3人の勇者と俺の物語
120章 本拠地
目の前で起きたことを報告する。
タイラー提督の指示で本来集合するはずだった地点に一度全員集合することになる。
一同からの報告を聞きながらタイラー提督は苦虫を噛み潰したような顔になる。
「やられたかもしれません、あの大群はそいつらを生み出す餌で私達の行動がそこにさらに栄養剤を突っ込んでしまったのか……」
「どういうことですか?」
「魔神バルビタールはすでに龍脈の力を手に入れていますから、女神の盾の皆さんの攻撃のエネルギーを利用することが可能になっているんじゃないだろうかと、まぁ仮定ですが。
そして大量の生物に【黒】を増やさせて一気に捏ねて混ぜれば強力な部下がポン。というわけです」
わかりにくいけど何となく分かる説明を受ける。
「なんか、むかつくね」
「利用された……」
「結果からは推測できますが事前に謀を察知するのは難しいですよね」
「ワタル様たちの話を推測すると4人の魔人が生まれているんですよね」
「しかも、凄い強い」
「全然美しくないけど、あのデブは強いわよぉ~、正直あそこで襲われたら私達やられてしまっていたと思う」
「あの女も実力が計り知れませんでした」
「あの武闘家もとんでもない強さだと思います。ワタル様や皆そろっていても果たして……」
皆の感想に思わず唸ってしまうタイラー提督。
「こうなると、情けない話ですが女神の盾の皆様に黒竜の巣を制覇してもらうしか手がないのかもしれないですね……」
力なくそうつぶやく。彼の知略を持っても有効な手立ては圧倒的な実力不足なことが何よりも悔しかった。
「そんな強力な魔人が4人も、前からいるプロポも合わせて5人は魔神の元にいる。
それらを全員倒さないと、セイは救えないのですね……」
暗い表情を見せるカイ。大丈夫だよ! と普段のリクならいいそうだが、冷静に今の現状をみて考えこんでしまっている。クウも目の前に現れた魔人の底を計っているように目をつぶっている。
「なんにせよ、今後の魔神達の動きはどうなるのか正直全くわかりません。
各街、村人の輸送は着実に進んでいます。我々はどうするべきか……」
「敵の本拠地に乗り込んで魔神バルビタールを倒してセイを助ける。それだけです」
ワタルは静かに、それでも力強く告げる。
確固たる意志の表れであった。
タイラー提督はじっとワタルの顔を見つめ、そして頷く。
ワタルの意思は曲がるものではないし、揺るぐものではない、そして現実問題として他に選択肢がないことをタイラー自身が誰よりもわかっていた。
「お願いします」
「私からもお願いする」
場の議論を静かに聞いていた女王と二人、深々と頭を下げる。
「皆もそれでいいかな?」
ワタルはメンバーの顔を見渡す。
先程までの不安はワタルの一言で吹き飛んでいた。
やるしかない。
バッツはワタルの成長を感じて嬉しそうにうんうんと頷いている。
「出発は明日。今日はゆっくりと休んで、
明日たから始まる戦いの準備を精一杯後悔のないように行ってくれ。
明日、日の出とともに北門に集合だ」
この戦いで死ぬかもしれない。後悔のないように。そう取れなくもない発言だが、
ワタルも含めて一同はそんな気持ちは1mmもなかった。
この戦いを終えてセイを取り戻し世界に平和も取り戻す。
リク、カイ、クウの3人は王城にいるそれぞれの家族の元へ帰っていった。
バッツはいつもどおり酒場で過ごすそうだ。
カレンも珍しくバッツに付き合うと言い出す。
ユウキとワタルは日本人同士ゆっくりと過ごすことにする。
別世界から来た数奇な運命をともにした友人として、
現状を聞いてもゲーツは冷静に商会の人員を送り込み商会の開業と拠点確保のために動くという。
終わった後の世界に皆で笑顔でいられるように帰る場所を作っておくそうだ。
本当にいい嫁だよ。
皆それぞれの時間をゆっくりと過ごした一夜。
ワタルとユウキも昔の話、こっちに来てからの話をゆっくりとして、それぞれの部屋で眠りについた。
家族と過ごしたもの、友人と過ごしたもの、自分の信じるもののために奔走したもの。
戦いの前の夜はこうして過ぎていった。
まだ外は暗い、それでも自然と目が覚める。
目が覚めていつもと同じように朝の支度をして朝食をとる。
集合は日の出、間もなくだ。ワタルはユウキと一緒に宿を出る。
北門ではすでに皆が待っていた。
リク、カイ、クウの家族も見送りに来ている。
王女に提督、それにたくさんの兵士が並んでいる。
「女神の盾の勇者たちに敬礼!!」
タイラー提督の激が飛ぶと兵士が規律の取れた動きで礼を示す。
「すまない、皆にこの世界を任せるぞ」
王女はワタルの手をがっしりと握る。
「全力を尽くします」
皆それぞれ出立の挨拶を交わす。
「ゲーツ、すまないが後を頼む」
ゲーツは首をふる、すまないなんて言わないで下さいそう言いたげだ、
潤んだ瞳でまっすぐとワタルを見直す。
「待っています。無事に帰ってきて下さい。ワタル様」
必ずここに帰ってくる。その強い決意を込めて力強く頷く。
目指すは敵の本拠地、黒竜の巣。
ワタル達の長い旅の目的地に向けて今、走りだす。
 
