3人の勇者と俺の物語
81章 隠れ里の悲劇
結界の外に出て先ほど助けた獣人を確認する。
村を囲っていた結界は村の施設を処分した時に一緒に破壊してしまったようで、
段々と効力が落ちていて、このまま行けば明日にはなくなっているとカレンが分析してくれた。
守護につけていた精霊はきちんと獣人達の怪我も治療してくれたようで、
ワタルの魔法によってスヤスヤと眠っている。
そのまま3人をキャンプカーのところまで運んでいく。
眼を覚ましたら村の顛末を話さないといけない、
ワタル達の足取りは重かった。
カイとバッツが車の整備を終わらせてくれていた。
森のなかでの出来事をかいつまんで説明した。
「そのままだったらこの3人も命を落としていたし、ワタルさんが責任を感じる必要はないと思います」
「カイちゃん、ワタルきゅんはそれもわかってなお落ち込んでるのよ、わかるでしょ?」
「・・・・・・はい」
そう、ワタルも3人を『助けた』ということはわかっている。
それでもどうやら一番小さい子の父親を手に掛けた、そして同じ村の人々を滅ぼした。
村も更地にしてしまった。他に選択肢は無かったとは思っている。
【黒】に取り憑かれた生物から【黒】を剥がすと灰になって消えてしまう。
たぶん腕に取り憑かれた瞬間に腕を切り落とすなら平気なんだろう、
でも【黒】の触手が身体に張り巡らされてしまうともう分離することは出来ない。
正確には分離する方法はまだわかっていない。
女神は以前言っていた
【セイちゃんが万が一バルビタールに乗っ取られた時のために分離する方法は探しているけど、たぶん難しい。だから最終手段として・・・・・・】
と、分離は難しいって話していた。
ワタルは意を決して獣人達にかけていた眠りの魔法を解く。
3人は目をこすりながら目覚めていく、キョロキョロと周囲をうかがっている。
「ここは私達のキャンプです。ここは安全なので安心してください」
カレンが獣人に優しく声をかける。
「・・・・・・!? お父さん!? お父さんはどこ!?」
一番小さな獣人が気がついたように叫んだ。
「・・・・・・落ち着いて聞いて欲しい、君のお父さんはあの黒い奴らに殺されてしまって、
そして操られてしまっていた。このままでは被害がどんどん広がってしまうから、
俺達で、それを、止めるための行動をした。
君のお父さんも天に送った。他の村の方々も・・・・・・」
ワタルは絞りだすようにそう告げた、少しぼかした表現にするかも考えたが、
それは不誠実に当たらないかという思いが天に送るという言葉になった。
「うそ・・・・・・嘘よ・・・・・・お父さんはあの村一番の魔法使いで、最強だった・・・・・・」
「ライテ・・・・・・それでもあの黒い怪物に敵わなかったのは、覚えているだろ・・・・・・」
「嘘よ! ケイ兄さん! 私達を逃がしたあとあいつらを倒したわ!!
お父さんが、お父さんが負ける、負けるはず・・・・・・」
その後はワーーーッと泣き出してしまった。
彼女をライテと読んでいた少し大人な獣人が彼女の背中を擦っていた。
もう一人の一番大きな獣人が口を開いた。
「どうやら命を救ってもらったようですね。ありがとうございます。
私の傷も助かるようなものではなかった、まるで夢だったかのような気分です。
でも、夢ではないのですね?」
まっすぐとワタルを見つめる瞳にはある種の決意と悲しみが溢れているように見えた。
「事実です」
短くそう告げるしか出来なかった。
「申し訳ないけど、村に何が起きたのか教えてもらえないかしら?」
バッツが助け舟を出してくれる。ワタルの心情を組んで代わりに聞いてくれているのだ。
「はい、私の名前はコルベ、里長の息子です。私達の里は狐族の里でした。
里自体を幻術結界を利用した秘術で囲んでいて、
森の山菜や木の実なんかを得ながら穏やかに過ごしていました。
それが突然結界に強力な力が干渉してきて、そして突破してきたのが黒い熊のようなバケモノでした。
皆必死に抵抗しましたが、奴らの攻撃は苛烈を極め、さらにこちらの魔術幻術も全く通用しない、
一人、また一人と倒されていきました。
里で一番若い兄妹と一緒に里の結界を脱出するように言いつけられ、
逃げようとしたのですが・・・・・・」
「そこに俺達が駆けつけたと・・・・・・」
「はい、里長は禁忌の秘術で内部の時間と外の時間をずらして、
長い時間里の惨劇が外から見つからなくても助かる可能性を上げてくれていました。
父の命と引き換えに・・・・・・」
コルベの眼から堪えきれず涙が流れだす。
「もし、もし君たちが良かったら僕達の拠点へこないか?
