3人の勇者と俺の物語
82章 ケジメ
朝ごはんもしっかり食べたライテを連れて森へ入るワタル達一行。
森のなかは穏やかな空気で満たされており、昨日の結界内での喧騒が嘘のようだった。
しばらく進み結界の境界へとたどり着いた、すでに結界は非常に弱いものになっており内部もぼやけて見える程だった。
「結界が消えかけてますね」
コルベは村長の息子ということだけあって幻術系の才能があった、
結界の状態も一目ですぐに把握した。
「閉鎖された空間があると今回のように内部で何かが起きて手をつけられなくなると困りますので、
素晴らしい結界だったと思います」
カレンはこの手の魔法に特に詳しい。幻術系は精霊魔法で得意とするところでカレンはかなりの使い手だったそこにメディアスの知識が加わっているのだ当然と言える。
「一応念の為に入り口は広げますね」
カレンが魔法を操作すると歪みのような場所に穴が開いていく、すこし焦げ臭いような匂いが内部から漂ってくる。
「ほら、皆が待ってるわ行くわよ!」
少し緊張した面持ちのライテが先行して入っていく。それに続いて皆も結界内部へ侵入していく。
「ワタ兄、一応内部に【黒】を含めた気配はない」
小声でクウがワタルに教えてくれた。同時に生存者の可能性も無くなる。
里があった場所は開かれた更地となっており、鎮魂のための簡単な塚が立っているだけだ。
周囲は激しい戦いのあとは燃やされているがくすぶった木々は残っている、
それが一層物悲しさを作り出している。
「なんにも・・・・・・ない・・・・・・」
「すまない、【黒】は絶対に残してはおけないためこういう状況になった」
「これをあなた達がやったのですか、凄まじいですね・・・・・・」
コルベは目の前の状況を理解して、それを行使できるワタル達の能力の凄まじさを理解していた。
「あの塚は?」
いままで静かにしていたケイが剣を突き立てただけの塚を指差しながら聞く。
「気分的なものでしかないが、鎮魂のため、だ」
「いえ、すみません。ありがとうございます」
「なんでお礼なんて言うのよ!! こいつらがお父さまを殺したんだわ!!」
「ライテ!!」
ケイがライテの頬を叩く。
「だって、だって、お父様は、お父様は・・・・・・」
ライテちゃんはうつむいたままポタポタと涙を流す。
小さな肩を震わせている、ケイとコルベが優しく抱きしめる。
「わかっていただろライテ、里はあの黒い化物にやられてしまったんだ、
そして、ワタルさん達があの化物にならないようにしてくれたんだ」
「お父様ぁ・・・・・・」
ライテはそのまま声を振り絞り泣いている。
「ケイ、ライテを頼むよ。ボクはやることがある」
そう言うとコルベは塚に向かって歩き出し、そこに刺されている剣を抜く。
「ふぅ、我が名はコルベ! この里長の息子にしてこの里の里長を次ぐものなり!
我が名をかけてワタル殿に一騎打ちを所望する! どうか受けてはいただけないか!」
「コルベ君・・・?」
突然の挑戦にワタルは困惑してしまう、
「ワタル、受けてやれ」
コルベの意図を組んだバッツが真面目な声でワタルに告げる。
「・・・・・・わかった。勝負を受けるよ」
ワタルは剣を取り出す。盾は使わない。今では女神の腕輪の中に収納できるので収めてしまう。
「行きます!!」
コルベは懸命に剣を振るう、人間に換算して12・3歳くらいの幼い身体ではあるが獣人特有の優れた身体能力によってそれなりに剣を振るうことが出来る。
それでも技術が伴わない、ワタルは打ち付けられる剣を軽く受けて弾き返す。
ただそれだけでもコルベはたたらを踏む、しかし、すぐに立てなおして繰り返し打ち込みを仕掛けてくる。
ワタルは少しづつ弾き返す力を強くする、段々とコルベも身体が崩れることが多くなっていく、
「くっ、うあああああ!!」
コルベはその体に秘めた悩みや悲しみを剣に乗せているかのように必死に剣を振るう、
そういった意図もあることはワタルも数度の打ち合いで理解していた。
そして、このままただ受け止めているだけではいけないことも、
「そろそろこちらからも行くぞ」
ワタルはスピードこそ落としてはいるが威力を乗せた剣撃を打つ。
「ぐぅぅ!」
その一撃を受け吹き飛ばされるコルベ、
「どうした、そんなもんか!?」
いつの間にかケイとライテもその戦いを見つめていた。
「このぉぉぉぉぉーーー!!!
