3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

84章 全力で誤魔化す!

 「こ、ここは・・・・・・?」

 「マーク!!」

 眼を覚ました男の子に皆が抱きつく、先に目が覚めていたパル君も同じ洗礼を受けていた。
 すでに全員の怪我は完治している。
 食事も勧めたが最後のマーク君が目を覚ますまで待つと言って我慢していた。
 その時間を利用して少しちゃんとした料理をワタルは作っていた。

 「お、目が覚めたね。さてと、先ずは腹ごしらえだけど、食事が終わったら話を聞かせてもらうよ」

 テーブルにチェアまで準備して食事を用意した。
 素直にワタルは皆が無事で嬉しいのだ。
 皆がひとくち食べた後目を見開いて無言で食べまくっているのをニコニコと見ていた。

 食事が終わり一息つくと再び助かったことへの安堵感か女の子たちが少し涙ぐんでいた。

 「さて、このパーティのリーダーはどの子ですか?」

 冒険者としての経験的にもこういうことはカレンさんが話すと自ら言ってくれた。
 初心者パーティの男の子が3人共凄まじい美少年だから内心はぁはぁしていたからでは断じてない。

 リーダーは足に怪我を負っていたウェスト君、金髪の短髪に真っ青な瞳、色白の肌とあいまって美しいほどの美少年だった。この子が貴族の息子だ。

 「すみませんでした」

 すっかり萎縮してしまっている、自分たちの身勝手な行動で沢山の人に迷惑をかけてしまい、
 パーティーのメンバーの命を危険にさらしてしまった。
 敵を惹きつけていた2人はあと少し遅れていたら間違いなく死んでいただろう。

 「どうしてこんなことをしたの?」

 「もともと僕たちは一緒に冒険者になることを目標に頑張ってきました、
 やっとペティが12歳になったのでパーティ登録をしたんです、
 その時に丁度新しいダンジョンが発見されたって話を聞いて・・・・・・」

 「俺が悪いんです! ウェスト様は止めたんです!」

 ウェスト君をかばうように発言したのはマーク君。ウェスト君の家に仕える執事の息子さんで剣士だ。
 真っ黒い髪に茶色の瞳、少しアジアンな顔立ちのイケメンだ。超がつく。

 「俺も悪いんです、マークの提案に面白がって乗ったのは自分です!」

 この子はパル、同じくウェスト君の家の庭師の息子さん。槍を使う。腕が折れていたのは彼だ。
 栗色の髪に深い緑がかった瞳、少し中性的な顔立ちをした、イケメンだ、ああイケメンだ。

 「違うんです、ウェスト様に甘えてダンジョンへ行くように頼んだ私が悪いんです」

 この子はメルトちゃん、魔法使いだけど助けた時はMP切れ寸前だった。
 明るい茶髪な長い髪に赤い瞳、すごい美人、かわいいって感じより美人。

 「私だって、軽い気持ちで行こうって同意したから同罪です!」

 腰まで伸びた美しい黒髪と美しい青い瞳、そして13歳とは思えないような隠し切れない双丘。
 回復職って服装が地味なはずなのに、逆にそれによってボディラインが強調される。
 おしとやかな美人。ああ、美人だ。サランちゃん。

 「女神の盾の皆様ウェスト様は悪くないんです、どうか許してあげてください。罰は私達が負います」

 最後のこの子がコーネちゃん。赤い髪を短く整えていて一瞬男の子に見えなくもないボーイッシュな顔立ち、まぁすげー整ってるけどね。髪とおんなじ真っ赤な瞳。彼女も魔法使い。

 なんなのこの美男美女パーティ。うちの女性陣も綺麗だけど、
 なんて言うか、このパーティは展示されている美術品みたいな神々しさがある。

 「僕がパーティのリーダーなんだ、責任は僕にある」
 「いいえ、俺が!」「いや、私が!」

 お互いがお互いをかばい合って話が全く進まない、心なしかカレンはニヤニヤしながらそのやり取りを楽しんでるような気がする。気のせいだよね?