タイラー提督の指示で本来集合するはずだった地点に一度全員集合することになる。
一同からの報告を聞きながらタイラー提督は苦虫を噛み潰したような顔になる。
「やられたかもしれません、あの大群はそいつらを生み出す餌で私達の行動がそこにさらに栄養剤を突っ込んでしまったのか……」
「どういうことですか?」
「魔神バルビタールはすでに龍脈の力を手に入れていますから、女神の盾の皆さんの攻撃のエネルギーを利用することが可能になっているんじゃないだろうかと、まぁ仮定ですが。
そして大量の生物に【黒】を増やさせて一気に捏ねて混ぜれば強力な部下がポン。というわけです」
わかりにくいけど何となく分かる説明を受ける。
「なんか、むかつくね」
「利用された……」
「結果からは推測できますが事前に謀を察知するのは難しいですよね」
「ワタル様たちの話を推測すると4人の魔人が生まれているんですよね」
「しかも、凄い強い」
「全然美しくないけど、あのデブは強いわよぉ~、正直あそこで襲われたら私達やられてしまっていたと思う」
「あの女も実力が計り知れませんでした」
「あの武闘家もとんでもない強さだと思います。ワタル様や皆そろっていても果たして……」
皆の感想に思わず唸ってしまうタイラー提督。
「こうなると、情けない話ですが女神の盾の皆様に黒竜の巣を制覇してもらうしか手がないのかもしれないですね……」
力なくそうつぶやく。彼の知略を持っても有効な手立ては圧倒的な実力不足なことが何よりも悔しかった。
「そんな強力な魔人が4人も、前からいるプロポも合わせて5人は魔神の元にいる。
それらを全員倒さないと、セイは救えないのですね……」
暗い表情を見せるカイ。大丈夫だよ! と普段のリクならいいそうだが、冷静に今の現状をみて考えこんでしまっている。クウも目の前に現れた魔人の底を計っているように目をつぶっている。
「なんにせよ、今後の魔神達の動きはどうなるのか正直全くわかりません。
各街、村人の輸送は着実に進んでいます。我々はどうするべきか……」
「敵の本拠地に乗り込んで魔神バルビタールを倒してセイを助ける。それだけです」
ワタルは静かに、それでも力強く告げる。
確固たる意志の表れであった。
タイラー提督はじっとワタルの顔を見つめ、そして頷く。
ワタルの意思は曲がるものではないし、揺るぐものではない、そして現実問題として他に選択肢がないことをタイラー自身が誰よりもわかっていた。
「お願いします」
「私からもお願いする」
場の議論を静かに聞いていた女王と二人、深々と頭を下げる。
「皆もそれでいいかな?」
ワタルはメンバーの顔を見渡す。
先程までの不安はワタルの一言で吹き飛んでいた。
やるしかない。
バッツはワタルの成長を感じて嬉しそうにうんうんと頷いている。
「出発は明日。今日はゆっくりと休んで、
明日たから始まる戦いの準備を精一杯後悔のないように行ってくれ。
明日、日の出とともに北門に集合だ」
この戦いで死ぬかもしれない。後悔のないように。そう取れなくもない発言だが、
ワタルも含めて一同はそんな気持ちは1mmもなかった。
この戦いを終えてセイを取り戻し世界に平和も取り戻す。
リク、カイ、クウの3人は王城にいるそれぞれの家族の元へ帰っていった。
バッツはいつもどおり酒場で過ごすそうだ。
カレンも珍しくバッツに付き合うと言い出す。
ユウキとワタルは日本人同士ゆっくりと過ごすことにする。
別世界から来た数奇な運命をともにした友人として、
現状を聞いてもゲーツは冷静に商会の人員を送り込み商会の開業と拠点確保のために動くという。
終わった後の世界に皆で笑顔でいられるように帰る場所を作っておくそうだ。
本当にいい嫁だよ。
皆それぞれの時間をゆっくりと過ごした一夜。
ワタルとユウキも昔の話、こっちに来てからの話をゆっくりとして、それぞれの部屋で眠りについた。
家族と過ごしたもの、友人と過ごしたもの、自分の信じるもののために奔走したもの。
戦いの前の夜はこうして過ぎていった。
まだ外は暗い、それでも自然と目が覚める。
目が覚めていつもと同じように朝の支度をして朝食をとる。
集合は日の出、間もなくだ。ワタルはユウキと一緒に宿を出る。
北門ではすでに皆が待っていた。
リク、カイ、クウの家族も見送りに来ている。
王女に提督、それにたくさんの兵士が並んでいる。
「女神の盾の勇者たちに敬礼!!」
タイラー提督の激が飛ぶと兵士が規律の取れた動きで礼を示す。
「すまない、皆にこの世界を任せるぞ」
王女はワタルの手をがっしりと握る。
「全力を尽くします」
皆それぞれ出立の挨拶を交わす。
「ゲーツ、すまないが後を頼む」
ゲーツは首をふる、すまないなんて言わないで下さいそう言いたげだ、
潤んだ瞳でまっすぐとワタルを見直す。
「待っています。無事に帰ってきて下さい。ワタル様」
必ずここに帰ってくる。その強い決意を込めて力強く頷く。
目指すは敵の本拠地、黒竜の巣。
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