3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

116章 ノーザンラクト大陸

 とうとう最後の大陸ノーザンラクトへ足を踏み入れた。
 まずはシャイア王女が待つノーザンラクト城城下町へと向かう。
 ノーザンラクトはこの世界の最も北に位置する、冬場には厳しい寒さに襲われるものの農耕業が大変盛んで世界の食料庫とも呼ばれている。
 今の時期は寒さの厳しい季節ではないのでウェスティア帝国に比べると少し涼しく過ごしやすいと感じる程度だ。

 「ホイス村あたりまで行くとこの時期だと少し肌寒いかもしれませんよワタルさん」

 ホイス村はこの大陸でも北寄りに位置する。
 最北にある極寒の地黒竜の巣、魔神バルビタールがいる敵の総本山から少し南下した場所になる。
 ノーザンラクト城はウェスティアから転移して訪れた港町から馬車で3日ほどの位置になる、
 車で移動すれば一日もかからない、そこからホイス村までは車でも4・5日はかかるという予想だ。
 ホイス村は山岳部の側になるので道路の状態があまり良くない。
 馬車でも休みながらかなりの日数をかけて移動する。
 村の生活は特産の果実を扱う商人が持ってくるものに頼っている面が大きい。
 まぁこれからは女神の盾商会の転移魔法による太い輸送ラインが出来上がるので、
 ホイス村の発展は約束されているようなものだ、嫁の実家には出来る限りの誠意を見せたほうが正解だ。

 そうなのだ、ワタルにとって初めての嫁にする女性の実家に行くというイベントなのだ。
 じつはこのことにワタルは魔神との戦いに似た緊張を覚えていた。
 所詮普通の男子高校生であるワタル。
 頭のなかはグルグルとテンパッている。
 3人はへーきへーきと軽いこと言っているが、まだ若い娘の親というやつは一種のモンスターだ。
 いずれ来る大きな戦いにワタルは挑まねばならないのだ。

 ノーザンラクト城までの道のりは数度の戦闘はあったものの、
 カレンとカイによる遠距離射撃、遠距離魔法で掃討されていくだけだ。
 順調そのものままノーザンクラフト城城壁を肉眼で捉える。
 すでに遠距離通信装置魔法具は女王に渡してあるので先触れ代わりに一報を入れておく。
 そのまま城へ向かって欲しいとの女王の意を受けてそのまま正門へと向かう。
 すでに城兵が待機しておりそのまま車で接近していく一同。

 「お待ちしておりました、ここからはこちらで馬車を用意いたしました」

 異形の車に周囲の人々は驚いていた、さらに巨大な車を収納するアイテムボックスにも度肝を抜かれていた。城へ入る前から人目を引いてしまっているが、すでに彼らはそんなことを気にするようなパーティではない。じつはすでに世界で唯一のSSパーティ認定も受けていたりする。
 商会の方もS級商会に昇級している。基本的にS級というやつは義務がなくなり権利を保有するといういいことづくめなので盤石な基盤を築くことに成功したと言っていい。
 一方で急速な成長を妬むところも多そうだが、そこは屋台骨であるゲーツが見事な手腕で他の商店への利益供与などで巧みにコントロールされていた。
 冒険は一緒にしてはいないものの嫁のひとりとしてしっかりとワタルを支えている内助の功である。

 ノーザンラクト城城下町は全体的に高い建物が少なく細かな路地が街のいたるところに巡らされている。下町を思わせるまちづくり。台所とも言われるほど農畜産が盛んなので露店などでも食材を売る店が多く活気はある。
 ワタルも馬車に揺られながらも鋭い目で良質の食材を探している。
 何箇所かあとで買いに行こうと記憶することを忘れない。
 リクとクウとカイは久しぶりの生まれた土地へ帰ってきて故郷の風を感じている。
 城門も抜けノーザンラクト城の姿が目の前に現れる。
 ノーザンラクト城はなんというか厚みのある重厚さがあり美しい帝都の城とことなり機能美という言葉が似合っている。
 正門の大きく分厚い鉄扉を抜けると左右にたくさんの兵士が立ち並ぶ中央広場だ。l
 山も多いノーザンラクト大陸は鉱物生産も多い。
 馬車が止まりパーティメンバーが広場へ降り立つと左右の兵士がザッ! と剣を掲げる。
 その先にはノーザンラクト国王である、シャイア王女が待っている。
 相変わらずセクシーな気配をむんむんとほとばしらせている。
 あんまり見るとまた骨の二三本おられるのでワタルは出来る限り冷静を装う。

 「お久しぶりですシャイア王女、ようやくこの大陸まで来られました」

 「ようこそいらっしゃいました女神の盾の皆さん。あなた達に女神様の加護があらんことを」

 挨拶を済ませ今のところの情報交換も含めて軽食を食べながら話すことになった。
 謎の客人というバレバレの他大陸の王たちも一緒だった。
 女神から知らされた事実も残念ながらそのまま話すわけにはいかないので事前に決めていた通りの話を皆の前でする。

 「他世界の邪神が手を貸していたのですか……、しかも、特に意味もなくとは……」

 「不条理なこととはいえ、現実問題はその悪意にどうやって対抗するかじゃ」

 「各大陸は大体【黒】の被害もコントロール出来てるぜ、魔神さえ倒せればまたこの世界にも平穏が訪れるなら女神の盾に全面的に協力していくしかないだろ」

 各国の王の意見はだいたい同じだ。
 それぞれの大陸できちんと【黒】の被害を抑えて、女神の盾の魔神撃破を応援する。
 冒険者としてこの世界の人間と女神の盾のメンバーの実力は大きく離れてしまった現在、
 それが最善の打てる手になっているのは事実だ。

 その後も話し合いは続けられたが目新しい打開案は出ることはなかった。
 しかし、どこかこの大陸での最後の戦いが終われば世界が救われるという楽観視が占めていた。
 各大陸における魔神による被害も殆ど無い以上それは仕方がないと言えるかもしれなかった。

 

 

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