コルベは型も何もない滅茶苦茶な振り回しになってしまっている、
それでもいまだに力強い剣撃を放てているのは獣人としての能力の高さを伺える。
「行くぞ、舌噛むなよ」
ワタルはほんの少し力を入れて連続して打ち込む、
「ぐっ! このっ! くそ、くそーーー!!!」
数発で完全に体勢を崩されたがムチャクチャに剣を振り回し距離を開ける、
「ちっくしょーーーーーー!!!!」
コルベは飛び上がり全体重をかけて剣を振り下ろしてくる、
ワタルは真正面からそれを受ける。
「死ぬなよ、龍牙!」
ワタルは基本的な技だが龍気を纏う攻撃で弾き返す、
コルベの一撃ごと吹き飛ばす、コルベの剣は根本から砕かれる、
コルベ自身も吹き飛んで気を失ってしまった。
「コルベ!」「コルベ兄!」
二人の獣人が駆け寄る、ふらつきながらもコルベは立ち上がる。
「負けましたね・・・・・・」
コルベはそうつぶやくとゆっくりとだがしっかりと歩きワタルの前で膝まづく。
「里長として、そしてこの里を代表してワタル様に忠誠を誓う事をここに誓約いたします」
「・・・・・・わかった、これからはお前の里の者と一緒に俺の力になってくれ」
これが里長を継ぐ者としての一つのケジメであった。
その後、狐族の3人はそれぞれ優れた能力を有しており、ゲーツのもとでその才覚を存分に発揮して女神の盾商会の発展に大きく寄与していくのであった。
森のなかは穏やかな空気で満たされており、昨日の結界内での喧騒が嘘のようだった。
しばらく進み結界の境界へとたどり着いた、すでに結界は非常に弱いものになっており内部もぼやけて見える程だった。
「結界が消えかけてますね」
コルベは村長の息子ということだけあって幻術系の才能があった、
結界の状態も一目ですぐに把握した。
「閉鎖された空間があると今回のように内部で何かが起きて手をつけられなくなると困りますので、
素晴らしい結界だったと思います」
カレンはこの手の魔法に特に詳しい。幻術系は精霊魔法で得意とするところでカレンはかなりの使い手だったそこにメディアスの知識が加わっているのだ当然と言える。
「一応念の為に入り口は広げますね」
カレンが魔法を操作すると歪みのような場所に穴が開いていく、すこし焦げ臭いような匂いが内部から漂ってくる。
「ほら、皆が待ってるわ行くわよ!」
少し緊張した面持ちのライテが先行して入っていく。それに続いて皆も結界内部へ侵入していく。
「ワタ兄、一応内部に【黒】を含めた気配はない」
小声でクウがワタルに教えてくれた。同時に生存者の可能性も無くなる。
里があった場所は開かれた更地となっており、鎮魂のための簡単な塚が立っているだけだ。
周囲は激しい戦いのあとは燃やされているがくすぶった木々は残っている、
それが一層物悲しさを作り出している。
「なんにも・・・・・・ない・・・・・・」
「すまない、【黒】は絶対に残してはおけないためこういう状況になった」
「これをあなた達がやったのですか、凄まじいですね・・・・・・」
コルベは目の前の状況を理解して、それを行使できるワタル達の能力の凄まじさを理解していた。
「あの塚は?」
いままで静かにしていたケイが剣を突き立てただけの塚を指差しながら聞く。
「気分的なものでしかないが、鎮魂のため、だ」
「いえ、すみません。ありがとうございます」
「なんでお礼なんて言うのよ!! こいつらがお父さまを殺したんだわ!!」
「ライテ!!」
ケイがライテの頬を叩く。
「だって、だって、お父様は、お父様は・・・・・・」
ライテちゃんはうつむいたままポタポタと涙を流す。
小さな肩を震わせている、ケイとコルベが優しく抱きしめる。
「わかっていただろライテ、里はあの黒い化物にやられてしまったんだ、
そして、ワタルさん達があの化物にならないようにしてくれたんだ」
「お父様ぁ・・・・・・」
ライテはそのまま声を振り絞り泣いている。
「ケイ、ライテを頼むよ。ボクはやることがある」
そう言うとコルベは塚に向かって歩き出し、そこに刺されている剣を抜く。
「ふぅ、我が名はコルベ! この里長の息子にしてこの里の里長を次ぐものなり!
