3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

105章 カイとクウの神殺し

 カイはリクと弓アルスとともに一種の閉鎖空間を作り出していた。
 外への弓でのちょっかいをさせないためだ、その代わり他の人は助けにはこれない。
 それでも2対1。圧倒的優位で戦える。そう思っていた。

 【ふむ、その程度の障壁で私の弓が防げるかな?】

 弓アルスが弓を引き放つと凄まじいレーザーのような一撃が弓から放たれた。
 その一言がただのハッタリでないことはその一撃で理解した。

 「もうすでにそれは弓じゃないじゃん」

 「な、なんて威力・・・・・・」

 【これは私の愛弓だからな、なかなかのものだろ?】

 「クウ、悪いんだけど私は全力であの攻撃を外に漏らさないようにする。
 あれで狙われていたら他の人がまともに戦えない。任せたわよ」

 「任せて」

 言葉にせずともお互いやるべきことはわかっていたが、あえて口にする。
 すきがあればカイも攻撃してアルス神の裏をかきたいってのも少しあるが、
 本当に余裕はないだろう。それほどの大砲を見せつけられたのだ。

 もちろんそんな大砲ばかり撃ってくるわけじゃない、
 むしろ大砲ばかりならやりようはいくらでもある。
 速射、曲射、それに大砲とアルス神からしても弓は愛用の武器らしく多彩な攻撃がクウを襲う。
 クウはそのスピードを最大限に活かして的を絞らせないようにする、
 クウが雨のように降り注ぐ矢を避けて必死に近づこうとしても弓アレスは舞うように攻撃を加えつつ一定の距離を詰めさせない。
 カイも援護を試みるも一瞬でも気を抜けば他のメンバーへの攻撃を許してしまう。

 このままでは埒が明かないとクウは札を切ることにする。
 弓アレスの大砲が放たれると今までとは違いギリギリで避けるようにする。
 一見すると少しでも回避の時間を減らして距離を詰めたいという意図に感じられる。
 でもクウの狙いはそこではない、そしてそれは突然訪れた。

 「クウ!?」

 弓アレスの大砲がクウを直撃したのだ。
 さすがのカイも想像していなかった事に驚きの声を上げる。
 弓アレスも突然の出来事に一瞬その動きが鈍る。
 そのアレスに直上から攻撃が降り注ぐ、身をひねり避けるも肩口に一撃を受けてしまう。

 「忍法・空蝉の術」

 カイも含めてその場にいる皆が居を突かれる。
 忍術だ。

 「カイ驚かせてごめん」

 「びっくりしたよ! って、え?」

 いつの間にかカイの隣りにいるクウ、今アレスに斬りかかっているのもクウ。

 「分身の術」

 にやりと笑うクウ。
 さらにアレスに斬りかかるクウが増える。

 【忍術とは珍しい技を!】

 分身クウの数体に矢が突き刺さるとボワンと煙が出て消える。なかなかシュールな絵面だ。
 分身は姿形こそ同じだが攻撃能力はほぼ皆無なのだ。
 それでもわらわらと弓アレスに群がっていくクウの群れ、
 本体も混ざって隙をついていく。

 「風遁 疾風迅雷」

 「土遁 爆砕岩龍」

 「水遁 氷刃蘭花」

 「火遁 爆炎焼殺」

 分身も含めて次から次へと忍術を浴びせていく、虚実入り乱れ弓アレスの被弾も増える。
 忍術による攻撃に分身による四方八方からの攻撃に暗器の投撃。
 一人でこれを管理しているクウの技術にはアレスも驚いていた。
 その怒涛の攻撃さえもある一手への布石であることをアレスは身を持って知る。

 【ぬぐっ! これは・・・・・・】

 弓アレスがクウの一撃を回避し大きく跳躍し距離を取ろうと図る。
 しかし着地点にはクウの狡猾な罠がすでに配されていた。
 着地する場には無数のまきびし、勢い良く着地した弓アレスにそれを避けることは出来なかった。
 ずっと貯めていた罠にアレスがかかる、にやりとクウは笑い忍術を発動させる。

 「土遁 磁力幻界」

 足を貫いたまきびしを起点に弓アレスを強力な磁力が包み込む、
 すでにそこら中にばらまかれた撒き菱や苦無などの暗器が一斉に襲いかかる。
 次から次へと空中にばらまかれていく暗器が磁力を帯びて一斉にアレスへ向かい飛んで行く。
 起点となっている撒き菱を抜くまで磁力は切れることはない。

 弓アレスは怒涛の攻撃を必死で防御に回る、大砲も駆使して襲いかかる暗器を処理する。
 しかし粉砕した鉄も厄介な存在と成ることに気がつく、
 粉塵状になった鉄でさえもアレスの肉体にへばりつき蓄積して動きを阻害していく。
 視界を邪魔し気配の察知を困難にさせていく。
 神気で体表から少し浮かせても結局溜まっていけば層状になり動きを邪魔していく。
 当然攻撃は散漫になりカイの参戦を許す。
 忍術、魔法が入り乱れて弓アレスに襲いかかる。
 最初の肩の傷が邪魔をして攻撃速度も落ちている。

 弓アレスはやっと足に刺さった撒き菱を抜く、返しまで付いているのでダメージは大きい。
 足の傷、肩の傷、今の猛攻で作られた大小様々な傷によって、
 すでにクウから距離を取り続けることは難しくなっている。

 「覚悟!」

 それでも掃射を続け鋭い反撃をしてくる、クウは油断することなく様々な手で攻撃を続ける。
 群がる分身を正確に撃ち続け未だに衰えることのない攻撃を続けるアレスにクウもカイもすでに恨みはなく尊敬の気持ちさえ持ち始めていた。
 カイもアレスの攻撃には注意を忘れずに攻撃に転じている。
 そしてついには弓をもつ手首をクウが刎ねる。

 【見事だ、さぁやれ】

 「御免」

 クウの一刀がアレスの首をはねる。
 これにて激戦の幕は降りた。

 二人は激戦を乗り越えた安心からやっと張り詰めていた気持ちを弛緩させる。
 周囲を見渡すと、自分たち以外のメンバーの戦闘も今まさに終わろうとしていた。
 

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