3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

85章 帝都入城

 なんだかいろいろなことがありすぎてすっかり遅くなってしまったけど、
 再び帝都に向けて進みだす女神の盾の一行。
 ポイントしておいた地点から車を少し急ぎ気味に走らせる。
 寄り道のおかげで女神の盾商会としては成長したので結果オーライとワタルは考えている。

 【黒】が獣人や人に取り付く可能性は考えられていたが、それが裏付けられたのも大事なことだ。
 悲しいことではあるけれど、知っていれば対応も出来る。
 まずは【黒】と戦う資格を女神の腕輪を持つ者のみに絞ることを可及的速やかに周知させるべきだ。
 女神の寝屋のメンバーはその辺りを最重視して行ってくれている。
 まだ来ないのかってジークフリード皇子に怒られちゃった。
 いろいろと考えてくれているらしい、マメなんだよねあの皇子様。

 それからの旅路は順調そのものだった。
 帝都周辺は軍がパトロールしているので魔物も少ない。
 街道整備もしっかりされている。一応馬車に考慮して少し外れたところを走っているけどね。

 「ワタル様城壁を確認しました。帝都ウェスティアまで間もなくです」

 上で見張りを買って出てくれているカレンが車内へ声をかけてくる。
 しばらくすると確かに城壁が見え始める。平原での万里眼の威力はすごい。
 城壁が近づいてくる、車で乗り入れるわけに行かないので手前で降りて街道へ合流する。
 そこまでの行列ではないけど皇子様より到着したら受付へすぐに行くように事前に言われている。
 並んでいる人から見られながら入場チェックをしている兵士の元へ向かう。
 近づいていくと兵士がひとりこちらに気がついたようで向かってくる。

 「コレコレ、きちんと列に並ばんか」

 「ジークフリード皇子から到着したら伝えるように言われているものです」

 ギルド証を見せる。ギルド証を確認すると兵士は直ぐに責任者を呼びに行く。

 「あなた方が女神の盾の皆様ですね。帝都ウェスティアにようこそいらっしゃいました。
 皇子が首をながーーーくしてお待ちですのでこのまま帝都までお願い致します」

 皇子は地味に嫌がらせしてくるなぁ。
 もぅ皇子ったら可愛いんだからぁってバッツさんが萌えてるぞ。シラナイヨ皇子様。

 帝都は重厚な城壁に囲まれた巨大な城下町になっていた。
 中央にウェスティア城、ヨーロッパ風の白を基調とした美しい城だ。
 周囲は湖と呼ぶほどの大きな堀で囲まれ、四方から橋を渡してある。
 跳ね橋ではなく石橋だ。中央通りからまっすぐと城へ向かう道は道幅も広く整備され城の威厳を醸し出している。
 街は人が多く大変活気がある。
 城へ続く通りはどうやら道への出店が禁止されているのか立派な門構えの商店が並んでいる。
 しかし横道を覗くと出店が多数出ており、人々の往来と共にこの街が賑わっていることをよく表している。

 今ワタル一行は城から使わされた高級そうな馬車に揺られている。
 5頭引きの大型の馬車だが、それが通っていても余裕のある大通りは立派であった。
 きちんと馬車道と歩道がわけられており、テレビで見るヨーロッパの都市くらい整備されている印象をワタルは受けていた。

 馬車が湖を渡す橋に差し掛かる。

 「これがウェスティアが誇る水上城です。水面に映る城の姿は日が出ている時も美しいですが、
 夜の姿も素晴らしいですよ。皆様にお泊まりいただくホテルはこの街の中でも最高の景色を楽しめると思います。是非楽しみになさってください」

 案内役の人から説明を受ける。
 逆さ城とも言える姿は確かに素晴らしかった。
 また町並みも同じように水面に姿を映しており360度の景色全てが美しく、
 これを計算して作っているこの帝都の技術の高さをうかがい知ることが出来る。

 城門の内部まで馬車で乗り入れる、馬車が停まると城の使いが扉を開く。
 そこにいたのはジークフリード皇子その人であった。

 「父に変わり私が父の御前まで案内いたします」

 女神の寝屋で会うジークフリード皇子と違う優雅な振る舞い。公式な場での皇子はかっこいい。
 バッツの目がハートになっている。
 バッツの熱烈な目線を見ないようにしている皇子の額に冷たい汗が落ちる。
 皇子に案内され謁見の間にてウェスティア帝国皇帝に謁見する。

 「そなた達が女神の盾か、息子から話は聞いておる。
 我が領土にあるダンジョンの探索を許可する、【黒】の脅威から共に立ち向かおう」

 老いてはいたが力強い言葉にはカリスマを感じる。
 国政を皇子に任せて隠居しているだけのお飾りの皇帝ではないことははっきりとわかる。

 謁見が終わるとささやかな宴が用意されていた。
 立食スタイルでそこまで豪華絢爛ではなかったが、非常に雰囲気がよく皇子の心遣いを感じる宴となった。

 「ジークフリード皇子、このような素晴らしい催しをして頂き感謝に尽きません」

 「そなたたちならダンジョン攻略に必ず成功して我が国に莫大な益をもたらしてくれることは間違いない、その先行投資に過ぎぬよ」

 素晴らしいと言われて嬉しいのか少しニヤニヤしてる。可愛いなこの皇子。

 「ひとつ愚痴があるとすればランタスが軍属から離れてしまったのは痛かったぞ」

 ランタスは南西部統括部隊分隊長でその優れた文武で皇子の懐刀とも言える人物だ。

 「ランタスさんはきっと一回りも二回りも大きくなって皇子の元へ戻ってきますよ」

 少しさみしそうな表情を見せるが窓の外の景色を見つめてワインを口にする。
 絵になるなぁこの人。

 「・・・・・・そうだな、そう願っているよ、ついでに女神の盾のご一行に一つ提案がある。
 我が国の騎士を叙勲したい。受けてもらえないだろうか?」

 「騎士ですか?」

 「と言ってもうちの国だけではない。4国共同の物だ。結構珍しいしまぁまぁ得になることも多い、
 できれば受け取って欲しい」

 「カレンとかとも相談していいですか?」

 「もちろんだ。返事は明日までに欲しい、叙勲式などもあるからな」

 「分かりました」

 その後たくさんの人を紹介された、きっとカレンが覚えているだろう。
 ワタルは愛想笑いを振りまいていた。




 

 



 


 

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