3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

51章 イステポネ大陸

 「よし、魔法で動く車で行こう」

 いきなりこんなことを言ってみた。
 馬車でもいいんだけど、正直馬の管理とか手配がめんどくさい。
 もう自分達で移動手段を作ってしまおうというわけだ。
 砂漠は厳しいけどこの大陸は緑あふれる大地だ。

 基本構造は馬車を馬を使わず魔道具で動かす。
 タイヤは魔物の革を使う。
 シャーシも魔物の骨を魔法で加工する。
 金属製よりも軽く丈夫、そして魔力や魔法が通りやすい。
 バッツが内装の小物なんかを作ってくれる。
 可動部分はカレンとカイにお願いする。
 アクセルやブレーキハンドルの説明をして魔法でなんとかしてもらう。
 いやー、魔法って便利だな。うん。
 魔物の素材ってのはいろいろなものがある、弾力のあるものはタイヤに使ったり衝撃吸収材にしたり、
 あとは座る場所なんかにも使える。別に生臭くはならない、ちゃんと処理すれば。

 「できたー!」

 そしてこの世界で初めての車を完成させた。
 魔石をふんだんに使い、刻まれる魔法回路もオーバースペックの化物。
 イメージとしてはキャンピングカーだね。
 室内環境を第一として途中から悪乗りしました。
 ごめんなさい、見た目はトラックですね。はい。
 前輪2対、後輪3対、それぞれが独立した駆動系を操作できます。その場で回転とかできちゃいます。
 真横とかにも動けるよ。
 生活環境魔法やらハッチバッグを開ければキャンプスタイルのキッチン。
 シャワーにベッドまで完備さ! トイレも魔法で完璧さ!

 やり過ぎました。

 「言われるがままに作りましたが、これ凄いですね」

 ええ、カレンさん凄すぎると思います。

 「ワタルきゅんはなんでこんなもの作れるの?」

 「まぁ、勇者の知識的な何かだと思ってくださいははは」

 「わーすごいよワタルふっかふか!」

 「中でお水も使えるし冷蔵庫も作りましたからね」

 「ワタ兄ベッドもふかふか。これが移動するってのが信じられない」

 周囲にも人だかりができてきた。

 「じゃぁ、論より証拠、動かしてみましょう」

 俺もゲームぐらいでしか車なんて動かしたことないけど、
 魔力の動きでどうすればいいかはわかるから大丈夫だろ。
 視覚魔法を利用したバックモニターまである。
 簡易的なナビ、と言っても上空視点の画像が出るだけだけど、もあります。

 「しゅっぱーつ」

 俺は起点となる魔力を送る、そこからは環境魔力を集めて稼働する。
 車が動き出す、うん、衝撃吸収機構もタイヤも問題ないね。
 周りから大きなざわめきが起きる。
 回ってみたり走ってみたりいろいろと確かめて問題ないことを確認する。
 一応ファンタジーの世界なので襲われた時ように天井にも上がれるし、
 例のバリア発生装置も組み込んだ。
 アイテムボックスからこれを出せば無敵の移動拠点の完成だ。
 バリア展開中は動けないけどね。

 「よし、何の問題もないね。冒険者ギルドと教会に顔出して出発しよう」

 「それでしたら私とバッツで冒険者ギルドへ行ってきます。ワタル様は教会おねがいします。」

 「そうしよう」

 町中を走り回ると流石に危ないし人だかりができちゃうのでアイテムボックスへ車を収納する。
 それでもまた歓声が上がったけどね。

 その後教会へ首都イステポネの教会本部へ向かうことを伝えてまた寄付もしておいた。
 これで先に連絡が行ってスムーズに教皇様への面会やダンジョンへ侵入できるだろう。
 言ってしまえば賄賂だけど、異世界で宗教と揉めると碌な事にならないってのはお約束。
 と言っても、俺ら言ってみれば女神が使わせた勇者なんだけどね……
 パーティ名も商会の名前も女神の盾だからね。
 この世界では女神の加護のために名前をつけるのは一般的だから珍しくもなんともないけど。

