3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

57章 ワタルの怒り

 「ヒャハハハハハハ動いたな、動きやがったな!!!!
 殺れーーーーーー!!!!!!」

 狂信者の叫びが闘技場に響く。
 ポロムの背後の戦士は迷わず振り上げた剣をポロムに振り下ろす!

 ガッ

 一刀のもとに真っ二つになった。

 ポロムが座っていたはずの椅子が、だ。
 今その瞬間までそこに座っていて、そして左右の聖騎士に抑えられていて逃亡のしようもない、
 そんな状況の獣人の子供が目の前で消えたのだ、
 斬りつけた騎士、抑えつけていた騎士は完全に思考が停止してしまった。

 「なん……だと……」

 もちろんこれにはタネがある。カレンのスキル夢幻泡影による幻影魔法だ。
 幻影と言っても極められたものは感覚さえも犯す。
 ポロム自身も魔法で眠ってもらってはいるもののカレンに優しく抱っこされている。
 助けだしたタイミングはワタルが最初の一撃を避けた時だ。

 「ま、魔法……? 馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な、完全に監視している、
 何の異常も感じなかったぞ!?」

 魔法の残渣を残さない、そんなことは今や造作もなかった。
 役者が違う、まさにその言葉がぴったりであった。

 「こ、こうなったら!! 小奴らを生きて返すな!! かかれぇぇぇぇぇ!!」

 狂った号令を皮切りに周囲の騎士たちが全員そのままの体勢で倒れる。
 すでに全員がカイの魔法により眠らされ、操られていた。
 そして操り糸を切った人形は地面に倒れるよりない。
 そのまま地面で夢を見ている。
 ポロムを抑えつけていた騎士たちの背後にはリク、カイ、クウがいつの間にか立っている。
 元に居た場所の3人は霧のように消えていた。
 騎士たちも他の騎士と同じように良い夢を見ることだろう。

 「嘘だ……嘘だ嘘だ!! 我ら誇り高き聖騎士が精神操作!? ありえん!! 
 女神の加護に守られし我々がこのような邪教の徒にたぶらかされるなどありえんのだ!!!!!」

 完全に正気を失った狂信者は剣を抜きワタルに斬りかかる。

 「ワタ兄!!」

 助けに来ようとするパーティメンバーを手で制する。
 ワタルの腸は吹きこぼれそうなほど煮え返っていた。
 カチリとワタルは自分の中でスイッチが入ったような気がした。

 「しぃぃぃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

 狂信者といえど精鋭である聖騎士の副隊長。その剣撃は一流の速度と破壊力を秘めている。
 しかし、こんな奴に、武器も防具もワタルには必要なかった。
 ワタルは振り下ろされる剣を前髪を斬らせるぐらい完全に見切り、
 最小限の動きで避けて、そのまま右腕で首元を刈る。ラリアットだ。

 「グべぇ……!」

 無様に兜を吹き飛ばし一回転して潰れたカエルのように地面に叩きつけられる。
 此処から先を皆に見せる訳にはいかないな、
 ワタルは幻影魔法で自分と目の前の糞虫を包む魔法を展開する。
 これで外からは二人は普通に戦っているように見えるだろう。

 「ぬ、ぐぬ、ぬがぁ!!」

 流石鍛えられし聖騎士、よろけながらも直ぐに立ち上がり斬りつけてくる。

 「グアアアアアアアアア」

 振り下ろされる前に手首を掴みそのまま握りつぶす。
 ゴキャ、と嫌な感覚がワタルの手に伝わる。

 「ぎゃん」

 骨が砕けた瞬間にビクリと身体を震わせる、普通なら気絶してもおかしくない激痛だ、
 しかし狂信者は異常な精神状態にある、
 すぐに左手で腰につけている短剣でワタルを突く、

