3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

101話 地獄の幕開け

 戦場に繋がる扉を開くと、7人は別々の場所へ飛ばされた。
 戦場は、山岳、雪原、火山、草原、砂浜、市街地、湿地とバリエーションに富んでおり戦闘を飽きさせない工夫がされている。
 一日キリのない戦闘を繰り返し精神肉体が疲弊しきって壊れる寸前に休憩所へ転送され、
 流しこむように食事を取り泥のように眠る。
 ご丁寧に個室待遇だ。
 朝、目が覚めると食事を流し込みまた戦場へと送られる。
 ありがたいことに前日とは違う戦場だ。
 仲間とは携帯電話型魔道具にて会話はできるが、疲れて二言三言恨み言を言って寝る。
 そんな生活だ。



 ☆ワタル☆

 ワタルは先程の戦闘で数の暴力により一気に押し込まれてしまい控室に飛ばされた。
 激痛を発する全身の怪我が気持ちの悪い速度で治癒していく。
 自分自身でも回復魔法をかけ怪我を完全に治す。
 ふーっ、と一息つくとまた戦場へ飛ばされていた。
 転送されたワタルを見つけ四方八方から敵が襲いかかってくる、
 ワタルは様子見などしない、現状最も強力な魔法を放ち、剣を構え、槍を構え、斧を振るう。
 その日の終わりを告げる転送まで延々と、無限に湧く魔物を斬って斬って斬って、
 焼いて、切り裂いて、凍てつかせて・・・・・・
 心が折れそうになるが結局痛い思いをしてこの戦場へ引きずり込まれる。
 ならばなるべく被弾せず、効率よく敵を倒したほうがまだいい。
 たまに大型で強力な敵も混ざっている。
 雑魚に時間を取られているとそいつらが増えていってしまう。
 できるかぎり的確に、広い視野で戦場全体を把握しなければいけない。
 腕が重い、足が動かなくなる、限界を超えると控室で強制的に回復させられてまた送られる。
 今日は4回デスポーンした。あんな痛い思いを4回も・・・・・・嫌だ、嫌だ、嫌だ、
 それでも明日は来る。痙攣する胃を押さえつけて食べ物を流し込む。
 飲み込むんだ。そしてシャワー浴びて寝よう。寝ている時だけが、開放されるんだ。


 ☆リク☆
 正面の敵をぶった切る、右からくる敵をぶった切る、背後から来る敵をぶった切る、左から来る敵をぶった切る、上から来る敵をぶった切る、足元を狙ってくる敵をぶった切る、ぶった切る、ぶった切る。

 ☆カイ☆
 頭痛がする、魔力切れだ。ああ、この後私はまたあの激痛のなかズタボロにされて別室へ飛ばされる。
 嫌だ、嫌だ、嫌だ。今日の転送はまだなの? 杖を振り回し抵抗する。杖術を極めているカイは魔法がなくても戦える。ただ杖術は多対一をなぎ倒すような技はあまりない。いずれ数に押し込まれる。
 激痛に目をさますと別室で気持ちが悪い早さで傷が治っていく。魔力も回復していく。
 回復したらまたあそこだ。もっと効率よく戦わないと、もっと上手に立ち回らないと。
 いやだ、あんな痛い思いは嫌だ。もうすぐ送られる・・・・・・嫌だ。

 ☆クウ☆
 湿地帯は嫌いだ、足をとられる。滑る、思ったように動けない。止まったらやられる。
 スピードこそ私の生きる道。これを活かす戦い方を考えよう。
 もう二度も奴らに殺された、あんな目にはもう会いたくない。
 考えろ、動かせ、考えろ、動かせ、かんが、あ・・・・・・

 ☆カレン☆
 魔法で距離を取り弓で撃つ。私にはこの方法しかない。
 正確性を上げる。打つ回転を上げる。持続力を上げる。これしかない。
 不意の接近にも冷静に魔法を発動させる。頭は止められない。動き続ける。
 頭が痛くなってきた。魔力切れの兆候だ。
 また、あの痛みに耐えるのか・・・・・・まだ、何かできる。考えろ、考えるんだ。

 ☆バッツ☆
 やっぱりあたしってば小回りが効かないわねぇ。
 小さくて素早いタイプは苦手ね。
 小太刀も持ったほうがいいかしらね。
 大剣と小太刀の二刀流。うーん、創作意欲が湧くわね。
 でもクウちゃんと被っちゃうわね-困っちゃうわ-。
 それにしても早くシャワー浴びてお肌の手入れしないとー、毎日こんな汗だくじゃ肌が荒れちゃうわぁ。

 ☆ユウキ☆
 まずいな、あと5・6分で限界点だな。これは困った。
 すこしづつ粘れるようにはなってきているが、またあの部屋に戻されてしまう。
 もう少し出来ると思っていたが、こんなものか。
 ただ、成長は感じる。もっと強くなってワタル君の力になりたい。
 ああ・・・・・・ワタルに会いたい。



 こんな日々を過ごしていた。
 来る日も来る日も戦場に身をおいた。
 時には防御が高い敵が多い日、今日は素早い敵が多い、今日は一撃が強い敵、それらが混ざっている日。ありとあらゆる戦闘を数限りなく繰り返す。
 いつの間にか体が自然と動き死ぬことも減ってきていることにも本人たちはあまり自覚がなかった。
 ただただ日々の苦痛から効率よく逃れるために効率化していっただけだ。

 今日もいつもの戦闘が終わった。機械のように食事を流しこむ時間だ。
 ワタルが食堂への扉を開くと、人がいた。一人じゃなかった。
 ぎこちなく笑顔を見せるクウがそこにいた。
 それからリク、カレン、バッツ、カイ、ユウキが現れた。
 皆いつの間にか泣きながら抱き合っていた。バッツは子どもたちを見るような暖かな目でそれを見守っていた。

 【さぁ、今日までで基礎はできた。明日からはパーティとしての戦闘をバリバリ鍛えていこう!
 皆がどんどん成長するのを見て私も嬉しいよ! それじゃ頑張って!】

 突然のアレス神の声が食堂に響く。
 すでに一行は文句をいう元気よりも再会を喜ぶ気力しか無かった。

 基礎。というオソロシイ単語には全員気が付かないふりをするしか無かった。


 

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