 「やはり、冒険者ギルドでも魔獣の強化は噂になっているそうです。
 あと、塔も出来たそうでサウソレスのギルドからの報告が、
 すでにすべての大陸のギルドへ通達され冒険者の塔攻略は推奨されています。
 全体的な底上げは順調に行われているようです」

 よかった、不安要素の一つにもきちっと対応が始まっているね。
 さて、魔神の手が早い以上俺たちもどんどん進まないと。
 さっそく港町から首都へ移動しよう。

 「また来てくれよー!」

 顔役のおじさん一同に見送られて出発する。
 地面の状態を把握しながら車を走らせていく、
 問題ないね、スピードを少しづつ上げていく。

 「すごーい、馬車をぐんぐん抜いていくー!」

 街道を走ると馬車の馬を驚かせるので少し離れたところを走行中、
 クウは天井部で警戒中、見つけた魔物はカイによってばたばたと狩られていく。
 カレンが魔法で獲物を回収。バッツさんは洋服を鼻歌交じりに縫っている。
 リクは助手席で楽しそうだ。
 いいのか、こんな楽な移動で。
 たぶん時速80キロくらいでてるのかな?
 魔物衝撃吸収装置ショックアブソーバーは物凄い高性能でほとんど地面の衝撃を拾わない。
 現実の車よりもいいね、慣性も魔法でコントロールしてるから、
 急ブレーキもなんともない。魔法の力ってすげぇ!

 大陸の端の港町からほぼ中央部にある首都までたぶん、明日にはつく。
 夜間走行も照明装置はつけているけどリスクが大きいので日が暮れてきたら今日はおしまいだ。
 本当はこの移動で1週間ぐらい予定してたんだけどね。
 ちょっと広めにバリアを貼って外で食事を楽しむ。
 虫も入ってこない。これ、快適なキャンプだよね。
 この世界の旅の根底を変えてしまうような物ですね、とカレンは複雑な表情だ。

 「いいーじゃない、バッティこんな旅なら大賛成よ~!」

 バッツさんは両手に賛成のようだ。

 「だってぇ、普通の旅って長い時間砂煙とかそういうのに晒されるし日差しは強いし気軽に手を洗ったりは出来ないし横になるのも板の上に革轢いたようなものだしお風呂もめったに入れないし……」

 10分くらいず~~~っと口を言っていた。

 「……だからこの夢の様な旅を提供してくれるワタルきゅんには感謝してもしきれないわ!」

 「う、うん。喜んでもらえてよかったよ……」

 それ以上いうことがない。
 取り敢えず洗い物が終わって代わる代わるシャワーを浴びる。
 ちょっと思い立ったことがあるのでシャワーから上がった3人にグラスに入った飲み物を渡す。

 「飲んでみて、ちょっとシュワシュワするからね」

 「……! おいし~!」

 成功だね。俺が作ったのは炭酸水にちょっと蜂蜜とレモンスライスを入れただけだ。
 炭酸水が簡単に手に入らないこの世界なら風呂あがりとかに喜ばれるかな? 
 って思って作ってみた。
 空気中の二酸化炭素を抽出して水に注入する。
 現代で言うガス注入方式に近いやり方だね、母親が炭酸水サーバーを持っているので、
 俺もよく飲んでいる。

 「バッツはこれ」

 「あら、ワタルきゅんやさしー! ……おお! ウメェなこりゃ!」

 まぁウイスキーのソーダ割りだ。親父の好物だ。
 親父は焼酎でつくるハイボールが好きだったけど。
 氷も魔法で出し放題。
 俺はハイボールに果汁を入れたのが好みだ。
 カレンにも果汁ベースの炭酸のお酒を作ってあげる。

 「これは美味しいです! ワタル様!」

 みんな喜んでくれて嬉しいよ!

 テーブルをかたして壁面からベットを出す。後は天井から降ろす。
 底部から引き出して、後部座席をフラットにする。
 これで全員分の寝床が確保できる。
 さすがに皆いるからえっちぃことは禁止ですよ。

 「見張りも立てなくていいなんて……ワタル様と出会えて幸せです」

 こうしてあまりに快適すぎる夜は更けていく。

 


 
 

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