女神の盾という商会がやっている。衣食住は保証されている。
医療や教育もしっかりしている、基本的には孤児と元奴隷が多く、獣人も子供も多い。
君たちさえ良ければだけど」
「すぐにはお応えできないですが、私たちに行くところがないのも事実・・・・・・」
「コルベ兄さん、お世話になろうよ。僕達だけではこの先生きていけない。
ライテもまだ6歳だ、この方たちに頼ろう」
「そうだね、今の私たちに他に選択肢はないね」
「もちろん、自力で生活できるなら出て行っても構わない、何らかの技術や学を修めてから出ても構わない」
「そこまで言われたら断る選択肢はありません、我々はあなた達のお世話に「私は嫌!!」
ライテと呼ばれていた獣人の子がプンプンという擬音が似合いそうな感じで拒否してきた。
「なんでケイ兄もコルベ兄もこいつらのいうこと信じるの!? ほんとは奴隷商人であたしたちのこと攫うために嘘付いてるかもしれないじゃない! あたしは里に戻る!!」
「ライテ!! 命の恩人になんて言葉遣いを! すみません・・・・・・
ライテの父は村一番の魔術師でしかも剣の腕も大変強かったので・・・・・・」
「ワタルきゅん、取り敢えず明日皆で里へ行きましょう。実際に見ないとわからないと思うわ」
「そう・・・・・・だね・・・・・・」
「取り敢えず少し日も傾いてきました、食事にしてゆっくり休んで明日森へ行きましょう」
いつの間にか食事を作ってくれていたカレンが、ホカホカと湯気を立てている美味しそうなシチューみたいな物を持ってきてくれた。
「嫌よ! それに眠り薬が入っているんだわ! 私は食べなグーーーーーーーーーーーーーーーー、
た、食べないんだから!!」
豪快なお腹の音をさせながら食事を拒否するライテちゃん。
他の二人が大層美味しそうに食べているのと、その後に出てきたパンの香ばしい香りに負けて結局一番たくさん食べていた。ひとくち食べるとしっぽをパンパンにしながらすごい勢いで食べていた。
シャワーや柔らかい布団に一番はしゃいでいたのもライテちゃんだった。
口では文句を言っていたけどフッサフサのしっぽがちぎれんばかりにブンブン振られていて、
皆ニコニコしながら眺めていた。
「な、なによ!? あんた達なんてお父様にかかれば蹴散らされておしまいよ!」
うーん、ツンデレだなぁ。荒んだワタルの心も少し暖かくなった。
【黒】が人型の生物にも取り付いてしまうという事実は一行にとって重くのしかかることになる。
村を囲っていた結界は村の施設を処分した時に一緒に破壊してしまったようで、
段々と効力が落ちていて、このまま行けば明日にはなくなっているとカレンが分析してくれた。
守護につけていた精霊はきちんと獣人達の怪我も治療してくれたようで、
ワタルの魔法によってスヤスヤと眠っている。
そのまま3人をキャンプカーのところまで運んでいく。
眼を覚ましたら村の顛末を話さないといけない、
ワタル達の足取りは重かった。
カイとバッツが車の整備を終わらせてくれていた。
森のなかでの出来事をかいつまんで説明した。
「そのままだったらこの3人も命を落としていたし、ワタルさんが責任を感じる必要はないと思います」
「カイちゃん、ワタルきゅんはそれもわかってなお落ち込んでるのよ、わかるでしょ?」
「・・・・・・はい」
そう、ワタルも3人を『助けた』ということはわかっている。
それでもどうやら一番小さい子の父親を手に掛けた、そして同じ村の人々を滅ぼした。
村も更地にしてしまった。他に選択肢は無かったとは思っている。
【黒】に取り憑かれた生物から【黒】を剥がすと灰になって消えてしまう。
たぶん腕に取り憑かれた瞬間に腕を切り落とすなら平気なんだろう、
でも【黒】の触手が身体に張り巡らされてしまうともう分離することは出来ない。
正確には分離する方法はまだわかっていない。
女神は以前言っていた
【セイちゃんが万が一バルビタールに乗っ取られた時のために分離する方法は探しているけど、たぶん難しい。だから最終手段として・・・・・・】
と、分離は難しいって話していた。
ワタルは意を決して獣人達にかけていた眠りの魔法を解く。
3人は目をこすりながら目覚めていく、キョロキョロと周囲をうかがっている。
「ここは私達のキャンプです。ここは安全なので安心してください」
カレンが獣人に優しく声をかける。
「・・・・・・!? お父さん!? お父さんはどこ!?」
一番小さな獣人が気がついたように叫んだ。
「・・・・・・落ち着いて聞いて欲しい、君のお父さんはあの黒い奴らに殺されてしまって、
そして操られてしまっていた。このままでは被害がどんどん広がってしまうから、
俺達で、それを、止めるための行動をした。
君のお父さんも天に送った。他の村の方々も・・・・・・」
ワタルは絞りだすようにそう告げた、少しぼかした表現にするかも考えたが、
それは不誠実に当たらないかという思いが天に送るという言葉になった。
「うそ・・・・・・嘘よ・・・・・・お父さんはあの村一番の魔法使いで、最強だった・・・・・・」
「ライテ・・・・・・それでもあの黒い怪物に敵わなかったのは、覚えているだろ・・・・・・」
「嘘よ! ケイ兄さん! 私達を逃がしたあとあいつらを倒したわ!!