我が名をかけてワタル殿に一騎打ちを所望する! どうか受けてはいただけないか!」
「コルベ君・・・?」
突然の挑戦にワタルは困惑してしまう、
「ワタル、受けてやれ」
コルベの意図を組んだバッツが真面目な声でワタルに告げる。
「・・・・・・わかった。勝負を受けるよ」
ワタルは剣を取り出す。盾は使わない。今では女神の腕輪の中に収納できるので収めてしまう。
「行きます!!」
コルベは懸命に剣を振るう、人間に換算して12・3歳くらいの幼い身体ではあるが獣人特有の優れた身体能力によってそれなりに剣を振るうことが出来る。
それでも技術が伴わない、ワタルは打ち付けられる剣を軽く受けて弾き返す。
ただそれだけでもコルベはたたらを踏む、しかし、すぐに立てなおして繰り返し打ち込みを仕掛けてくる。
ワタルは少しづつ弾き返す力を強くする、段々とコルベも身体が崩れることが多くなっていく、
「くっ、うあああああ!!」
コルベはその体に秘めた悩みや悲しみを剣に乗せているかのように必死に剣を振るう、
そういった意図もあることはワタルも数度の打ち合いで理解していた。
そして、このままただ受け止めているだけではいけないことも、
「そろそろこちらからも行くぞ」
ワタルはスピードこそ落としてはいるが威力を乗せた剣撃を打つ。
「ぐぅぅ!」
その一撃を受け吹き飛ばされるコルベ、
「どうした、そんなもんか!?」
いつの間にかケイとライテもその戦いを見つめていた。
「このぉぉぉぉぉーーー!!!
コルベは型も何もない滅茶苦茶な振り回しになってしまっている、
それでもいまだに力強い剣撃を放てているのは獣人としての能力の高さを伺える。
「行くぞ、舌噛むなよ」
ワタルはほんの少し力を入れて連続して打ち込む、
「ぐっ! このっ! くそ、くそーーー!!!」
数発で完全に体勢を崩されたがムチャクチャに剣を振り回し距離を開ける、
「ちっくしょーーーーーー!!!!」
コルベは飛び上がり全体重をかけて剣を振り下ろしてくる、
ワタルは真正面からそれを受ける。
「死ぬなよ、龍牙!」
ワタルは基本的な技だが龍気を纏う攻撃で弾き返す、
コルベの一撃ごと吹き飛ばす、コルベの剣は根本から砕かれる、
コルベ自身も吹き飛んで気を失ってしまった。
「コルベ!」「コルベ兄!」
二人の獣人が駆け寄る、ふらつきながらもコルベは立ち上がる。
「負けましたね・・・・・・」
コルベはそうつぶやくとゆっくりとだがしっかりと歩きワタルの前で膝まづく。
「里長として、そしてこの里を代表してワタル様に忠誠を誓う事をここに誓約いたします」
「・・・・・・わかった、これからはお前の里の者と一緒に俺の力になってくれ」
これが里長を継ぐ者としての一つのケジメであった。
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