 「みんな一回落ち着いてねー、少なくともパーティの責任はリーダーが取るべきなの、そこは間違えちゃダメ。無謀な行動をしてギルドに迷惑をかけて、そしてなによりパーティを危険な目に合わせた責任はリーダーが取らないといけない。これは絶対なのよ」

 あまりに収集がつかないのでバッツがビシっと締めるところは締める。

 「ただ、このままだとたぶん冒険者除籍になってしまうのよねぇ・・・・・・」

 「そ、それは・・・・・・いや、でも仕方ないですね」

 「そんな!? ウェスト様の御家再興の夢が・・・・・・なんてことをしてしまったんだ・・・・・・」

 「いいんだマーク、僕が一発逆転なんて夢を見たのが悪いんだ」

 「「「「「ウェスト様!!」」」」」

 ウェスト君がこんな無茶をした背景には没落した貴族のお家復興の夢があったかららしい。
 パーティメンバーもウェスト君のために冒険者を目指したそうな。

 「ワタル様、どういたしましょう?」

 「バッツ、なにかいい案はない?」

 「そうねぇ、ルール違反をしてもなし崩し的に許される方法もないこともないけど・・・・・・」

 「それは?」

 「きちんと実績を上げればいいのよ、たとえばー、ダンジョン攻略しちゃうとかー?」

 バッツがいたずらっぽい小悪魔のような表情で唇に指を当てる、これむしろ悪魔だな。

 「ああ・・・・・・なるほどねぇ、つまりこのままこのダンジョン制覇しちゃえばいいのか」

 「そ、それこそ僕達になんか・・・・・・」

 「よし、そしたらいっちょダンジョン攻略しちゃうかこのまま」

 カレンは静かにワタルに頭を下げる。ワタルならそういう結論を選んでくれると信じていたのだ。

 「え? えっ?」

 ウェスト君達が困惑しているが関係なく物事は進んでいく。

 「さて、皆、今言ったとおりこのままダンジョン制覇するから頑張って付いてきてね!」

 まだ現実感のないウェスト君達はそこからさらに現実感のない道程を歩むことになる。
 目の前で紙くずのようにバッタバッタと倒されていく魔物たち、
 散歩するかのようにぐんぐんとダンジョンの深部へ進んでいく、
 見たこともないようなモンスターの恐ろしい攻撃も簡単に防ぎ撃破していく女神の盾のメンバーたち。
 まさに目にも留まらぬ速度で繰り広げられる戦闘の数々。
 レベルの、いや、次元の違いを魅せつけられる。

 「あれ? ダンジョンコアと宝箱だ、てことはさっきのが主か、気が付かなかったや」

 いともあっさりと最深部まで到達してしまった。

 「へー、まだ若いから弱かったのかね?」

 ダンジョンの主の首を一刀のもとに落としたリク。

 「普通のダンジョンって初めてですけど、なんとかなりましたね」

 魔法で攻撃しながらも完璧にウェスト君達に傷一つつけずに守り切ったカイ。

 「うーん、ちょっと歯ごたえなかったなー」

 切り込み隊長としてザックザク魔物を倒していたクウ。
 その全てがウェスト君達には輝いて見えた。

 「さて、君たち。この宝箱を開けてダンジョン制覇の権利を手に入れなさい」

 「あ、断るの無しね、罰だと思って受け取りなさ~い」

 退路を断つバッツ。
 ウェスト君達は恐縮しながら宝箱を開ける。
 内部には彼らの見たことのないような武具や魔法道具、お金が入っている。

 「大ダンジョンと比べるとずいぶん少ないんだね」

 「普通のダンジョンはこれくらいです、それでもかなりの金額になるのですよワタル様」

 どこか世間ずれしているワタル一行であった。
 最深部の転移装置を使ってダンジョンから脱出する。
 外ではすっかりくつろいでいたギルド職員に暖かく迎えられた。

 その後バッツの目論見通り、手に入れた財宝の半分を違反金としてギルドへ納めることで冒険者権利の剥奪は逃れる事ができた。誰の目にも女神の盾の助力によるものとはわかっていたけど、
 本人たちが訴えなければ問題にはならない。それが冒険者というものだ。

 その後ウェスト君達はワタル達に忠誠を誓い商人の盾商会所属の冒険者となり、
 女神の塔での特訓に挑んでいく。
 ウェスト君の実家は見事に立てなおして、女神の盾商会の強い後ろ盾となってくれることになる。
 もともと商品の性質上貴族からの覚えも良かったが、これでさらに結びつきは強くなる。
 実際にはむしろウェスト君の実家が女神の盾との繋がりを得ることが出来て、
 貴族としての力を増した。ってのが今回の一件の側面でもある。

 カレンは身内に美男美女が揃って大変上機嫌だったのであった。 


 

 

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