3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

43章 魔神の使徒と神の残酷な選択と別れと覚醒

 オーガはより禍々しくなっていた、
 こぶ程度の額の出っ張りが大きく伸びて鋭く日本の角となっている。
 身体には漆黒の炎の紋様。顔にも歌舞伎役者のような紋様を作っている。
 身長は5m程に大きくなっている。
 はちきれんばかりの筋肉、丸太のような腕、そこにもつ巨大な鉄棍、
 鉄棍にも禍々しい紋様が手からつながっている。
 目は血走って真っ赤だ、ハァハァと興奮したように呼吸をする口には鋭い牙も見える。
 アレはオーガではないな、オニだ。

 「GUOOOOO!!!」

 オニが雄叫びを上げながら迫る、鉄棍を力に任せて振り下ろす。
 テレフォンな攻撃だが馬鹿げた力による破壊力とスピードは桁外れだ。
 身体は回避しつつ魔法盾を展開する、魔法盾と鉄棍がぶつかる。

 ズガァァァン!

 交通事故のような音が響く、鈍い痛みが頭にくる。
 魔法盾は激しく損傷してしまった、それでも砕け散ってはいない。
 受けられないこともないが、地面まで少し歪んでいる。
 この場所の床は何をやっても傷つかなかったのに、
 少なくとも攻撃力は当たればこの場にいる誰よりも強い!

 「当たったら、死ぬ。受けようとは思うなよ皆!!」

 叫ぶ。
 これは絶対に必要な情報だ。

 オニの顔に光の矢が飛ぶ。
 カレンの魔力によって作られた矢だ。
 あの拷問の中で編み出した技だ。
 オニは鬱陶しそうにはしているが避ける必要もないといった状態、
 現に矢はオニの皮膚を貫きはしていない。
 目に当たればもしやと思ったが、瞬きで弾いている。恐ろしい。

 「GURAAAA!」

 黒いエネルギー波をカレンに放つ、

 「させるか!」

 魔力盾をカレンの前に顕現させる、角度をつけて弾く。
 絆のある相手なら魔力盾を近くに出すことが出来るようになった。
 ただ衝撃は本人に行くので弾くように使わないと逆に邪魔になる。

 「すみませんワタル様!」

 「カレンは攻撃は控えて魔法で援護してくれ!」

 さっきからリクとクウによる攻撃は続いているが、鉄棍によって阻まれている、
 カイの魔法でさえあのエネルギー弾で防いでいる。
 僕も盾をつかって少しでも隙を作ろうとしている。魔法はカイの魔法でダメなら無駄だろう。
 体勢を崩せないか足場を凍らしたりしているが全く意に介していない。
 バッツさんも渾身の攻撃を繰り返しているが軽くいなされてしまっている。
 成長したことによってカレンとバッツさんと3人娘の実力差が大きく逆転してしまった。

 龍気によって成長中のステータスは倍増しているが、そうするとより差が開く。
 龍脈の加護は言ってみれば体内に龍脈を作ってしまい、自身の身体の中で気を巡らせ、
 増大させてくれる。強力な自己活性スキルだ。

 そうして強化された僕達の攻撃をこのオニは凌いでいる。
 魔神の使徒はこれぐらい桁外れの敵なんだと身震いする。
 しかも、女神様の話ではこれで下っ端、この先どんどん強化されるという話だ。
 強くならないと。

 それでも少しづつ手傷を負わせている。
 きちんと攻撃が当たれば3人の攻撃ならオニの強靭な皮膚も切り裂ける。

 「GUARARARARRAAAAAA!!」

 苛ついたオニが大きく鉄棍を振り回し、僕らとの距離が開く、
 禍々しい炎が大きくなり、突然オニが爆発したかのような加速をして突っ込んできた。
 やばい!!
 盾と魔力盾を全て構える2枚は粉々になったが、その勢いを利用して身体をずらす。
 額から血が流れる、今の攻撃はまずいぞ、
 壁を背に受けたらたぶん死ぬ。
 たまたま僕を狙ったからなんとかなったけど、これはバッツさんとカレンは避けられない!
 オニが最初居たところは見事に足の痕で床が変形している。
 どれだけの力なんだ。

 「バッツさんカレン! 今の攻撃は絶対に受けないでください!!」

 「そう……みてぇだな畜生!」

 声の方を見て絶句した。バッツさんの左腕が……血だらけでグチャグチャになっていた。

 「くっそ! かすっただけだぞ糞がぁ!!」

 「カレン!! 治療を! リク! カイ! クウ! 時間をかせぐぞ!!」

 俺が叫ぶと同時に皆が動く。
 バッツさんと射線を被らないようにして、3人の攻撃に鉄棍を対応させているオニに、
 2枚の魔法盾を利用してパイルバンカーを足元を狙い死角より撃ち込む!

 ガリッ!

 薄く足の皮膚を削れた。
 僕があいつに攻撃を加えられるとしたらこれしか無い!

