3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

121章 魔神城

 【黒】が通った跡はまさにぺんぺん草も生えない状況であった。

 「このまま放置しておくと死の大地になっちゃうな、出来る限り直していこう」

 ワタルは簡単にそう言うと所々で土壌改善をサクサクと行っていく。
 あっという間に緑の整地された土地へと変貌していく。
 一切の生命の気配もしない道を真っ直ぐと黒竜の巣へ向かい進んでいく。
 魔物の大群によって更地化された大地はむしろ走行に適した道へとなっていた。
 森も見る影もなかったがさくさくっとワタルが基盤を作っていくのでいずれ回復していくだろう。
 しかし、この戦いに勝利を納めないと未来はない。

 眼前に巨大な山岳が見えてくる、黒竜の巣に連なる山々が視界に入ってくる。
 雄大で巨大な山岳に気圧されてしまいそうになる。
 美しさにも似た怖さを感じてしまう。
 そしてその最も高い山が黒竜の巣だ。
 一同はその山の中腹の異変にすぐに気がついた。
 オドロオドロしく変化している、見ようによっては壁面にくっついたアメーバーのような部分がある。
 そこが魔神達の本拠地であることは見間違いようがなかった。

 「美しい景色に趣味が悪いですね……」

 カレンは絵画のような美しい風景に痰でも吐きかけられたような異質な空間に拒否感を露わにする。

 「あの辺りはどうなっているの?」

 カレンにリクが尋ねる。

 「うごめいていますね、多分……もともと生物だったモノだと思われます。
 近くに行けば嫌でもわかると思いますが、覚悟はしておいてください」

 すこしカレンの顔色が悪い。
 よほど悪趣味なものを見てしまったのだろう。
 これから向かう場所がどれだけ異常な状態か一同はすぐに知ることになる。



 「なんだ……これ……」

 うぞうぞと蠢く黒い肉片、それがゆっくり、ゆっくりと周囲のものを飲み込んで広がっている。

 「こっから先、すべてコレが広がっていますね。この先に洞窟があってそこを中心に広がっているようですね」

 「気持ち悪い、なにこれ」

 「触れないほうが良い、何が起こるかわからない」

 「ワタルさん離れて魔法で攻撃してみますか?」

 「そうだな、それで反応を見よう」

 「ワタル君私がやろうか?」

 「ああ、魔法よりもそのほうが良いかもしれない。こないだみたいに魔力の力まで利用されてしまうかもしれないからね」

 「なるほど、その可能性も考えないといけないですね」

 ユウキは短銃を構える。短銃ではあるが放たれる攻撃は強力無比だ。
 引き金を引くと音もなくソレに穴が空く、

 ギィン!!

 甲高い音が響き渡る。

 「何の音だ!?」

 「わからないけど、注意しよう!」

 「ワタルきゅんこいつらが引いていくわ」

 うぞうぞと蠢きながら謎の生物? は洞窟の入口に向かって引いていく。
 驚くべきことにそいつらがいた場所は綺麗に舗装されたような漆黒の大理石のようになっていた。

 「これは触っても大丈夫なんだろうか?」

 「生物の反応も魔力の反応もない」

 クウが探査しても何の反応もないらしい。

 『いやいや、思ったよりお早いおつきですな。まだこちらの準備が完成していませんのに……』

 「な!?」

 一同はすぐに臨戦態勢に入る。
 一切の油断など敵の本拠地の間近でしていなかったが、そいつはいつの間にか目の前にいた。
 プロポだ。

 『さーて、どうしましょうかねぇ。バルビタール様の居城はまだ建設途中何ですよねぇ。
 内部はそれなりに形になっていますが……』

 ワタル達の驚愕と困惑を他所にプロポはカツカツと足音を立てながら左右にウロウロと歩きながら、
 ブツブツと独り言を言っている。

 『あっ! そーだ。皆様にはお礼を言わないといけないんでした。
 我らが仲間、四天王を生み出す手助けをしていただいたんでしたねぇ。
 ほんとーうにありがとうございます』

 ギリッとリクが奥歯を噛みしめる。
 他のメンバーも悔しさを覚える。

 『私ほどではないですがー、なかなか使える奴らが生まれてくれましたー。
 バルビタール様のおそばに仕える仲間が増えることは大変うれしいことなんです』

 黙っていれば女性のため息を誘うような美しい顔を様々に変化させながらしゃべるその姿はワタル達の不快感を増大させていく。

 『おやおやー? 何故に皆様はそのように怒ってらっしゃるのかな-?
 やはり未完成の城では皆様をお迎えするのにふさわしくないですよね-』

 「黙れ、いい加減にしろ。城などどうでもいい!
 俺らはセイを連れ戻してバルビタールを倒しに来たんだ!」

 『城などどうでもいい。ふむふむ、それはありがたい。
 しかし、バルビタール様を倒すとは……寝言は寝てからおっしゃったほうが良い。
 ま、あなた達は野垂れ死ぬだけですよ。』

 おちゃらけたプロポの雰囲気が死という言葉で一変する。
 ワタル達の緊張も高まる、

 『ま、ここから出られた頃には城もできているかと思います。
 がんばって下さいね-、こんなところで死なないでくださいね-、
 せっかくの準備が無駄になっちゃいますからー』

 誰も気がつけなかった。
 山の中腹にいたはずなのに、すでに別の空間に飛ばされていることに……
 目の前のプロポも幻のように消えてしまった。

 「ば、馬鹿な!? なんの幻術でもなく、転移されたようです……」

 カレンが周囲の変化に気がついて声を荒立てる。
 あらゆる幻術を無効にするスキルによっていま引き起こされた現象が夢幻のたぐいではないことを示している。

 「魔力の動きもなかった、何をされたのかわからない……」

 カイもクウも探査の網を張り巡らせていた。ソレにも何も引っかかってこなかった。

 「プロポ……少しはバッティ達も成長したと思っていたが、恐ろしい奴ねぇ」

 「なんにせよ、アイツが言うようにここから脱出しないと、どこなんだここは?」

 「周囲の状況はわかりません、ここには精霊の声も届かないようです。

 周囲は漆黒の床、壁、天井に囲まれた一本道のように見える。
 床や壁のつなぎ目が紫色の薄い明かりを放っている。
 前方にまっすぐと続く道を薄ら明かりが照らしだし、かなりの長さがあることを示す。

 「進もう、それしかない」
 

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