3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

50章 新大陸へ

 「釣れたーーー!!」

 鯵に似た魚を獲ったど➖➖➖!!とリクが嬉しそうに掲げている。
 サウソレスからイステポネへ渡る船の上で釣り糸を下げている。
 水を操作して動かす魔導器が不調で現在修理中。
 この世界の海は魔力を乱すそうだ、だから魔力で空を飛んだりすると危ないんだって。
 やらなくてよかった……
 海にも魔獣が多く落ちてたら大変だった。
 プロテクト的な処理をした魔道具か、人力が船の稼働力に使われる。

 釣った鯵を手早くお造りにしていると船長がやってきた。

 「申し訳ございません女神の盾のメンバーの方ですよね、カレン様はいらっしゃいますか?」

 「あ、はい。カレーン!」

 「はい、ワタル様」

 うおっ! びっくりした! 貴方今あっちで釣りしてたよね?

 「せ、船長さんがお話あるみたい、ハイこれ」

 出来上がった鯵の造りを一切れ醤油もどきをつけて、あーん、させてあげる。
 物凄く嬉しそうに食べる、そして味を感じて幸せそうな顔になる。かわいい。
 その後カレンさんはカイを呼んで船長さんと室内へ入っていった。
 あの二人がいれば魔法関連のトラブルはすぐに解決するだろう。

 15分ぐらいで戻ってきた。船長から乗客へ説明があり船が動き出す。
 ちょ、どう考えても停まる前より速い。

 「な、なんかしたの?」

 「せっかくなので出力を上げて、水の抵抗を減らして、
 船上への水しぶきや風の影響を無くしておきました」

 カイさん、それすでに別物な魔改造じゃないか。

 「なんか凄いね」

 「こんな感じかなーってやると出来るので便利です」

 さらっというけど、とんでもないね。

 「あのー」

 おずおずと船長さんが戻ってきた。

 「あのようなことまでしていただいて、あの、その報酬の方は……?」

 カレンがこっちを見てくる、俺が首を振ると。

 「私達も進めないと困るので大丈夫です、無事に送っていただくお礼代わりだと思ってください」

 船長さんはめっちゃ嬉しそうに何度も何度もお礼を言っていた。
 周りの船員や客達も流石聖女カレン様だと大絶賛。
 ほんとカレンは人気があるよなー。
 でも確かにあんな魔改造したら普通は国家予算規模の請求が来ると思うよね、
 今後は少し自重させたほうがいいんだろうなー、
 あまりそういう話が広まってそっちの要求されてると魔神がどんどん力をつけてしまう。

 その後は何回か魔獣に襲われたけどさっくりと退治してイステポネ大陸の港町に無事到着できた。
 あのタコみたいな魔獣でたこ焼き作ろっと。

 「ワタルさん見てください! あんなに魚の種類があるなんて!!」

 結構大きな市場があったので覗いたらカイさんのテンションがMAXだ。

 「そしたら今日は宿をとったら魚介を使った料理でも作るかー」

 みんなテンションがMAXになった。
 交通の拠点の港町だけあっていくつか宿屋があった。
 その中でも共用調理スペースが使いやすそうだった一軒にした。
 凪の音って宿だ。凪なら音しないんじゃとか思った俺はきっと女性から嫌われるタイプだな。
 個室を2部屋、二人部屋を2部屋取ることが出来た、これで僕の貞操は守られる。

 もう日も傾き始めているから食事準備だ。
 魚介料理一品目はさっき船でやっつけたタコみたいなのを使ったたこ焼き……を作りたかったけど、
 専用の鉄板がない、ということでお好み焼き風だ。
 まぁ、調理と言っても食材を切って焼く。
 今俺のアイテムボックス内は食材で溢れているからね。なんでもある。
 二品目はアクアパッツァだ、白身の魚を使って香辛料をしっかりと、
 それでいて素材の味を十分楽しめる。
 さらに魚介出汁を野菜に吸わせる大皿料理だし、ぴったりだろう。
 最後はやっぱりお刺身だ。これは外せない。
 スキルのおかげで俺はどんな魚だろうが捌くことが出来る。
 ほんとうに便利なスキルだ。もう貴方スキルの居ない生活なんて考えられません。

 初めて食べるお好み焼きも大好評だった。 
 意外なことに肉好きなリクが気に入っていた。今度はオークのバラ肉で作ってやろう。
 カイは幸せそうだ。いいね。作った甲斐があるよ。ダジャレじゃないからね。

 「ほんとワタルきゅんの料理って凄いわね……ところでお酒のお肴とかも?」

 「飲む? じゃぁさっぱりしたの作るよー」

 「キャー素敵!」

 最近エールの美味しさに目覚めてしまい、僕もちょこちょこ飲んでる。
 アルコールを完全に分解できる魔法のせいで二日酔いしないからね。

 作るのはマリネだ、刺し身の中でも歯ごたえがよく噛むほど味が出る魚を使う。
 風味の良い植物油、塩、香辛料、ちょっとトマトを添えて出来上がり。
 あ、ピクルスでも作るか。
 んーポテチ食べたいなー。
 フライドポテトにすっか、よしそうしよう。

 気がついたらかなり大量につまみを作っていた。
 そして、他の宿泊客が飢えた目で周囲から見つめている。
 俺はエールの大樽とワインの大樽を取り出す。

 「みなさんも飲みますか?」

 宿が大歓声に包まれた。

 結局宿の従業員や周りの店の人達まで集まって大騒ぎしてしまった。
 近くの酒場から出張でいろいろ届けさせたりしてやり放題してしまった。
 ま、新大陸到達のお祝いってことで。

 料理も隠すのをやめた。A級冒険者を力でどうこうするのは王族でも許されないんだって。
 S級冒険者が二人もいるA級PTのメンバーでもあるし、
 もう俺達の行動を邪魔することは冒険者ギルド全体を敵に回すようなものだ。

 「それにしてもワタル君が作る料理は旨いな、
 この街は良い魚介が入るんだがなにか町の名物になるような料理でも教えてもらえないだろうか?」

 この街の市場の顔役のおじさんに請われてなにか珍しい料理を考える、
 この世界であんまりお米にいろいろして食べる文化がないことを思い出して、
 前の世界で好きでそれがあるファミレスでは必ずそれを頼むやつを作ろう。

 パエリアだ。

 なんかごちゃっとした豪華さが好きなんだよね
 パエリア鍋はないから大きめのフライパンで、
 野菜とたっぷりの魚介をにんにくの香りを移した植物油で炒める。
 あんまり細かな手法があると皆が簡単に作れないから一番単純に作る。
 ワインを入れてもう少し炒める、そしたら水と米と各種味付け・香辛料で味付けをして10分ほど煮る。
 パプリカみたいな野菜とか彩りの良い野菜、見た目が豪華になるよう別に炒めておいた魚介を散らす。
 そのままオーブンに入れてもう10分。完成だ。

 「う、うめぇ!!」

 「なんだこりゃ、魚介の旨味が全てライスに移っているみてぇだ」

 「もう腹いっぱいなはずなのに、止まらねぇ!」

 喜んでもらえて何より、あんまりこだわらないで作って平気ですよと教えてあげる。
 あとはこういうのあると楽かもとパエリア鍋を説明した。
 これでこの料理はいずれこの街を代表する料理になるだろう。

 夜もすっかり更けてきたので先に休ませてもらう。
 明日からは首都イステポネへ移動だ。睡眠はゆっくりと取らないとね。

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