3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

62章 【黒】中ボス戦

 「な、なんだあれ……?」

 ワタルが驚愕するのも仕方がない、肉塊。そう表現するしかない異形がそこには居た。
 【黒】によって無理やり集められた死体の塊、腕や足が不規則に身体を支える、
 生物としての尊厳を奪われた姿がそこにはあった。

 「なーんか、ムカついちゃったなぁバッティ……」

 「奇遇だね、ボクもそう思ってた」

 全員の総意であった。
 敵対して戦い殺す、それは戦いであった以上当たり前の結果だ、
 しかしそこには相手を恨んで殺しているわけではない、
 力と力を、技と技を競い、そして勝利をする。敗者を貶めるようなことはしない。
 それをこの【黒】は汚したのだ。

 「救うぞ」

 ワタルの発言はある意味傲慢であったかもしれない、しかし死力を尽くした相手を、
 あの【黒】の手から開放してあげたい。それは紛うことなき本心であった。
 メンバー全員が一斉に行動を開始する。

 「アイシクルランストルネード」

 カイは大量の氷の槍を含む嵐を叩きつける、異形の黒は体中から矢を撃ち氷の矢を砕いていく、
 風がその身を切り裂くが傷が回復していく。

 「どこからでも打ち放題か、煩わしい」

 「回復魔法もあるみたいですね、ワタル様火力で押し切りますか?」

 「取り敢えずぶっ放して対応をよく見よう」

 今までの黒の防御力にさらに回復まで加わるとなると生半可な攻撃では通用しないだろう。
 そうワタルは分析している。

 「先ずは厄介な矢による攻撃をなんとかしよう、グラビティダウンバースト!」

 重力法則を強化してさらに下方への風魔法を合成する。
 ビキビキと足元の地面が悲鳴を上げる。

 「ロックレイン!」

 カイがワタルの魔法の意図を理解して岩石を降らせる、
 重力と風により岩石は恐ろしい破壊力を秘める。
 ドガァ、と何ヶ所かの組織を削り取る、

 「回復はさせません、アシッドストーム」

 カレンは穿った部位の回復を阻害するために酸の嵐で異形を包む、
 肉が溶け回復していく側から溶かしていく、
 異形の物が放つ矢は直ぐに地面に落ちる、
 その異形の本体も、重力に抵抗しているために動きもかなり制限されている、

 しかし、矢ではない何かが風と重力を突破して撃ち出される。
 剣だ、周囲の石などを取り込んで作られたそれらは重量がある分、
 風や重力に抵抗して撃ちだされてくる。
 片手剣、槍、短剣が次から次へと凄まじい速度で撃ち込まれる。

 ワタルは最前線に立ち盾によって叩き落とす。
 それでも盾の防御をかいくぐりメンバーにいくらかの傷を作る。
 周囲の壁や柱に辺り轟音を響き渡らせている。
 それでも魔法による攻撃の手は緩めない。緩めるわけにはいかない。

 「飛燕斬」

 クウの剣撃が空を舞うツバメのように敵を襲う。

 「百花繚乱・飛」

 バイセツ譲りの剣技、両手剣が音速を超えその衝撃波を敵に叩きつける。

 「疾きこと風の如く、侵掠すること火の如く」

 リクの戦斧が振るわれると巨大な炎の嵐が敵を焼く。

 迫り来る投擲武器を粉々にしながら攻撃は異形を崩し続ける、
 確かにかなりの欠損を作ってはいるが、いまだに決定打にかける。

 剣技である以上、敵の剣技でその威力は弱まる。
 体中から腕を生やし剣を生やす敵に普通の状態で剣技をぶっ放しても、
 決定打は与えられない。

 「カイ! カレン!」

 ワタルは二人に作戦を与える、

 「酸素集約オキジェンコンバージェンス

 「ロックウォール!」

 ワタルは酸素を高濃度に異形の周囲に集約させる、そして岩の壁でそれを包む

 「プロミネンスフレア!」

 そしてその内部で激しい燃焼を発生させる。
 囲んでいる石が融解するほどの熱が内部で発生する。
 酸素という概念を知っているワタルだからこそなし得る合体魔法だ。

 「壁が壊れたら渾身の一撃を加える、魔法は物理特化で!」

 熱エネルギーも魔法で一切外にもらさずに内部に留める。
 放射熱がもし普通の物理法則に則って放出されたら、
 ワタル達メンバーも間違いなく蒸発する。

 念には念を入れてカレンが精霊の力を借りて皆に水の加護を与える。
 万が一高熱に包まれてもある程度は耐えられる。
 信じられない高熱で石の棺が溶けていく、

 「いくぞ!!」

 「裂空斬!」
 「千光斬!」
 「アクスインパクト!」
 「バレッドストーム!」
 「サウザンドスラッシュ!」
 「グラビティストーム!」

 石棺が破壊された膨大な熱量の塊へそれぞれが持つ一撃を放つ。
 数千、数万の斬撃、岩弾、風刃、重力の嵐が奔流となって熱源に叩きつけられる。
 巨大なエネルギーの爆発が起こる、周囲に飛散するはずのエネルギーを、
 ワタルとカレンがその区画に維持させる。逃げ場の無いエネルギーが、
 【黒】のいた空間を燃やし続ける。

 エネルギーの暴走が治まってきたところで、
 熱エネルギーをコントロールして平温に戻す。
 ダンジョン内でありながらその一部は周囲がガラス化していたり巨大な欠損を起こしていた。
 そして、そこには何も残らなかった。

 「生命反応、【黒】の残渣も残っては居ません、幻術の可能性もなし、
 精霊も完全消滅を告げています」

 「そうか・・・・・・救えたらいいな」

 皆が心のなかで祈りを捧げる。

 「流石に、疲れたな。そろそろ昼だし休もうか」

 「この先に風の流れを感じます。もしかしたら外部へ開けているかもしれません」

 そこまで進んで昼食ということで一行は歩を進めた。
 カレンが言うとおり、洞窟は一部が開けており、
 聖山 エヴァルダストの山頂に続く道が目の前に開けた場所に出た。
 眼下には聖都を含めた広大な大地が広がり、まさに絶景であった。

 「す、凄い、高いね」

 「うわー雲が下に見えるよワタル!!」

 一行はこの地で昼食を取る。

 「もしかしたらこの世界で一番高いところで食事をした人間なのかもしれないね俺たちは」

 「エルフとしてもそうかもしれませんね」

 その空間には生物の気配は全くしなかった。
 超高度の位置でありながら空気の薄さも気温の低下も感じなかった。
 山頂部分から噴き出している、龍脈の力を強く感じる。
 その力がこのダンジョンの環境を保っているのかもしれない。
 カレンの説明に一同は頷く。
 万全を期して龍脈確保に向かう。
 前回の特訓トラウマもあるので一同は慎重になっていた。

 そうして一行は山頂への道を進み始めた。

 
 ワタル 78→80(新スキル開眼はなし)
 リク・カイ・クウ Lv42
 カレン Lv40
 バッツ Lv40 

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