3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

59章 女神の優しさ

 「予想はしておったが、やはりそうか」

 ワタル達はダンジョンを出ると直ぐに教皇様の元へ向かった。

 「黒についてお話があるとお伝え下さい」

 門番の聖騎士にそう伝え、しばらく待つと近衛聖騎士が迎えに来た。

 「教皇様がお会いになるそうです」

 周囲に並ぶ信者たちは少しざわついたが、事前に一部不敬の輩をとらえたパーティであることを知ると、
 皆一様に納得した様子だった。

 通されたのは女神の寝屋。
 左右の水壁には他3大陸の代表が映しだされていた。

 「プロジェクターみたいだな」

 ワタルは日本での知識からそう感じたが、実際には魔法を用いている。
 皆ワタル達の報告に眉間のシワを増やしている。

 「つまり、時間が立てば立つほど【黒】が増えると」

 手に持つペンを落ち着かない様子で回しているゲバルト王が憎々しくつぶやく。

 「はい、ですので我々も早急にダンジョン攻略へ戻ります。
 他の大陸のダンジョンなども同様の状態になっていると思うので、
 冒険者への通達は徹底していただきたいです」

 「しかし、ダンジョンに入るな。町の外へも出るなでは冒険者の生活が、さらに冒険者が手に入れる様々な経済活動が止まってしまうではないか……」

 さすがに俺様キャラも鳴りを潜めている。

 【手は打ちます】

 突如中央の水場に女性の姿が現れる。女神ヴェルダンディ様だ。

 「おおおおおおお・・・・・・」

 教皇様を含め4大陸の王たちが直ぐさま傅く。
 ワタル達一行も、遅れて傅こうとする、

 【形式は気にせずとも良い、時間がないので要件だけ伝える。
 女神の塔と呼ばれる塔を攻略したものには神々の加護というものを与えてある。
 あの加護を持つものは、魔神の攻撃を受けても紋様の影響を受けぬようにした。
 攻撃も加護がないよりは通用するようになる。
 すまぬ、街を守る障壁もダンジョンには干渉出来ないのだ。
 ただ、ダンジョン自体の神聖さがあるため、ダンジョンが魔神に乗っ取られる可能性も低い。
 我が愛子らよ、自らの力で抗って欲しい、頑張って】

 神託を告げると女神の姿はふうっと消えた。
 4王は感涙にその身を任せているようだった。
 ワタルはやっぱりこの女神甘々だなぁと思っていた。

 「まさか、女神様のお姿をこの目に見ることがあろうとは……
 なんと慈悲深い、我が身命を改めて女神様へ捧げます」

 「今のことを直ぐに国民へ伝えないとね、忙しくなるわね。
 あたしは直ぐに動くわ、お先に失礼いたしします」

 見事なたに、所作で礼をし、画像が消える。
 それに習い他の王たちもそれぞれの職務を全うするために動く。

 「ワタル殿、次からはこれを入り口の守衛に渡せば儂に会える。頼んだぞ」

 教皇様よりメダルのようなものをワタル一行は受け取る、
 上位の司祭にしか与えられないメダリオンであったが、世界の命数を握るワタル達には当然渡すべきと教皇は判断した。少なくともすでにこの街に巣食う危険因子の排除に協力をしてもらっている。
 これからも助力を惜しまない、そう教皇は決めていた。

 ワタル達もあの厄介な【黒】がこれ以上増えないうちに龍脈へ到達するべきと判断して、
 ダンジョンへと急ぎ舞い戻った。

 「せいっ!」

 「おらぁぁ!!」

 神速のクウの剣技と以前は荒々しく力強かったバッツの剣技に差が見えたが。
 今はバイセツの剣技が合わさり力強さと静かさという矛盾しそうなふたつが見事に融合している。

 「ワタ兄、腕輪の加護を聖剣の力と混ぜると黒いの簡単に切れる」

 クウが言うとおり、なんだが、それは簡単ではない。
 当たり前のようにクウはそれを実現してしまっている、
 バッツもバイセツの技術で次第にものにしているようだ。
 魔法も同じだ、魔力に加護を混ぜ込むようなイメージ。
 だが、これをすると無詠唱でぶっ放すスピードはとてもではないが出せない、
 ワタルとクウはきちんと練って発動せざる追えない、
 カレンはメディアスの技術によってほぼタイムラグなく魔法を放てるようになっている。
 リクはクウのグワーってやってばーーってやる感じ。という説明を受けてすぐに習得した。

 「む、難しい……」

 結局ワタルが魔法も攻撃もというところで躓いていた。
 カレンも弓の方は苦労している。
 防御面は簡単だ、つまりパイルバンカーには問題なく乗ってる。
 慣れるまではいざとなったらそちらをワタルは主体に戦うつもりだった。

 「明らかに数が増えてますねワタルさん」

 カイが言うように、だいたい3回戦うと一度は混ざるようになっている。
 現在ダンジョンに侵入して2時間ほど、外の時間で15時くらいだろう。

 「一息つこう」

 【黒】ムカデとの戦闘を終え、ワタルは休憩の指示を出す。
 ワタル製の経口食品、かろりーめいと、とお湯を注ぐと出来る簡易スープを皆口にする。

 「普通こういう乾燥パンってボソボソして味気ないけど、ワタルきゅんが作ったのは美味しい~!」

 「いろんな味があるんだよー、ボクはハニー味が好き!」

 「私はベーコン風味が好きだなぁ」

 「このスープもとても美味しいです。乾燥した野菜がお湯で元に戻るなんて見たことがありません。
 ダンジョン攻略中にこんな食事が出来るなんて、ワタル様は叡智の持ち主です」

 皆絶賛である。ワタルも皆の賞賛に恥ずかしそうにはしているが悪い気はしない。
 今後も快適な冒険生活のための便利グッズを作っていこうと密かに誓っている。
 夜間のキャンプはあのバリア付きキャンピングカーを使うので、
 すでに他のパーティとは異次元の快適なダンジョン攻略を行うことが可能となっている。

 お腹と心を満たしてダンジョン攻略再開、その後も順調に深部へと進んでいく。
 ダンジョンも進行していくと強力なモンスターが【黒】化していたが、
 強力なモンスターが増えると少し変わったことも起きていた。

 「ワタル様、前方で魔物同士が争っています、たぶん普通の魔物と【黒】とが戦っているようです」

 モンスターも大きくなると【黒】に抵抗したり、簡単には捕食されない。
 もちろん傷を負うこともあるが、殺され捕食され侵食されるのより遥かに時間が稼げる。
 つまり【黒】化した大型モンスターに取り囲まれるような自体は可能性が低くなるのだ。

 ダンジョンとして深部に突入する手前ぐらいでその日は野営となる。
 夜間安心して休める。これは旅をしている冒険者なら垂涎ものだ。
 ワタル達パーティは当たり前のようにそれを手に入れている。
 万が一巨大なモンスターが襲ってきても精霊が周囲を警護しており、
 囮として敵を捨ててきてくれる。

 他のパーティから恨まれないか心配になるほどだ。


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