3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

36章 初ダンジョン

 昨日の加護バトルの影響はこの都市のダンジョンに潜るすべての人へもたらされる。
 そのせいか昨日の話を聞いている冒険者に握手や感謝を受けて今は順番待ちをしている。
 順番を譲るとまで言ってくれる冒険者も居たが、初めてのダンジョン挑戦であるのでありがたく辞退させていただいた。

 「それでは女神の盾の皆様入場してください」

 ギルドの職員さんに促されてダンジョンへ続く階段を降りていく。
 こちらのPTメンバはー

 僕 盾役+牽制(剣、槍、斧) ミスリル装備、
 リク アタッカー 斧 ミスリル装備、
 カイ アタッカー・ヒーラー 槍・各種魔法・回復魔法 ミスリル装備
 クウ アタッカー・補助 剣 空間・時空魔法 ミスリル装備
 カレン アタッカー・ヒーラー 弓・精霊魔法・召喚魔法・回復魔法 ミスリル装備

 攻撃特化PTだよなぁ。専属のヒーラーが欲しくなる。一応カイは攻撃よりに戦ってもらって、
 カレンさんを回復よりに運用してもらうことで話はついている。

 人の手が加えられた木製の階段を降りて行くと内部から涼しい風が吹いてくる。
 壁や天井が薄っすらと光っているので光源がなくても十分に周囲の様子を知ることは出来る。
 ごつごつとした壁面、沢山の人が歩くからか床面はある程度均されている。
 所々に苔やシダのような植物が散見する。
 しばらくは特に何者にも会うことなく洞窟を進む。
 カレンさんの召喚魔法によって小さなネズミのような精霊が斥候として進行方向の安全を確かめている。感知系魔法が役に立たないのでこういった方法が取れる僕達のPTはかなり恵まれている。

 「前方曲がり角の先に蟻2体です」

 このように安全に進める。
 さくっと障害を排除する。曲がり角から躍り出たリクとクウの一撃で蟻たちはバラバラになる。
 倒された敵は必要な素材を剥いで端においておけば自然とダンジョンに喰われる。
 腐敗や疫病の心配は無いから安心である。
 魔物もダンジョンから生まれる。
 ダンジョンの壁から魔殻って出っ張りが出てきてそこから出てくる。
 ほんの少しタイムラグがあるのでヤバイ時は走って逃げれば助かるそうだ。

 あ、そうだ先生お二人はお留守番です。
 熟練の冒険者であるカレンさんが同行しているからと先生たちから言われた。

 『儂は半霊体だからいいのだが、洞窟ではぼんやりと光って敵の目を引いてしまう』

 「私は自分自身を守る手立てがないから、本当に危ない時に足手まといになるわ、大丈夫家で快適に過ごさせてもらうわ、こんな時間久しぶりだからちょっと楽しみなの」

 家の方々にくれぐれもお世話をお願いして任せてきた。逆に教育などをお願いした。
 話す動物は最初少し驚かれたけど、そこまでは珍しくないそうだ。
 すぐにかわいい外見も含めて人気者になった。

 話を洞窟に戻すと。
 ハッキリと言って上層は何の問題にもならなかった。
 と、いうか物足りなすぎた。あっさりと中層へ続くエリアへ辿り着いた。
 今のところ蟻が15匹、ゴブリン12匹、コボルト15匹、ワームが5匹。
 殆どが一撃だ。

 「これじゃぁ、肩慣らしにもならないですね。中層へ行きましょう。皆様でしたら何の問題もありません」

 すでに戦闘へ参加せずに見に回っていたカレンさんからも太鼓判を頂いて、そのまま中層へ進入する。

 中層も壁がぼんやりと光っており真っ暗ではないが、薄暗い。
 闇魔法の一種である暗視をかけてもらうと上層より天井が高い。
 上層は比較的分かれ道が少ないのだけど中層は一箇所から複数の道が続く、