 「が……ああ!?」

 ゲーツがワタルの顔に突き刺したと思った短剣が自分の右手に深々と突き刺さっている。
 そしてそのまま左手の肘をワタルに砕かれ地べたに転がされる。

 「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!????」

 突然起きたあり得ない感覚に、
 ゲーツは完全に狂いそうに成った。
 砕かれた左肘が今まで感じたことがないような快楽を脳に伝えてきたのだ。

 「な、なにギャーーーーー!!!」

 今度は右手首の痛みが突然狂ったように増大した。
 右手首をワタルが踏みにじっている。

 「いだい、イダい、ああ、ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 今度は左手の傷の快感が脳天を突いた!!
 今度は左肘を踏みにじられている。

 「楽しそうだなぁ、ゲーツ」

 ゲーツが見上げると、そこには悪魔が居た。

 「ほら、痛みをやるよ」

 いつの間にワタルの手に握られた短剣が左腿にささる、
 激しい痛みが全身を貫く、精神を引き壊さんばかりの痛みだ、
 太腿を突かれただけでは決して味わうことのない痛みだ。
 言葉さえもでない痛み、ゲーツの精神ココロが音を立てて崩れそうになる。 

 「痛いだろ? 今救ってやるよ」

 短剣が抜かれ右足に突き刺さる。
 その瞬間自分の身体が吹き飛ぶほどの快感がゲーツを撃ちぬいた。

 「あああがががああああああああああががあああああああああ」

 「ほら、左手を治してやるよ、ホラ短剣だ。後は自由にしな」

 ワタルは左手を治してやる。そして短剣を握らせる。
 ゲーツを包み込んでいた快楽が減ったような気がした、
 ゲーツは迷わずその短剣を左足に突き刺した、
 ゲーツは快楽に溺れ何度も何度も左足を突き刺した。
 そのうち時々右足をさして痛みを与えるとその後の快感が大きくなることが気がつくと、
 自らの身体に痛みを与えるようになる。
 涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃになった顔で両足を突き刺し続けている。

 「ほら、自分を見てみろよ、敬虔な女神の使徒であったお前の真の姿を」

 ワタルは魔法で作った水鏡をゲーツに向ける。
 ゲーツは自らの姿をみた、見るも無残なだらしのない顔で、
 苦痛と快楽を交互に自らに与え、色んな物を垂れ流してグチャグチャになっている下半身、
 それでも苦痛と快楽の交差から逃れられない自分自身の姿を見た。
 女神の使徒である尊厳は一寸も残っていなかった。
 精神は完全に支配された。

 「この汚らしい姿がお前の本当の姿だよ」

 まったく感情のないどこまでも冷たい一言がゲーツの耳に届く、
 その瞬間今までの快楽さえも児戯であったかのような魂までも握りつぶさんばかりの波が訪れた。

 「ああああああああああああああああワダル様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 最後に獣のような雄叫びを上げて【男装の麗人】ゲーツは果てた。
 完全に堕ちた。ワタルの新しいスキルの破壊力はあまりにも危険なものだった。

 それと同時に門が開かれ、近衛聖騎士が突入してきた。
 その場に居た聖騎士は全て拘束された。
 ゲーツを運ぶ人に悪いので傷は治して浄化もしておいた。

 「迷惑をかけたのぉ、それにしてもワタル殿のやり方は、なんというか、恐ろしいな……」

 教皇が複雑な表情をしながらその場を仕切って帰っていった。

 ワタルは自らの行った行動に物凄い罪悪感を感じながら仲間たちのもとへ戻る。

 「ワタルきゅん、すごい」

 バッツは直感で見えているわけではないがわかっていた。
 そして、ワタルは怒りのあまり失念していたが、カレンに幻術など通用せず、
 全てをはっきりと見ていたのだ。
 バッツは顔を上気させていた。もっとたちが悪かったのはカレンだ。
 足腰が立たなくなってリクとクウに抱えられて運ばれる始末だった。
 ポロムはワタルに抱かれ無事に領地へと帰還するのであった。

 めでたしめでたし。












 めでたしなのかなー?



 

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