3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

63章 聖鳥 スザク

 道は広い。
 しかも両側にはご丁寧に鉄柱と鎖で落下防止処置がとられている。
 崖のすぐ下に鉄製のネットによる二重の落下防止処置までされている。
 配慮が行き届いており優しい。しかし、それでも高い事には変わりはない。
 ワタルは自分を高所恐怖症と思ったことはなかったが、
 雲よりも高い山の峰を歩いた経験もなかった……

 「敵が出たら戦える自信がない」

 「えー、ワタ兄こんなに綺麗なのに」

 たしかに景色は素晴らしい、絶景だ。
 ただ見えすぎるから怖いのだ。

 山頂は正面に火口、といってもこの山が火山かどうかはわからないが、
 周囲も高い岩山に囲まれたコロシアムのような作りになっていた。
 後ろの今来た道以外岩によって囲まれていてあの壮観な風景が見えないことに、
  ワタルは心底ほっとしたのであった。

 「なにも……ない?」

 「強い力を感じます。ワタルさんここから龍脈の力って得ることは出来るんですか?」

 「やってみる」

 火口からは確かに龍脈の力を感じる。
 この場にも強い力が満ちている気配がある。
 ワタルは女神の盾でその力を取り込むように念じる。

 「なんか、流れ込んでくる」

 「私もワタル様からの力を感じます」

 「繋がりがないとだめかー、ボクはそこまで感じないや」

 「でも、なんか思っていたよりも弱いな、砂漠の大迷宮で感じたような力に比べると」

 【それは漏れでた残渣に過ぎないからですよ】

 声が頭に届く。
 同時に火口から強力な気配が上がってくるのがわかる。

 「女神の言ってたぴーちゃんですか?」

 【……ぴーちゃんはやめてください。私はスザク、一応聖鳥 スザクと呼ばれるものです】

 火口から舞い降りたのは美しい鳳凰だった。
 真っ白な羽毛、赤く見事な尾羽根、金色色に輝く飾り羽、聖鳥の名に恥じることのない神々しい姿。

 「わー、きれー」

 「ほんと、素敵だわぁ……」

 乙女たち(?)もすっかり魅了されている。

 「スザクさんがこのダンジョンの主ですね」

 【ええ、ゲンブと同じ聖獣の一人です。そしてダンジョンと龍脈を護るものです】

 「龍脈は火口の下ですか? 俺は龍脈の力を魔神に渡さないために、
 この女神の盾に宿すために来ました」

 【存じております、ただ、まだその力を宿すにはあなた方の力は足りないようですね】

 「えっと、そうしたらどうすれば?」

 【修行してもらいます】

 「嫌だ」「絶対嫌」「いやだいやだいやだ」「キルキルキルキルキルキル」「あらー、またあれ~?」
 「……」

 何名かのトラウマを刺激した。

 【ゲンブは一体どんなことをしたのでしょうか?】

 「……思い出したくない」

 【はぁ……、あなた方にはすでに龍脈の力を宿す素因はあります。後は伸ばすだけなので、
 あなた方が考えているような方法ではありませんよ?】

 「ぐ、具体的に何をするかを提示してほしい」

 【自分自身を見つめなおし、そして、自らの器を広げる。
 簡単にいえば龍脈の中で座禅ですね】

 「わかった、飲まず食わず何年も座禅をさせるんだな! ワタル! 騙されちゃいけない!」

 【時間としては1時間もかからないと思いますよ? 
 そもそも最初のチャンネルを開けるのが大変なんですが、広げるのはそこまで大変ではないです】

 「1時間座禅して瞑想すればOK? 嘘はないね?」

 【ええ、上手く行けば私の力も皆さんのものです。その前に、
 貴方、貴方はまず私の力を受け入れていただきます】

 「ん? ボク?」

 スザクはリクの前に立ちその美しい羽を大きく広げる。

 【私が司るのは湧き出す力、貴方なら使いこなせます】

 そのまま包み込むようにリクを抱きしめる。

 「暖かい……何かが流れ込んできて、体の内側からも暖かくなる……」

 「ああ……俺もリクとの繋がりを感じる……」

 すざくの身体が光り出し、どんどん光が強くなり。周囲を照らす。
 それから少しづつ光は弱くなり、スザクは羽を元に戻す。

 【これで大丈夫。貴方の中に私の司る力の一部を与えました。
 さぁ、皆さんも行きましょう!】

 再び羽を広げ飛び立つとワタル達も風に包まれて浮き上がる。
 そのまま火口の上に運ばれていく。

 「え? まさか……」

 ワタルの予感は的中。突然落ちた。
 スザクも真下へ向かって翔んだ。

 標高1万m位から、地底5000mへのダイブだった。
  わずか一分足らずで15000メートルを自由落下したのだ。
   一分ほどとはいえ超高所からの超高速落下、
   普通はゆったりと降りるもんだろ! と恨み言を言いたくなりたくなる速度での落下である、
   数名は意識を失い、まぁ、そのパンツがしっとりしてしまったりもした。
   なんとか意識を失わずに最後までいられたのはバッツのみであった。