 ベキン

 だが魔法盾も割れてしまう、ズキッと痛みが走る。
 そして振るわれる鉄拳、鉄棍を握っていない拳が迫る。
 残る魔法盾と盾で受ける、出来る限り盾の曲線を利用して流すように受ける!

 ギャリン

 金属同士がこすれ合うような音がする。少し芯を捉えられてしまった、
 左肩に激痛が走る。肩がだらりと下がり力が入らない、脱臼した。ヒビも入ったな。

 全力でバックステップ、距離を取る。
 すぐに回復魔法を施す。
 自分自身で回復方法が出来たのは大変ありがたい。

 しかし、速い!!
 すぐに3人が攻撃を激しくしてくれたから距離を取れたが、
 追撃されたら死んでいた。

 オニは細かな傷は増えて流す血も増えているが全く動きが衰えたり、
 傷を気にする素振りはない。

 今のところ一番効果的な攻撃はリクの闘気と龍気を纏った攻撃だ。
 クウとカイが隙を作り、その隙をリクが攻める。
 それでも何度も鉄棍に防がれる。
 だんだんクウとカイの攻撃を無視してリクの攻撃に対応するようになってきた。
 厄介だ。

 「カイ!! 強力な熱の攻撃を鉄棍に当て続けろ!!」

 すぐにカイは強力な炎の魔法で鉄棍を熱する。
 鉄棍は灼熱に熱せられ赤色に変化していく。
 まとわりつく漆黒の紋様の力か溶けるまでは至らない。
 鉄棍をもつ手からは煙が上がっている。
 このオニ痛覚が麻痺してるな。

 「今だ! 一気に冷やすぞ!!」

 僕も協力して強烈な冷気を叩きつける!

 「リク!! 鉄棍を思いっきり叩け!!」

 リクのオーラを纏った一撃が鉄棍と交差する

 バギャン!

 今までとは違った音がする。鉄棍は中で一部が砕けた。

 「よし!」

 加熱から急激な冷却でヒートショックによって脆くする作戦はうまくいった。

 グニャグニャと扱っていた鬼だったが、イライラしだして鉄棍をむちゃくちゃに投げた。
 恐ろしいスピードだ、見当違いな方向だったので迎撃は、
 目線をすっと先に送った時心臓を鷲掴みにされた、

 「カレーーーーーーーーーーン!!!!!」

 考えるよりも早く全ての魔法盾をカレンの前に展開する。角度をずらす!! 角度をつけて対処すればずらせる!! 冷静になれ!! 一枚目が貫かれる、全く勢い方向は変えられていない。もう少し角度を浅く当てる、ダメ。二枚目もあっさりと貫かれる、ただの破片じゃない、あの紋様がこの馬鹿げた破壊力を生んでいる、それでもやるしか無い、一枚目と二枚目で通過する方向は完璧にわかった、極限まで盾を圧縮する、盾と鉄塊がぶつかる。

 盾は破壊されなかった、

 破壊されないまま、カレンの胸を、押しつぶしていた。

 嘘だろ? 諦めるな、動け! 動け!! 動けー!!!
 足を動かす、カレンへ向けて、

 「3人!! 頼む!!」

 これでわかってくれるはずだ、信じて走る。
 バッツさんが近い先にかけ出している、大丈夫、助かる! いや、助ける!!

 「ワタ兄!!」

 クウの声だ、振り返る。
 目の前に真っ黒な塊がある、
 反射的に身体を崩す、偶然でしかないが回避できた、

 その先にいるバッツさんがその塊を回避することは出来るはずもなかった。

 ぼっ

 静かな音しかしなかった、一瞬して壁に辺り爆発音のような音が響き渡る。

 バッツさんがぐらりと倒れる、上半身と下半身をつなぐ部位が半分抉られていた、

 それを認識した瞬間に激痛が頭を襲う、
 頭部から血が弾ける、目の前の視界が赤くなる、
 思わず触ると頭皮の一部がざっくりと切れていた、

 こんなものはいい、軽く回復魔法を巡らせばすぐ塞がる、
 二人だ二人を治療しないと。

 いつの間にか倒れた二人の場所にバイセツさんとメディアスさんがいる。

 『すまぬ、ワタル』

 「ごめんなさい」

 床にはポーションが割れている、なんで二人は謝っているんだ。

 「カレン、来たぞ。今治してやるぞ、バッツさんもすぐに治しますから」

 返事はない。

 関係ない。

 僕は二人に全力で回復魔法をかける。
 しかし傷が治らない。真っ黒な痣のようなものが傷口にくっついて傷口を治療できない。
 どけよ!! 手を延ばす、

 ジュウ……

 手が焼ける! 構うもんか

 ドン!

 バイセツが体当たりをしてきた

 『お主も喰われるぞ!』

 「うるせぇ!! どけ!!」

 「ワタル! 残酷だけど、あの化物と戦うにはこうする必要があったの」

 何をいってるんだこいつらは、死んじまう! 二人が死んじまうんだよ!

