3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

37章 危機一髪

 昨日は拍子抜けするほど順調に中層での戦いを終えることが出来た。
 今日の目標は下層だ。
 あまり中層で中だるみのような戦闘を繰り返してもマイナスはあれどプラスは少ない。
 いつものように目を覚まし、軽く庭を走る。
 なんとなくこっちに来てから始めている。
 朝食も美味しくなるし一石二鳥だね。
 朝食などはみんなでやってくれる。

 食料の貯蔵は地下に用意した。
 魔法で作った巨大な氷を用いた冷蔵室だ。
 魔石を使いより氷を溶けにくい状態に維持している。
 流石に奴隷のみなさんにマジックボックス持ちはいない。

 魔道具で再現できないか聞いてみたんだけど、魔力の消費が激しすぎて現実的じゃないそうだ。
 空間魔法を用いると似たような働きはできるけど内部は時間が経過する。
 しかも魔力が切れると消滅しちゃうそうだ。
 スキルのアイテムボックスがいかに有用かってことだね。
 5人がアイテムボックス使うPTなんて勿体無くてしょうが無いね。

 今回は野営の可能性もある。
 少なくとも昼飯はダンジョン内で取ることになるだろう。
 魔石を使った、日本で言うカセットコンロみたいな物も持ち込む。
 魔石を使えば電力がいらないから逆にオーブンみたいなものもダンジョン内だろうが使える。
 無理しなくても調理済みのものを持ち込めば解決なんだけど、気分は大事。

 予定通り朝早くからギルドへ顔を出す。
 昨日の換金は20万ゼニーを超えた。一人4万ゼニー一日で良い稼ぎだ。

 「それでは予定通り中層まではまっすぐ一気に進みます」

 カレンさんの指示の下、どんどん進んでいく。30分ほどで中層への入口に到達。
 距離にしたって10キロ位は移動するんだけど、魔法による加速、
 敵はサーチアンドデストロイで戦闘は一瞬だ。

 「そういや、転送陣もだめなの?」

 「うん。位置をうまくつかめない。内部から外へは飛べると思うけど、逆は出来ない気がする」

 さみしそうにクウが答える。

 「そうですね、内部は生きているので、座標が一定してないからって言われています」

 残念、それができればすぐに下層からスタートとか出来ると思ったんだけどね。

 「中層は大体のMAPはあるのでなるべく短距離で下層入り口へ向かいます」

 冒険者らしく緊張感のある顔つきでそう告げるカレンさん、
 恐ろしいほどの美形な顔が最も輝くのはこういう緊張感のある表情だと思ってる。
 こうしていると、ほんとにカレンさんは素敵な女性なんだよなー。
 ずっとこれで居てくれたらきっと好きになってたよなぁ……まぁ、好きだけども今のままでも。
 なんか、恥ずかしくなってきたぞこんなこと考えていたら。

 「大丈夫ですかワタルさん、顔が赤いですよ?」

 「だ、大丈夫! さぁ、行こう!」


 「オーガ2,オーク6の集団です」

 「油断せずに確実に!」

 壁の影から一気に肉薄する、オーガへパイルバンカーを放つ!
 魔法盾が3枚になったことで壁を使ったパイルバンカーをどんな状況でも打てるようになった。
 深々と右脇腹に刺さる、そのまま魔法盾を防御の位置に戻す。
 盾がなくなった部分から大量の出血、これで棍棒を振るう右手には力が入らないだろう。
 もう一体のオーガとオークが3匹激しく盾を叩きつける。
 自分の持つ盾と魔法盾二枚を突破できる攻撃力はない。
 逆に強打で押し込んでいく。隙間から槍を穿つ。
 ストン、オーガの頭部を弓矢が貫く。
 矢とは思えないほど尖すぎるだろ!
 ヘッドショットを受けたオーガが崩れる。
 僕を狙っていたオークの一体は背後からリクの斧で一閃。
 そのままリクにもう一体を任せてオークと対峙する。
 オークの振るう剣にタイミングを合わせて強打激しく剣を弾かれ体勢が崩れる。
 喉元に螺旋突をぶち込む。下顎と首を半分失ってオークは倒れる。
 すでに戦闘は終わっている。

 「ふいーーーーーー、お疲れ」

 「ワタ兄凄いよ! ほんと強くなった!」

 「ええ、ワタル様お見事です」

 「いやー、みんなが強すぎてついていくのが精一杯だよ……」

 「いえ、ワタルさんのおかげで一対一かそれ以下の状況が出来ます、すごく助かります」

 「ははは、ありがと、役に立てて嬉しいよ」

 この戦闘で僕はレベルが上った。カレンさんはまぁ当然として、
 3人娘もなかなかレベルが上がらない。あの女神の塔が異常だったんだろう。

   ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■

  イチノセ ワタル
 Lv28→29 【優しき勇者】
 HP 890→960
 MP 610→660
 Str 98→104
 Agi 99→107
 Vit 100→106
 Dex 120→129
 Int 100→108
 Luk 73→75