 なんとか失神や失禁は免れたバッツであったが、あまりの衝撃にしばし震えが止まらなかった。

 「さ、さ、さす、あす、流石に、こ、腰が抜けたわ……」

 バッツをしてそう言わしめた落下からワタル達の回復には15分ほど要する羽目になった。

 「神獣は二度と信じない」

 ワタルやカイは自分のズボンに浄化をかけながら恨み言を言っていた。

 「ボク、すぐに気絶しちゃったよ」

 「その方がいい、変に頑張ったから余計怖かった。穴どんどん狭くなるし、自分たちは加速するし」

 「地面スレスレで停まる瞬間がとどめだったわぁ、もう二度とごめんだわ」

 「飛竜で全速力出すより遥かに早かったです……」

 修行前からボロボロになった一行であった。



 【あそこの魔法陣の上で座禅を組んでください、
 あの魔法陣が龍脈を効率よく取り込む手助けをします】

 地底は広い空間であった。火山岩のようなゴツゴツとした岩肌に囲まれたドーム状の部屋。
 頭上にはさっきワタル達が落ちてきた山上へ続く穴がある。
 壁面や床は薄っすらと光っており。天井や壁面に篝火が用いられている。
 独特の薄暗い雰囲気を作り出していた。

 スザクが示した場には大きな魔方陣が描かれており、
 その6方に座布団のような座蒲が配置されていた。
 女神教ってキリスト教っぽい教会だったのに、座禅とか仏教的な要素もあるのか、
 と、ワタルは疑問に思っていた。精神集中するならば何でも良かっただけなんだけどね。
 魔法陣はぼんやりと明滅しており、不穏な気配を感じた。
 魔導の極みである知識でもその魔法陣がどういう効果があるのかはわからなかった。

 「ほんとに、それだけだよね?」

 【大丈夫です。安心してください】

 なんとも不安を抱えたまま一同は座を組んだ。
 姿勢を正し、足を組み、自然体。
 呼吸を整える。

 【それでは始めます、よい旅を】

 え……? っと思った時はすでに意識が飛んでいた。

  ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■

  イチノセ ワタル
 Lv80 【目覚めし勇者】
 HP 11987 (+39530)
 MP 7842 (+27780)
 Str 511 (+3460)
 Agi 527 (+3110)
 Vit 497 (+3220)
 Dex 707 (+3100)
 Int 824 (+3720)
 Luk 300 (+1010)

 【スキル】 女神と神獣の盾 勇者の力【覚醒】 深謀遠慮 神算鬼謀  明鏡止水 
 古今無双Lv10 神の料理人 神のマッサージ師 農畜産業の神 建築技工の真髄 
 酒神との会話New! 言語理解 麟子鳳雛New!(大器晩成上位化) 行動最適化Lv10 
 魔導の真髄Lv10 異次元魔法Lv10 護る力 農業魔法Lv10 生活魔法Lv10 龍気 
 生殺与奪 聖剣操作Lv9 罠 幸運Lv5 詠唱破棄

 【称号】 聖剣の聖女との絆 苦痛と快楽の申し子 ドラゴンスレイヤー 覚醒した勇者
 神々の加護 リクとの絆New! カイとの絆 カレンとの絆 バッツとの絆 魔の真髄を知りし者
 龍脈の加護 酒神バッカスに愛されし者

 麟子鳳雛:満ち溢れる可能性と成長の力

 リク
 Lv42 【武の頂を昇りし者】
 HP 17259
 MP 4285
 Str 2143
 Agi 1504
 Vit 1732
 Dex 1342
 Int 1020
 Luk 524

 【スキル】 聖斧の力 金剛Lv10 魔力操作Lv10 斧技Lv10
 不撓不屈Lv10 気功弾 未来予知Lv9 臥薪嘗胆 麟子鳳雛New!
 竜神闘気Lv10 幸運Lv5 龍気 一騎当千 鑑定 マジックボックス【極大】

 【称号】決意し者 闘気を纏いし者 神々の加護 真・勇者との絆New!
 ドラゴンスレイヤー 龍脈の加護


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