お父さんが、お父さんが負ける、負けるはず・・・・・・」
その後はワーーーッと泣き出してしまった。
彼女をライテと読んでいた少し大人な獣人が彼女の背中を擦っていた。
もう一人の一番大きな獣人が口を開いた。
「どうやら命を救ってもらったようですね。ありがとうございます。
私の傷も助かるようなものではなかった、まるで夢だったかのような気分です。
でも、夢ではないのですね?」
まっすぐとワタルを見つめる瞳にはある種の決意と悲しみが溢れているように見えた。
「事実です」
短くそう告げるしか出来なかった。
「申し訳ないけど、村に何が起きたのか教えてもらえないかしら?」
バッツが助け舟を出してくれる。ワタルの心情を組んで代わりに聞いてくれているのだ。
「はい、私の名前はコルベ、里長の息子です。私達の里は狐族の里でした。
里自体を幻術結界を利用した秘術で囲んでいて、
森の山菜や木の実なんかを得ながら穏やかに過ごしていました。
それが突然結界に強力な力が干渉してきて、そして突破してきたのが黒い熊のようなバケモノでした。
皆必死に抵抗しましたが、奴らの攻撃は苛烈を極め、さらにこちらの魔術幻術も全く通用しない、
一人、また一人と倒されていきました。
里で一番若い兄妹と一緒に里の結界を脱出するように言いつけられ、
逃げようとしたのですが・・・・・・」
「そこに俺達が駆けつけたと・・・・・・」
「はい、里長は禁忌の秘術で内部の時間と外の時間をずらして、
長い時間里の惨劇が外から見つからなくても助かる可能性を上げてくれていました。
父の命と引き換えに・・・・・・」
コルベの眼から堪えきれず涙が流れだす。
「もし、もし君たちが良かったら僕達の拠点へこないか?
女神の盾という商会がやっている。衣食住は保証されている。
医療や教育もしっかりしている、基本的には孤児と元奴隷が多く、獣人も子供も多い。
君たちさえ良ければだけど」
「すぐにはお応えできないですが、私たちに行くところがないのも事実・・・・・・」
「コルベ兄さん、お世話になろうよ。僕達だけではこの先生きていけない。
ライテもまだ6歳だ、この方たちに頼ろう」
「そうだね、今の私たちに他に選択肢はないね」
「もちろん、自力で生活できるなら出て行っても構わない、何らかの技術や学を修めてから出ても構わない」
「そこまで言われたら断る選択肢はありません、我々はあなた達のお世話に「私は嫌!!」
ライテと呼ばれていた獣人の子がプンプンという擬音が似合いそうな感じで拒否してきた。
「なんでケイ兄もコルベ兄もこいつらのいうこと信じるの!? ほんとは奴隷商人であたしたちのこと攫うために嘘付いてるかもしれないじゃない! あたしは里に戻る!!」
「ライテ!! 命の恩人になんて言葉遣いを! すみません・・・・・・
ライテの父は村一番の魔術師でしかも剣の腕も大変強かったので・・・・・・」
「ワタルきゅん、取り敢えず明日皆で里へ行きましょう。実際に見ないとわからないと思うわ」
「そう・・・・・・だね・・・・・・」
「取り敢えず少し日も傾いてきました、食事にしてゆっくり休んで明日森へ行きましょう」
いつの間にか食事を作ってくれていたカレンが、ホカホカと湯気を立てている美味しそうなシチューみたいな物を持ってきてくれた。
「嫌よ! それに眠り薬が入っているんだわ! 私は食べなグーーーーーーーーーーーーーーーー、
た、食べないんだから!!」
豪快なお腹の音をさせながら食事を拒否するライテちゃん。
他の二人が大層美味しそうに食べているのと、その後に出てきたパンの香ばしい香りに負けて結局一番たくさん食べていた。ひとくち食べるとしっぽをパンパンにしながらすごい勢いで食べていた。
シャワーや柔らかい布団に一番はしゃいでいたのもライテちゃんだった。
口では文句を言っていたけどフッサフサのしっぽがちぎれんばかりにブンブン振られていて、
皆ニコニコしながら眺めていた。
「な、なによ!? あんた達なんてお父様にかかれば蹴散らされておしまいよ!」
うーん、ツンデレだなぁ。荒んだワタルの心も少し暖かくなった。
【黒】が人型の生物にも取り付いてしまうという事実は一行にとって重くのしかかることになる。
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