 『騙すようで悪かった。ゲンブどの一瞬お力をお借りいたすぞ』

 『うむ、吾輩はこのために生かされたのじゃな』

 「申し訳ありません」

 『よいよい、女神に宜しくな』

 盾から光がオニへ伸びる。
 その光がオニに当たるとオニが二枚の甲羅に包まれた。
 ガコンガコンと内部から甲羅を叩く音がする。

 「リク、カイ、クウ、こちらへ」

 メディアスさんが静かに告げる。

 なにやってんだよ、二人を治さないと。

 『時間がない、今から3人の中の聖剣の力を一部二人の中へ移す。
 媒介には我らの魂を使う、
 これしか方法はない、迷ってる暇はないやるぞ』

 「ワタル君、ごめんなさいね、私たちはアルス神からこの話を聞いていたの。
 こうするしか無いの、一度死んだ肉体に聖気を満たし復活させる。
 そうしないと聖剣の力は通常の人間には宿せないの、
 強すぎる聖剣の力が魂までも焦がしてしまう」

 怒りと悲しみと二人が助かるかもという喜びが頭の中をグチャグチャにする。

 『ワタルよ、どうか魔神を倒してくれ』

 「お願いよワタル君、短かったけど楽しかったわ、
 リクちゃん。
 エルンちゃんが今までありがとう。
 これからも一緒だよって」

 「うん」

 バイセツとメディアスが光の玉となる。
 3人から光が2つの玉に流れ込み神々しい光を放つ、
 俺はそうすることが正しいとわかっているように光の玉を掴み。
 メディアスの力はカレン、バイセツの力はバッツ。
 二人の損傷した部位に近づけていく、
 ヌラヌラとへばりついていた【黒】が消えていく。
 そしてそのまま光は二人の身体に吸い込まれていく。
 欠損した部位が盛り上がる、
 鎧までもが修復していく。
 真っ青だった顔に朱が差す。

 「ぐはっ!」「がはぁ!」

 二人の呼吸が戻る。


 「わかったよバイセツ、メディアス。【俺】が必ず魔神を倒す!!」

 気が付くとリクもカイもクウも泣いていた。
 俺の目からも涙が流れていた。

 「泣いてる暇はない、アイツを、オニを倒す」

 俺の言葉に皆が頷く。
 わかるんだ、俺の身体にカレンとメディアス。バッツとバイセツの力が流れ込んでくる。

 「俺がアイツを倒す!」

   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■

  イチノセ ワタル
 Lv55 【目覚めし勇者】New!
 HP 3180 (+6200)
 MP 2104 (+6900)
 Str 228 (+480)
 Agi 245 (+420)
 Vit 243 (+430)
 Dex 305 (+670)
 Int 298 (+620)
 Luk 123 (+320)

 【スキル】 女神と神獣の盾 勇者の力【覚醒】New! 深謀遠慮(感覚系スキル統合)New! 
  神算鬼謀  明鏡止水(並列思考上位化)New!  古今無双Lv10New!
 神の料理人 神のマッサージ師 農畜産業の神 建築技工の真髄
 言語理解 大器晩成 行動最適化Lv10 魔導の真髄Lv10 異次元魔法Lv10New!
 護る力 農業魔法Lv10 生活魔法Lv9 龍気
 拷問Lv9 聖剣操作Lv9New! 罠 幸運Lv5


 【称号】 聖剣の聖女との絆 苦痛の申し子 ドラゴンスレイヤー 覚醒した勇者New!
 神々の加護 カイとの絆 カレンとの絆New! バッツとの絆New! 龍脈の加護


 カレン=グリーンフィル
 Lv1 【聖弓の狂信者】New!
 HP 3870
 MP 4218
 Str 246
 Agi 290
 Vit 254
 Dex 385
 Int 287
 Luk 165→215 

 【スキル】聖弓の力New! 魔力操作Lv10New! 魔力支配Lv10New!
 異次元魔法Lv10(魔法系統合)New! 弓術 Lv10 万里眼(千里眼上位化)New! 
 身体活性Lv10New! 生活魔法Lv10New! 細工Lv10 
 調合Lv8 鑑定 強行踏破Lv4 信仰Lv10 龍気 魔力矢 アイテムボックス【大】幸運Lv5New!

 【称号】 天弓 森の友 狂信者 真・勇者との絆New! 龍脈の加護 異次元の魔導を極めし者New!

 生活魔法Lv10 遺伝子操作 神の領域

 バッツ=ドラギオン
 Lv1 【道を切り拓く大剣】New!
 HP 4657
 MP 1410
 Str 413
 Agi 201
 Vit 313
 Dex 197
 Int 138
 Luk 110→160

 【スキル】聖大剣の力New! 両手剣Lv10 古今無双Lv10(武技系スキル統合)New!
 明鏡止水(並列思考上位化)New! 龍気 武士の深淵New! 
 裁縫Lv10  幸運Lv5New!

 【称号】 両刀使い オシャレマイスター(*´ω`*) 龍脈の加護 神々の加護New! 
 真・勇者との絆New! 武の極みを見た者New!


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