3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

119章 誘い受け

 実際に見るとまるで波のように魔物が押し寄せてきている、
 一面敵、敵、敵。異様な光景だ。
 こいつらが通った後の状況を想像するのが怖い。

 「お客さんを会場へ連れてくぞ、皆無理は絶対にするな。決戦はここじゃないぞ」

 「「「了解」」」

 女神の盾のメンバーは各地で一斉に動き出す。
 ワタルの魔法とリクの一撃が敵の中腹に突き刺さる、一斉に敵の注目が集まる。
 一瞬の静寂の後ドドドドと地響きを上げて敵が殺到する。
 各地とも同じような状態だ、まぁその一撃で数千体は葬っているぐらいの攻撃ではある。
 やはりあまり統率されていたり知性を感じるような行動ではない、
 ただ攻撃され、そっちを向いたら生物がいたから襲いかかる。
 戦いの気配があるから集まっていく、そんな場当たり的な行動に見えた。

 一定の距離を開けながら攻撃をしながら釣っていく、あまりに単調であまりに考えなしな行動に肩透かしを食らう。

 「なんだかこのまま殲滅出来るんじゃないか?」

 「ワタルでもなんかだんだん攻撃で倒す数が減っているよ」

 そんな会話をしていると通信が来る。

 「シャイアだ、タイラーに変わるぞ」

 「タイラーです。どうやら奴ら倒した【黒】を取り込んで個体を強化しているようですね。
 それでも数は減らして方がいいと思いますが可能なら跡形もなく消し去りながら攻撃して下さい」

 さらっととんでもないことを言ってくる。
 ただ、そう指示があればその通りに実行できる実力がある女神の盾のメンバーである。

 「だそうだ、リク。一緒にやるか」

 「ワタルが合わせてねおもいっきり行くよー」

 リクは一気に龍気と闘気を練り上げる。
 ワタルはそこに魔力と龍気をを練りこんでいく。

 「いっくぞー!!」

 リクは巨大な闘気を帯びた自分よりも大きな斧をぶん回す。

 「竜斧大瀑布!!」

 巨大なエネルギーの奔流が敵の波に激突する、そこに何もないかのごとく無慈悲に敵を飲み込み文字通り消し去っていく。
 全体の半分近くをこの世から消滅させる。

 「うおー、壮観だなぁ……」

 「ブイ!」

 めっちゃ嬉しそうなドヤ顔でVサインするリク。かわいい。

 「もう一発やっちゃうよー」

 「任せとけー」

 無慈悲な一撃が敵を飲み干す。
 すべての敵を飲み込んだ龍は満足気に空へ消えていく。
 気がつけば誘導するはずが殲滅してしまっていた。
 ボコボコとした荒れ地だった場所がまっ平らな広大な整地にされていた。

 「やっつけちゃったね」

 「とりあえず連絡してみるか」

 みんなに状況報告しようとした時異変が起きる。
 地面に飛び散っていた【黒】が水のように一箇所に集まっていく。

 「ワタル、なんか様子がおかしい」

 集まった【黒】を中心に風が巻き起こり周囲から様々なものを吸い込んでいく。
 風が収まると球形の【黒】が空中に浮かんでいる。

 「なに、あれ?」

 「わからないけど、注意しろ。嫌な予感しかしない」

 「ワタル様聞こえますか?」

 「ああ、聞こえてる」

 「結局そのまま殲滅したのですが、予想外の事が起きてます」

 「多分こっちも同じだ、【黒】があつまってるんだろ?」

 「そうです、カイもクウも同じことが起きているみたいです」

 「みんな殲滅したのか、考えることは一緒だな」

 「皆さんの実力を過小評価してましたね、多分ですがその塊は危険です。
 本来の目的はこっちだったんだと思います」

 「これも予想済みってことね」

 「ですが、そこから何が出てくるかは未知数です」

 「鬼が出るか蛇が出るか……」

 球体は変わらずそこに佇んでいる。

 「攻撃してみる?」

 「どう思いますかタイラー提督?」

 「無駄に刺激はしたくないですが、
 相手が準備しているなら崩しておいたほうがいいかもしれませんね。
 お陰さまで国民の退避は余裕を持って行えそうです。
 十分注意して回避できる程度の攻撃に留めて下さい」

 「了解、リク何が起きても対処できる攻撃だ」

 「小手調べね、いっくぞー」

 様子見でありながらも凶悪な攻撃力を持つ斬撃を放つリク、ワタルも魔力による補助は忘れていない。
 もちろん相手の反応によっては撤退する準備もしっかりと取っている。
 斬撃はそのまま【黒】の塊を貫いていく。
 パカッと球体がまっぷたつに割れる。

 「え!?」

 リクが思いもよらない出来事に素っ頓狂な声を上げてしまう。

 「皆、まだ油断するなよ」

 しかし、ワタルは周囲から一切の変化を見逃さないように気を張る。
 以前一度苦湯を飲まされている。魔力による監視も合わせている。

 誰も油断しないことを確認したかのように変化が現れる。
 割れた球体の切断面からもわもわと黒い煙が立ち上り形を作っていく。

 『以前に似たようなことした奴がいたみたいだな、
 油断したらそれを突いてやろうかと思ったんだがな』

 独特の声色、バルビタールの眷属の気配がする。

 「皆同じ状況か?」

 言葉少なく確認だけする。

 「ええ」

 「こっちも」

 「現れました」

 どうやら別れた皆のところで同じように敵が現れている。

 『ふむ、どうやら無事に皆生まれたようだな。悪いがここでお前らの相手はしていられないぞ。
 我らが神のもとへご挨拶が先だ。お前らとはいずれ遊んでやるよ』

 形作られていく姿は武人。
 着物のような服装に二本差し。
 鋭い目つきにボサボサとした髪、肌の色は薄ら青いが口ひげを含めて雰囲気がある。
 この距離でもハッキリと分かるほど、強い。

 ここ以外にも全部で4人の魔人が現れていた。

 巨漢の男。といえば聞こえはいいがデブだ。
 トゲトゲな鉄球のような武器を背負って不敵にグフグフと笑っている。

 艶めかしい姿の女性。背中と胸元までバックリと開いたレオタードのような姿にガーターベルト。
 変態のような姿だがそのプロポーションは凄まじい。
 派手でねっとりとした顔つきと相まってすこし下品な色気を振舞っている。

 筋肉ダルマ。道着のような服装でつるっぱげ。
 黒色の肌に真っ赤な光り輝く瞳。
 口元には牙も見える。大男だ。

 全員只者ではないことは雰囲気でわかる。
 武士のような男が言ったように皆女神の盾のメンバーを一瞥して黒竜の巣へと飛んで行く、
 飛び去る姿に一分の隙もない。

 全員感じていた。
 あいつらは自分たちよりも強いと。

「3人の勇者と俺の物語」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く