3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

70章 西へ

 イステポネの管理はゲーツに一任する。すでに統括的なポジションだ。
 それでもゲーツは他の職員の奴隷という立場を崩すことはない。奴隷の鏡である。
 旅の準備も完璧にしてくれた。
 物資はアイテムボックスにきちんと収納済みだ。

 「さて、そしたら新大陸にしゅっぱーつ!」

 「おーー!」

 「「「ご武運をワタル様」」」

 家族に見送られ車で出発するワタル一行。
 聖都イステポネから西の村ケーレスへは普通の馬車で2週間くらいかかる、
 イステポネ大陸は東西に長いためだ、
 ワタル達の持つキャンピングカーは時速80キロくらいなら快適に運用できる。
 馬車はおよそ10キロくらいしかでないので計算上では一日で到着が可能だ。
 もちろん安全上の配慮から40キロくらいで走行するつもりなのでもう少しかける。
 なぜそんなに抑えるかというと、万が一途中で他の馬車と出会った場合、
 馬車を引いている馬が大暴れして、相手に損害を与える可能性がある。
 通過時はゆっくりと、事前に魔法での周囲の警戒も行いながらの移動になるため、
 それくらいの速度で移動するのがいろいろと都合がいいのである。

 携帯型連絡装置ケータイのおかげで領地管理、商会管理は飛躍的に楽になっていた。
 ゲーツを頭とした商会の成長戦略や、教育、医療などの充実も急速に発展している。
 何名かの奴隷たちは奴隷同士で家庭を築いたりもしている。
 ワタルは何よりもそのことに喜んでいた。
 ワタル自身は結婚するのはセイを助けてからと決めていた。
 みんなにもそのことは伝えてある。

 「俺、セイを助けたら皆と結婚するんだ」

 盛大なこれでもかと直球のフラグをぶち立てている。
 この世界には女性に完全に無害で100%確実な避妊魔法もあるので、
 そこら辺の問題は起きないので、安心してください。

 ワタルは運転をリクに任せて休憩していた。
 一人で静かに物思いにふけるのも久々であった。
 思い出すのはこの間の出来事であった。

 リク、カイ、クウも口には出さないけどセイのことは心配していると思う。
 時々夜に寂しそうに祈っている。
 この間、見かけてしまった時はすぐに取り繕っていたけど、
 目は赤かった。彼女たちが戦闘に怖気づく事なく勇敢に立ち向かっているのも、
 セイを助けたいという決心の現れだろう。
 そういえば、バッツはなんで付き合ってくれるんだろう?
 バッツとそういう話をしっかりしたことがなかったな。

 その機会はワタルが思うよりも早く訪れた。
 順調に旅路は続いていて3日目の夜、予定では明日辺りに到着予定だ。
 運転に疲れたクウが寝て、他の二人も一緒に寝てしまった。
 外に火をおこしてその横でカレン、バッツ、ワタルで軽くお酒を飲んでいた。

 「なぁ、バッツ? なんで俺に付き合ってくれるんだ?」

 「あら、ワタルきゅんそれは乙女の秘密よ~」

 「ぬぬ、カレンは何かしらない?」

 「本人が秘密って言っている以上私から話すわけにはいかないのです。
 申し訳ありませんワタル様」

 カレンは深々と頭を下げる。

 「もー、カレンったら、じゃぁちょっとだけね~。
 まー、俺もこの世界が好きだしな」

 いつもの調子ではなく真面目な顔になり渋い声で話し始めるバッツ。ずっとそうなら、いや言うまい。

 「それに、一度死んだ身を助けてもらった、俺の呪いまで解いてくれた。
 あとは、そうだな。バイセツが気に入った。そこら辺かな。
 ま、もちろんワタルきゅんと3人娘が可愛いから~ってのもあるわよ!」

 ばっちこーーんって音がしそうなウインクをされた。
 まじめに話していると渋い冒険者なのになーとワタルは思う。
 でも、バッツの気持ちが知れてワタルは嬉しかった。
 その後いつもより飲む酒の量が、少し増えたバッツであった。



 「ワタ兄! 前方で戦闘! 人同士だと思う!!」

 「人同士!? すぐ行くぞ!」

 翌日、順調に進んでいた一行だったがトラブルに巻き込まれたようだ。

 「見えた、馬車を護るほうが4人、それに盗賊と思う13人が襲ってる!」

 「カレン、威嚇しろ!」

 「はっ!」

 車のスピードを少し落としターフに上がっているカレンは弓を放つ。
 馬車に襲いかかっていた盗賊の足元に13人同時に矢が突き刺さる。
 押され気味だった4人もこれで一息つけるだろう、

 「拘束するぞ!」

 そのまま猛スピードで接近、降り立ったカレンや3人娘によって、
 あっという間に盗賊たちは拘束された。
 瞬く間に盗賊たちの間を飛び回り武器を取り上げて縛り上げる。
 盗賊からしたら悪夢だったことだろう。
 縛り上げてたのがバッツだったから余計に。

 「すまない、ほんとうに助かった!!」

 「し、死ぬかと思った・・・・・・」

 よほど切羽詰まっていたんだろう、4人はお礼をいうとその場にへたり込んでしまった。

 「ワタルさん馬車の中に怪我人が居たので治しておきました」

 「おー、ありがとー」

 「な、治した!?」

 「石化と腐食を治せる高度な医療魔法が使えるんですか!?」

 「あ、はい。私とワタルさんとカレンさんは問題なく治せます」

 「「「「えええええええええええーーーーー!!!!」」」」

 「あれ? そんなにおかしいことなの?」

 「お、おかしいですよ!! 石化解除に腐食解除は高位の状態異常回復魔法が、
 それこそ司祭クラスじゃないと使えませんよ!!」

 「いや、どうやら彼らは本当に使えるようだ」

 馬車から一人の男が降りてくる。

 「「「「リーダー!!」」」」

 「カイさんからだいたいのことは聞いた。盗賊から仲間の命を救ってくれて、
 さらには諦めていた俺の右手、右足の石化まで解いてくれて、感謝の言葉もない」

 リーダーと呼ばれた男は深々と頭を下げる。
 体躯はしっかりしており身長も180~190くらい。鍛えられているが引き締まった身体をしている。

 「リーダー右手は・・・・・・?」

 恐る恐るすこしデ、ふくよかな男が聞く。

 「ああ、この通りだ、砕けた部分も元通り、動かす時に何の違和感もない、
 たぶん彼女たちは部位欠損まで癒せる・・・・・・」

 「「「「えええええええええーーーーーー!!!!」」」」


 回復魔法で興奮していた6人をより大きな衝撃が襲う、

 「な、なんじゃこりゃ!!??」

 「ちょ、ちょっとワタルさんこれは何ですか!?」

 「えーっと、キャンピングカー的な?」

 「キャンピングカーテキナ? 何かのマジックアイテムなんですか!?」

 「馬車を参考に作って、あとは動力とかを魔法でちょちょいっと・・・・・・」

 物珍しそうにキャンピングカーを見学している一行がさらに驚くものを見つける。

 「ま、まさかと思いますが、これ台所ですか?」

 「こっちにはシャワーがあるぞ!!」

 「え、これ、この場で使えるんですか?」

 「ええ、まぁちょうどいいから夜ご飯でもごちそうしますよ?」

 その後彼らは今までの旅の概念を根本からへし折られ、めくりボディープレスから小キックキャンセルスクリュードライバーぐらいの衝撃を受けることになったとさ。

  
 

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