 【スキル】 女神の盾 勇者の力【小】 器用Lv8New! 工夫Lv7
 観察Lv8 忍耐Lv7 神の料理人 神のマッサージ師 農畜産業の神
 言語理解 大器晩成() やりくり上手Lv9 魔力操作Lv8
 微小魔力操作Lv8 盾技Lv8 生活魔法Lv7 農業魔法Lv10 
 拷問Lv5 聖剣操作Lv6 罠 幸運Lv5

 【称号】 聖剣の聖女との絆 苦痛の申し子 ドラゴンスレイヤー
 神々の加護

    ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■

 ステータスは伸びるけどスキルはゆっくりだね。
 でも、スキルはかなり上級なんだよね、地味に。みんなが凄すぎるだけなんだよ。
 強さの割にスキルレベルが高いのは器用ってスキルが影響してる気がする。

 出会った頃のロックさんよりも大分強くなっていることは嬉しい。
 ひとつの目標だからね。
 つまり冒険者として中堅以上にはなっているということだ。
 周りが超一流の人だらけだけど僕は僕なりに成長している。

 しばらく戦闘を重ねながら順調に中層を移動する。

 「どうやらこの先に強敵がいるみたいです、その先が下層への入り口ですね、ちょっと様子を見てきます」

 標石を見ながらカレンさんが教えてくれる。

 「ワタル様緊急事態です、前方の敵と交戦しているPTがかなり押されています、
 重症2名、4名が防戦中ですが打開策は無いと思います」

 精霊を斥候にだしたカレンさんが強い調子で確認を取ってくる。

 「すぐに救援へ向かう、急ごう!」

 すぐに動き出す、【わが友よ、この地に顕現し我が力とならん】
 カレンさんが召喚魔法で白い狼を召喚して走らせる。壁を疾走して先の部屋に飛び込んでいく。

 僕達も部屋に飛び込む、

 「あっち!!」

 すぐにリクが気がつく、そしてそのまま集団へ斧を投擲する。
 一番でかいモンスターに深々と突き刺さる。サイクロプスだ。
 狼は何体かのモンスターを攻撃して注意をそのPTから剥がそうとしている。

 「助けます!! 重傷者の治療へ当たってください!」

 5本の矢を5体にヘッドショットで沈めるという神業を行いながら相手のパーティに告げるカレンさん。

 「すまない! 恩に着る!! すまない、回復剤を分けてもらえないか!?
  回復役をやられたんだ!」

 相手のリーダーと思われる人がそれに答える。

 「カイ!! あちらのPTの回復に回ってくれ! こっちは僕達でやる!!」

 「はい!!」

 「ボクが引き剥がす!!」

 闘気を纏ったリクがPTとモンスターの間に飛び込む、

 「ダイダルウェイブ!!」

 振り払われる斧から出る闘気の斬撃が渦のようにモンスターを巻き込んでいく、ズリズリと渦の中央に引きずり込まれていく、中央に巻き込まれたグリズリーは全身をズタズタにされていく、
 出来た隙間に飛び込んで盾を展開する。

 「リク! そのまま各個撃破! クウは……」

 クウの方を見ると、すでに屍累々、サイクロプスも3体ぐらい仕留めている。
 いつの間に……
 カレンさんもいつの間に相手のPTはを守るような位置で弓を放っている。
 僕らが介入してそんなに時間は経っていないのに敵の大集団がほぼ壊滅している。
 あとは守りながら殲滅だけだ、少し余裕ができたのでカイの方を見ると、
 明らかに腕と足が変な位置で曲がっている人を治療していた。いてててて・・・
 もう一人も大きな切り傷が腹部にあったんだろう、服がさけ大量の血糊がついている、
 すでに治療が終わっているようで傷はふさがっている。 
 あとはカイに任せれば大丈夫だ。僕は敵に向き直る。
 次々と倒れていくモンスターたち、すでに大型モンスターは倒され、
 最後のグリズリーもリクの斧の錆となった。



 「カイ、けが人の状態は?」

 「大丈夫です、落ち着きました。もうすぐ目を覚ますと思いますよ」

 「本当に何から何まですまない、なんとお礼を言っていいか……」

 リーダーの方と思われる人が地に手をついてお礼を言ってくる。
 綺麗な茶色の髪にシルバープレート、大型の盾。ナイトっぽい出で立ちだな。

 「カレンさんがいち早く見つけてくれたからですよ」

 バッとカレンさんの方に向き直り同じようにお礼を言っている。
 誠実な人なんだなと好感を持てた。カレンさんは領主に頼まれているからとか受け答えしている。

 ちょうど昼過ぎだったので下層への入り口前の広場でキャンプをはることにする。
 いろいろとお話伺わないとね。何が起きたのか。

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