3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

77章 帝国の軍隊

 女神の盾のメンバーの圧倒的実力をまざまざと見せられた帝国軍将校は、
 自分たちが急速に強くなっていたことに調子に乗り天狗になっていたことを思い知らされた。
 自分たちの絶対的強者である隊長が一閃のもとに敗れたことの衝撃は大きかった。
 しかし、強者には敬意をもって当たるべしという普段からの教育は、
 彼らの向上心に今再び火を付ける事になった。

 訓練が終えた一同は皆で酒会を催す運びとなった。
 戦ったら飯を食い、酒を飲む。
 わかりやすく、そして気持ちの良い付き合いだ。
 ランタスの上司としての意識の持ちようは部下にもきちんと伝わっていた。

 「いやー、私も少しは自分の技に自信を持っていたのですが、ああも簡単にいなされては紅顔の至。
 それにしてもワタル殿最後のは何ですかな? 全く動いてないように見えていたのですが、
 気がついたらその姿が消えていました。あれはどういう理屈なんでしょう?」

 ランタスは顔こそにこやかに話しているが、眼光は鋭くワタルの謎を解き明かそうという意志が現れている。

 「止まっている状態から身体の動き出しを静かに行う。言葉で言ってしまうとそれだけなんです」

 目の前で食事用のナイフを止めた状態から肉へ刺す。
 たしかにそれだけなのだが、なぜか気が付くとすでに肉に刺さっている。
 いつ刺したのか、その部分が上手く認識ができずに周囲の兵士たちも目を見開いて注目している。

 「無拍子。ってやつなのよね」

 バッツが助け舟を出してくる。

 「ワタルもバッティも同じ師匠からその技を譲り受けたの、
 停まっている時も、動いている時も全ての所作を静かに行う。
 動き出しの前の溜めも作らない、そして最短最速で動く。
 動くんだけど、静かに。これは一長一短で出来ることじゃないの残念ながらね」

 「なるほど、攻撃の気配も予兆も全て隠すわけですな。
 たしかにそれはやられる側からしたら厄介極まりないですね」

 ランタスは多少なりとも理屈を理解できているのでウンウンといろいろと試している。

 「でもランタスさんのあの攻撃もかなりのものですよ、突然大量の剣で襲われるような感覚、
 あの殺気の使い方は勉強になりました」

 「そうだ隊長さん、ああいうフェイントが効かない相手もいるから実の攻撃を増やす努力もした方がいいわよー、たぶんバッティとカレンに殺気のフェイントは効かないのよぉー」

 「な、なんと。こりゃまだまだ鍛錬が足りませんな。はっっはっっはー!」

 地味にショックをうけるランタスであった。



 バトル脳達が熱い話をワイワイしている別のところでは、別の熱い話をしている一団もあった。

 「えー、4人共ワタルさんのお嫁さんになるのー!?」

 「キャー! すごーい!」

 軍隊には女性隊員もいるし、女性文官もいる。リク、カイ、クウ、カレンの女性陣はその子たちと一緒にガールズトークに花を咲かせていた。

 「いいなー、私も彼氏ほしーなー」

 「えー、あなた先週言ってたあの貴族様は?」

 「なんだかねー、もやしは無理なのよね、だからといってうちのとこみたいな筋肉ダルマもごめんだけどー!」

 「ワタル君ってあんなに強い風に見えないよねー、なんかかわいい感じなのに」

 「ワタ兄を可愛いと思っていると滅茶苦茶にされる」

 「キャーーーキャーーーー!!」

 えーどんなことされるのー? キャーキャー
 女神の盾の女性陣もこれだけ多くのガールズトークは久々なので夜遅くまで楽しんだ。
 結局宿舎まで行って朝まで盛り上がっていた。




 翌朝早朝からワタルは訓練場で身体を動かしていた。
 ランタスが使った無双三段、効かない相手もいるかもしれないけどあの殺気のフェイントは非常に強力だ。
 剣を低く構えて、突く! 身体は脱力から弾けるように突く、
 始めは一突き、次に二段突、さらに三段突き! ガガガ、木人形にほぼ同時に3箇所凹みが出来る。

 「コレじゃァダメだな、たぶんランタスさんの突きは人形を貫く、それにフェイントも入れられていない・・・・・・」

 「いやいや、3段突が形だけでも真似されただけで私としてはヒジョーに落ち込んでますよ」

 にこやかにランタスが訓練場へ入ってくる。

 「これでも十数年練り続けて手に入れた技なんですけど、ね!」

 ズガガ!!

 木人形に3つの穴ができる。やはり威力が段違いだ。

 「早く打つことを意識しすぎています、当たる瞬間に最大限の力を入れて、
 それ以外は脱力しておくような意識です」

 ワタルは助言を取り入れてもう一度構える。
 脱力から突き、インパクトの瞬間だけ力を入れるイメージ、静かに引いて突く、突く。

 スココココ

 間の抜けた音が訓練場に響く。

 「あー、ランタスさんみたいにいかないなぁ・・・・・・」

 「い、いやいやいや、ワタル殿!! 今何したかわかってないんですか!?」

 「へ?」

 「へ? じゃないですよ!! 見て下さいよこの傷、木人形に何の抵抗もなく【木剣】を突き刺す、
 しかも4箇所同時に!! はーーーーー! とんだバケモノです!」

 酷い言われようだ。

 「鍛錬を続けていれば、いつかそういう世界の扉を叩けるのですかね・・・・・・
 流石に少し落ち込みました・・・・・・」

 「それなら塔を一人で登ってみたらー?」

 いつの間にかバッツが訓練場に姿を表していた。

 「隊長さんの実力ならきっと厳しいけれども攻略できると思うわよー、
 そして見えてくるものもあると思うわよ」

 「そうか・・・・・・私自身すでにレベル上げることに意義を感じていなかったが、
 バッツ殿がそういうのなら意味があるのだろう。ありがとう、助言を感謝する」

 ランタスは何かを決意したようにすっきりとした顔をしていた。

 ワタル達が帝都へ向けて旅立つ日、ランタスは軍への休暇届を出し4大陸全ての塔を単身攻略に旅立つ。


 「リクちゃーんまた遊びに来てねー」

 「カイちゃーんまた魔法教えてねー」

 「「「いっせーのっせ!! クウちゃーーーーーーん!!」」」

 「カレン様、またおねー様のお話聞かせてくださいねー!」

 「バッツ様ーまたかわいいお洋服作ってくださいねー!」

 みんな大人気だった。

 「ワタルーしねーうらやましいぞしねー!!」
 「みんなを悲しませたらゆるさねーぞー!!」
 「ワタルの料理だけはまた食ってやるからなー!!」

 ワタルも大人気だ。良かったな。
 ウェスティア大陸帝都ウェスティアへ女神の盾パーティは走りだした。

 

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