね?」

 『それはお互い様だろ、まぁいいや体も暖まってきたし、ギアを上げていこうか!』

 今までの攻撃が爆発するような攻撃だとすると、今放たれたソレは明確な意図と方向性を持って狙いすまされた攻撃、無駄なく最短距離を最速で迫る攻撃。

 「まずっ!」

 全力を持って回避する、それでも間に合わなそうだワタルは身につけたばかりで不安要素もある隠し玉の使用を余儀なくされる。
 放たれる金色のオーラに身を包み、ワタルもまた今までとまた別次元の動きで攻撃を回避する。

 『ほほう、いいもん隠し持ってるじゃねぇか!』

 「まだ、慣れてないんだが出し惜しみする余裕もない」

 女神の腕輪から発生する鎧も光り輝いており形態も変化している、
 もともと渡る達が手に入れていた鎧も伝説級レジェンドの価値のある物だった。
 しかし、この間の事故で偶然にも手に入れた力によって神話級ゴッズに変化していた。
 神々がその力を行使したような力。間違いなくこの世界において比肩なき武具を手に入れていた。
 それぞれのメンバーの戦い方に合わせてともに成長してきた武具がここに最終形を極めたのだ。
 聖獣の力も合わさり生きる武具として完全に使い手と一体化した。

 「な、なんか皆そんな装備だったっけ?」

 「なんか、これ、どんなものかさっぱりわからないんだけど、バッティこんなの初めて」

 バッツのスキルでも能力の底が見えないほどの武具、
 バッツは武具の良し悪しなども含めてそれがどういうものかを一目見れば大体理解できる。
 しかし、自分たちが身に着けている物の能力や得体をまったく感じ取ることが出来ないのだ。
 そのことの持つ意味を正確に理解出来るメンバーはいなかった。

 「なんか、体中を力が走り回ってるようだよ!」

 「いいね、いくらでも動けそう」

 皆もその力の意味を理解できていなかった、
 今完全に女神の盾のメンバーは人の枠を超えているのだ。
 圧倒的な魔人と戦う資格をこうして気がつくことなく手に入れていたのだ。

 


 

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