3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

68章 報酬

 ダンジョン攻略の通達は宗教国家らしく大聖堂で粛々と行われた。
 ワタルは前回のようなパレードがなくて胸をなでおろしていた。
 見世物みたいになって苦手なのだ。

 最奥の宝箱から得た魔道具の中で面白いものがあった。
 通信機だ。ギルドに設置されるような大型ではない。
 携帯電話ぐらいのサイズだ。
 しかも10セットある。迷わずそれを選んだ。
 各大陸の拠点に置いてワタルたちが持つ。
 さらに、女神の寝屋のメンバーに持ってもらえれば情報の共有が簡単にできるようになる。
 それ以外の大量の武具や魔道具、宝石などはすべてオークションだ。

 オークションの準備やら、オークション自体が終わるまではしばらくのんびり出来る。
 そんな日にワタルのもとに来訪者が現れた。
 奴隷商人パルゾイだ。

 「素晴らしいですよワタル様!! どの奴隷の目を見ても皆ワタル様を主人と、いや、
 神と崇めている! 自ら喜んで奉仕している!! やはり私の目に狂いは無かった!!」

 相変わらずガンギマリだなーこの人という感じで、生暖かい目で見ているワタル。

 「私も自分のつてをすべて使ってワタル様にお渡しする奴隷をかき集めております!」

 実際パルゾイは非常に頑張っていた。
 その原動力は、人が人に心酔する様を見ることで精神的興奮と快楽を得る変態なのだが。
 それでも奴隷たちからしたかなりの厚遇で迎えてくれる女神の盾商会は、
 まさに救いの女神であった。各都市の拠点に続々と配備されていく奴隷たちは、
 ワタルを神として教育され立派神の尖兵となって働いていた。
 ワタル自身は把握していないがすでに100名を越える奴隷や孤児が女神の盾のもとに集まっていた。

 現在の拠点はベルテントス、サウソレス、イステポネの3箇所に作られている。
 開拓地に入植した形のイステポネが最大の領地となっていた。
 それぞれ特産品バイアングを中心に質の高い食料生産を商品の主軸においている。
 室の高い農作物は貴族を中心に高い人気を博していた。
 同時にジャガイモや小麦、米なども大量に生産しており、
 国全体の食料供給にも協力している。

 若い奴隷や孤児には積極的に教育を施している。
 また一般市民層における教育のための学校の設立、
 病院の設立を目指して商会の職員は一生懸命働いている。
 他の商会にも冒険から得られる収益を予断なく利用して経済活動を活発にしていた。
 出来る限り敵を作らずに、皆が健康的で文化的な生活を営めるように努力している。

 この世界は王政や貴族制が取られているものの、あまり悪辣な人間は少ない。
 理由は簡単、圧倒的な支配者である女神が【実在】するからに他ならない。
 悪いことをすると女神に粛清される(物理)。
 この状況であまりに極端に悪事に走る人間は居ない。
 むしろ善行をつんで女神の御眼鏡にかなうように生きたほうが遥かに賢い。
 まぁ、人間なんてそんなものですよ。はい。


 「ワタルさん! そっちの土地まで囲いますね!」

 「了解! 住居作ってく!」

 今は建築技術のある二人でイステポネの領土を拡張中である。
 常識からかけ離れた速さで防壁や建物がにょきにょきと生えていく。
 道もこの世界では考えられないほど整備された道が伸びていく。
 他の人員は買い出しなどを担当している。
 すでにそこだけで小規模な街と言っていいほど拡張されていた。
 中央通り沿いには様々な商店が立ち並び、
 広々とした農地は周囲の魔獣の脅威から防壁によって完璧に守られている。
 住居も貴族のような設備が揃えられており、学校、病院、大衆浴場と整備されていた。
 一般住民からもこぞって入植を希望するものが大挙した。

 パルゾイが張り切って集めた奴隷と周囲の都市からも孤児を呼び寄せている。
 宗教国家らしく孤児は流石に少なかったが、奴隷はむしろ多いという闇もある。
 ワタル達は周囲の土地だけではなく山脈も自分たちの領土に組み込んだ、
 教皇から入植に関しての権利を頂いており、後ろ盾は完璧だ。
 山々から鉱脈を操作して坑道を作る。完全なチートで新たな収入源を得ていった。

 商会としての仕事も飛躍的に増加している、慢性的な人材不足にある中、
 一人の人間がワタルの元へ訪れた。

 「ワタル様、我が身をどうぞご利用くださいませ」

 ワタルの目の前で平身低頭で礼を尽くしている女性。
 ゲーツだ。
 犯罪奴隷扱いでワタルの元へやってきた。
 カレンを始め女性陣は難色を示したが、いざ働き出すと『有能』その一言に尽きた。

 すべての土地での商会の実務をすべて把握して、帳簿管理、人材管理、その全てを完璧にこなした。
 流石にエリート集団である聖騎士の副団長まで上り詰めた人間だ。
 いつしか商会の幹部連に名を連ねていた。
 その働きにワタルはせめて通常奴隷に戻るように打診したが、

 「ゴミクズのように支配されることこそ我が望み」

 と、聞いてもらえなかった。
 カレンといい友達になったのは意外だった。

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 「カレン様、なぜワタル様は私なぞに優しくしてくださるのでしょう?」

 「ゲーツ、貴方はワタル様に粗雑に乱暴にされたい。そう考えてるわね」

 「はい、そうです。汚いものを扱うように扱われたいです!」

 「だからよ」

 「え?」

 「貴方がそう望むから、あえてあのお方はそれをなさらないの」

 「あ、ああああああ・・・・・・」

 「わかったみたいね」

 「な、なんと、なんという慈悲深い扱い、浅はかでした、私の浅慮でございました」

 「でも、一度でいいから貴方がされたようにゴミのような扱いを受けたいものだわ・・・・・・」

 「はぁ・・・・・・(恍惚)」

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 二人が飲む周りには人が寄り付かなかったそうだ。


 オークションは無事に終わって、またもおかしな額の報酬がワタル達は手に入れるのだった。
 この報酬を元手に沢山の人を救う、ワタル達の真の報酬はそういったものなのかもしれない。


 

 

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