 「迷いやすそう、ワタルはぐれないでね」

 「カレンさんこういう場合道とかってどうやって把握するの?」

 「これだけ有名なところだとたぶん、あ、あれですね」

 カレンさんの指差した方を見ると白い綺麗な石が積んである。

 「標石シルベイシといって、例えばこれはこの道は行き止まり。って意味です。」

 上の石と下の石が磁石みたいな感じでくっついていて、ちょっと力を入れて開くと中に【Ⅰ←】
 ってマークが書いてある。

 「土台は下にくっついてますので方向も同じまま維持されます。念の為に購入もしてあります」

 なるほど便利なものもあるものだ。
 ダンジョン内は深くなるほど方位磁石などもシッチャカメッチャカになるせいで、
 マッピングさえ困難になるそうだ。
 中層の地図もあるけど、実際に入ってそれを当てにしているといつの間にか自分がどっちを向いているかわからなくなったりしてしまうので、頼り切るのは危険らしい。
 ないよりはあったほうがいい、その程度に考えられている。
 まぁ、うちのPTはにはカレンさんがいるからいざとなったら精霊の囁きで帰路は把握できる。
 中層以上の探検には精霊魔法を使えるシャーマン系の職業が必要と言われている。
 レンジャー系職業の人で持っている人もいる。
 まぁ、少なくとも一人は迷わない方法を何か持っていないと中層ではまず生きのこれないと言われている。
 みんなが強すぎるから勘違いするけど、冒険者になって一月程度の人間が来れるところじゃないんだよなここは。
 少し、緩んでいた心の紐が引き締まった。

 「この先ウルフ4、コボルト4です。弓兵1いるので気をつけましょう」

 無言で頷く一同。

 「もう一度引き締めていこう。いつでも死が隣り合わせなことを忘れずに」

 通路からカイの攻撃魔法をきっかけに部屋に突入する。
 氷のつららを肩に受けた弓手、これで弓は平気だろう。
 盾を展開して最前列に立つ。槍を狼に突き立てる。
 今までよりも手応えが軽く腹部を切り裂く。ミスリル武器強いな。
 ほのかに魔力を吸われるような感覚があって仄かに光っているので魔力がめぐりやすく、
 しかも魔力で強化されるタイプの武器なんだろう。
 クウはあっという間に弓コボルトを倒した。
 リクの戦斧はすでに狼を1匹倒してコボルトも圧倒している。
 カイは槍と魔法で全体をコントロールして事故を防いでいる。
 ううん、安定している。
 攻撃特化とはいっても一応自分が戦線の維持を一番の仕事にしているからね。

 中層での初めての戦闘も危なげなかった。
 カレンさんはいざという時のために控えてもらったけど、それでも問題ない。

 「うーん、中層あたりでも準備運動って程度ですね」

 「でも、緊張する」

 「周囲にずっと気を配らないといけないのは思ったより疲れる、感知って大事だったってわかる」

 「少し思うんだけどカイへの負担が大きくない?」

 「大丈夫ですよワタルさん、最近は槍は牽制、魔法を主体に立ち回っていますから」

 なるほど、近接攻撃しながら全体を魔法でコントロールじゃあまりにカイが大変かと思ったけど、
 ちゃんと考えていてくれるんだね。

 その後も数時間中層での戦いを繰り返して今日のところは帰還することにした。



 どさっとギルドのテーブルに素材を広げる。少しギルド内がざわつく。

 「女神の盾の皆様は初めてのダンジョンでしたよね? これほどの戦果とは……」

 「カレンさんがいますから」

 なにか言いたそうなカレンさんは制しておく、これくらいでいいんだ僕は。
 周囲もカレンさんの名前を出すと落ち着きを取り戻す。

 「さすがはS級冒険者……これ程となると時間がかかります、
 明日以降また受付の方にいらしてください」

 一部の肉は確保してある。
 今日は初めてのダンジョン探索を祝って? 焼き肉だー!

 焼き肉のタレを僕が提供して、大絶賛の焼肉大会は無事に終了した。

 「カレンさん、今日を振り返って明日の目標というか課題をおねがいします」

 食後に汗を流したらブリーフィングだ。
 日々の成長には欠かせない。
 何点か指摘を受ける。明日はそこら辺の修正とパーティでの動きの確認と練度をあげる。
 下層を目指していこうという締めで、皆が意識を引き締めた。

 『最大の敵は己自身じゃ』

 今一度バイセツさんの言葉を胸に刻んで目を閉じる。
 明日は、下層攻略だ。

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