3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

102章 個と全、全と個

 皆で再会を喜び久々に会話があり、笑顔があり、味のある食事になった。

 「な、なんか、上手く話せないね」

 「うん、うん、でもみんな元気でよかった・・・・・・」

 「玄武の時より、ある意味つらい。一人はきつかった」

 「こうして皆様の姿をみて仲間の大切さを改めて感じました」

 「バッティも寂しかったわぁ~、それにしても皆お洋服作りなおさないとね~」

 ユウキはチラチラとワタルを見ながら顔を赤くしてうつむいたりを繰り返していた。

 「どうしたのユウキ?」

 「え? う、うん。なんか、ワタルかっこ良くなったなぁって・・・・・・///」

 ワタルは今回の特訓で絞るだけ絞りこまれて精悍な顔つきになっていた。
 男子三日会わざれば刮目して見よ。よろしく以前との雰囲気の変化は大きかった。
 その結果さらにユウキのドストライクの外見に図らずもなっていたのだった。

 「ほんとだー、なんか大人になったね」

 「ユウキさんはワタルさんの事良く見てるんですね」

 「・・・・・・ずっと、逢いたかった・・・・・・から・・・・・・」

 ユウキはお湯でも沸かせるぐらい顔を真赤にしてそう答えた。
 女性陣は思った。こいつ、やるな!

 「あ、ありがと・・・・・・」

 ワタルも顔を真赤にしてはにかんでいる。

 「あー、なんかこの部屋アッツイわぁ~。ワタルきゅんお酒出してもらっていい-?」

 ニヤニヤしながらバッツがツッコミを入れる。
 こういう当たり前の時間が本当に久しぶりなんだ。ワタルは強くそう感じていた。
 そして、ユウキ可愛いなぁ~が頭の大半を占めていた。
 女性陣に走る危機感。
 天然モテ系女主人公みたいなユウキに一同は畏怖を覚えていた。
 久々の再会に一気に新参者に持って行かせるわけにはいかない。
 しかし、玄武の件を知っているメンバーは明日からの再び地獄を考えると行動には移せなかった。
 ワタル自身も過去の経験からこの日は素早く床についた。
 幸か不幸か一頭独走は免れたのであった。

 朝いつものように目が覚める。しかし、今までの日々とは違う。
 食堂で一人孤独に一日活動するためのエネルギーを流し込む作業をするのではないのだ。

 「おはよう」

 「「「「おはよー」」」」

 挨拶をすると返事が返ってくる。ただそれだけのことがこんなにも嬉しいことだと気がついた。
 失って初めて気がつく大切さ。
 談笑しながらの楽しい朝食、たとえこの朝食が終わって地獄の戦場へ送られるとわかっていても、
 今日からは仲間がいる。
 腕を折られ、足を斬られ、肺を潰され、首をおられる日々は変わらないかもしれない、
 でも、今日からは仲間が横にいる。
 こんなにも大切なことを今まで当たり前のように感謝することもいつの間にか忘れていた。
 仲間への感謝と信頼。女神の盾のメンバーの繋がりはより一層強く深みをましたのは間違いない。

 「さぁ、行こう」

 皆無言で頷く。
 その日からも数限りなく戦闘が繰り返された、アルス神は本当に精一杯頑張ってくれた。
 ああ、頑張ってくれた。情熱丸出しでやる気を出してくれている。

 空耳のように聞こえてくる。

 【どーしてそこで諦めるんだ! もっとやれるだろ!! 頑張れ!! 頑張れ!!】

 【無理じゃない!! 無理だと思うから無理なんだ!! やってみろ! 
 ほら、出来たじゃないか!! やれば出来るんだ!!】

 【いまやる気にならないでいつやる気になるんだ! 腹から声出せ! 頑張れ!!】

 【もっと熱くなれよーーーーーーー!!】

 パーティ戦闘になるとお互いの意思の確認は大変大事だ。
 そしてそれは幾重の反復によって養われていく。
 女神の盾のパーティはアルス神に与えられた試練を通して、普通のパーティなら一生涯に経験するような戦闘をぶっ続けで数週間繰り返し行なっていた。
 すでに一同に言葉による説明は必要ない、こうして欲しい時はすでに適したメンバーが行っている。
 それが当たり前のように行われていた。
 何度となく決壊し、難度もしに戻りしていたメンバーも、いつの間にか一日を終えられるようになり、
 ボロボロだった体が傷一つ無く一日を終えていることに気がつく。

 【素晴らしい。ここまで人間は成長できるんだね。明日で今までの総まとめだ。
 君たちの力のすべてを見せてくれ】

 幻聴ではなく本物のアルス神のこえが食卓に響いた。
 ぎりっ
 皆拳を握り、奥歯を噛みしめる。
 絶対に、許さない。
 強くなったことには一定の感謝はあるが、それを補って余りある憎悪が彼らの心を支配していた。
 さすがのバッツもアルス神には素の言葉がでてしまうほどであった。

 「みんな、聞いたな」

 「ええ」「うん」「ああ」「はい」

 皆顔を見合わせる、この特訓で皆顔つきは引き締まり精悍になった。と、言えば聞こえはいいが、
 その境地に至るために人間としての大切な何かを犠牲にしたのではないだろうか?
 所作振る舞いは最適化され、周囲の気配を探り、相手の一挙一投足を自然に測ってしまう。
 完成された戦闘マシーンが7体そこには出来上がっていた。

 この地獄のような特訓の日々も明日で終わる。

 そして、翌日。最後の仕上げと言われた日。
 戦場で女神の盾の前に対峙していたのはアルス神が7人。
 それぞれ違う武装をしていた。

 【最後の相手は私が努めよう、幻影とはいえ私も本気で相手をさせてもらう。
 遠慮はいらない全力でかかって来てくれ!!】


 最高の復讐の舞台は整えられ、その戦闘の火蓋は今、斬って落とされた。


 

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