3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

32章 運命の出会い

 ダンジョン都市バルテントス。
 南の大陸サウソレス最大のダンジョン砂漠の大迷宮を有する都市。
 周囲を砂漠で囲まれているも人々の往来は絶えることなく、
 多くの冒険者によってダンジョンからの収集品の取引で、
 巨大なマーケットを形成している。
 お金の動くところに人は集まる、この土地から生み出される富を得るために、
 周囲の都市からは衣食をこの街に運びこむもの、
 その移動を警護するものなど様々な雇用が生まれる。
 仕事が有ればさらに人は集まる。こうしてこの巨大な街は街を守る城壁の中に収まりきらず今もなお巨大化し続けている。

 砂漠の大迷宮。
 上層、中層、下層、そしてまだ極限られた人間しか踏み込んだことのない最下層。
 そして最下層の一番奥の扉その向こうにダンジョンの主がいると言われている。
 この世界でダンジョンと呼ばれる迷宮はいくつもある。
 そもそもダンジョンとは、迷宮自体が生きていると言われている。
 魔物が生み出され、罠が創りだされ、人々を呼びこむ宝を創りだす。
 ダンジョンの魔力にとりつかれた冒険者は中には内部で命を落とすものもいる。ダンジョンはそういった冒険者を喰らうのだ。
 危険と隣り合わせだが大きなメリットも有る。
 それがダンジョンから生み出される魔石や魔力の込められた道具の数々だ。
 人の手ではとても創りだされないような高性能な道具は、
 運が良ければ一生遊んで暮らせる、場合によっては貴族となり子々孫々繁栄を約束されるような品まである。
 ハイリスク・ハイリターン。その博打に多くの冒険者が打って出ているのだ。
 中規模のダンジョンでも最下層まで攻略すると巨万の富を得ることが出来る。
 しかも年が変わるとダンジョンの最下層の宝も再生する。
 ダンジョン内の置かれている宝もふたつの月が重なるときに再生すると言われている。この世界で3ヶ月に一度だ。
 なお、その時にダンジョン内にいると喰われる。これは冒険者の常識だ。
 『交月の週にはダンジョンに入ることは厳しく罰せられる』という仕組みだ。

 せっかくなのでこの世界の暦について説明する。
 この世界にも一週間という単位で区切りがある。
 (ご都合主義バンザイで)月・火・水・木・金・土・日。
 日曜は休暇日となっていることが多い。
 月は15ヶ月だ。一月は28日。つまり一年は……
 計算機出すのでお待ち下さい。

 420日となる。

 この世界の成人は男が12歳5040日(13年8ヶ月)女性が14歳5880日(16年1ヶ月)。まぁ、そういうことだ。

 「なるほど」

 僕は手にとった本を置く。
 つまり3人娘はだいたい同い年なんだな。
 こっちの世界に来てそろそろ一月が経過している。
 むしろまだ一月か……
 そういや、漫画の新刊もいくつか出ているよな。
 僕は盾からタブレットを取り出す。
 最初のアレスとの契約で頂いた、
 【日本に発売している書籍を読むことが出来る神の奇跡タブレット
 盾に入っていた。
 ワタルは単行本まで待つ派だった。
 何冊かチェックしていた漫画を読んで大満足なワタルであった。
 今何をしているかというと、3人娘とカレンさんは買い出し中だ。
 たまにはゆっくりしたいということでワタルはベランダプールサイドでのんびり過ごしている。
 今は交月の週だ。
 ライス侯爵様のところへカレンさんを送り出したり(とっても喜んでくれて全員の武器まで頂いた。ミスリル製である。貴族様素敵!)
 溜まっていた漫画を読んだり、この世界の本を読んだりと、久しぶりにゆったりとした時間を過ごしている。

 今は砂漠の大迷宮について調べている。
 上層は完全に踏破されていて地図もギルドで無料で手に入る。
 上層と中層は段違いの難易度になる。
 上層では砂漠と大して変わらない砂蟻とかワームとかコボルト、ゴブリンあたりがうろついている。
 中層になるとリザードやオーガ、ストーンゴーレム、レイスなども出てくるようになる。
 下層はドラゴンやサイクロプスがうろつくまさに魔境らしい。
 ダンジョンで厄介なのはダンジョンが生きている弊害なんだろうけど、
 生体探知とか魔力探知がうまく使えなくなる。
 僕達のPTの得意技の地形変化なども出来ないのだ……
 上級のPTもあっさりと壊滅するのはそういった理由によるらしい。
 手強いのだ。
 塔での戦いとは違う、危険と隣り合わせ、命の掛かった戦いなんだ。
 そう思うと身体がぶるりと震える、
 たぶん、恐怖じゃない。
 やるぞという気持ちが起こした震えだな。
 みんなを守る。僕は盾なんだから。

 ベランダにはなんと火を起こせる場所まであったので、
 夜はバーベキュースタイルにしよう。
 久しぶりに料理をしようと思う。
 食材を買いに出ると言付けを残して市場へ出かける。
 日常生活中は盾は小さくしてブレスレットみたいになっているんだよ。

 市場に並ぶ食材は壮観だった。
 古今東西、別の大陸の食材まで、お金を積めば何でも買える。
 それがバルテントス市場の謳い文句だった。
 食材1つとってもとんでもない量、それに高品質な物も多い。
 料理人としての目利きがいろいろなものに食指が伸びる。
 ある程度まとめて買うことで値引きしてくれる店も多く、
 一体どれだけの人数を長期間養うのか? という量を買ってしまった。
 アイテムボックスをこれでもかとアピールしているようなもんだけど、
 後の祭りだ。買い物ってたのしーーーーーー!

 買い物欲をたっぷりと満たしてホクホクの帰り道、
 怪しい男に話しかけられた。スーツにシルクハットと一見するとちゃんとしているんだけど、全体を見ると物凄く怪しい。

 「そこいく冒険者様、随分羽振りがよろしいですな。お若いのに大層な量を収められるアイテムボックスもお持ちで、まだ懐具合も暖かそうで、是非我らの商品も一度見ていただきたいのでお声がけをさせて頂きました」

 しまったなぁ、自重してないから変な人に目をつけられてしまった。
 ニヤニヤとして、すごく胡散臭い……

 「いやー、今日は買いすぎてもうすっからかんですよ、それじゃ」

 さっさと立ち去ろうとしたのにぐっと腕を持たれてしまった。

 「何も今日お買い上げにならなくても結構なので是非一度見てください。さぁさぁ」

 気が付くと周りをムキムキの男の人に囲まれていた。
 油断した……僕は諦めてその怪しい男についていく。
 何本か路地を抜けた先はいかにもな雰囲気を出している館だった。

 「あ、あのやっぱり僕はここでー……」

 あまりの怪しさに逃げ出したくなる、その時うっすらと女の子が泣いているような声が聞こえた。ちょうど館の扉が開いた隙間から聞こえた。

 「チッ……」

 怪しい男が舌打ちをした、顔を見るとすぐにまた怪しい笑顔に戻っていた。

 「ささ、どうぞどうぞ」

 屋敷に入り階段を降りると、牢屋が並んでいた。

 「こ、これは……」

 「奴隷でございます」

 怪しい男は奴隷商だった。
 牢屋の中にいる人達はみな奴隷だ。獣人、ドワーフ、人間、いろいろな奴隷が男女ともにいた。

 「い、いやいやいや奴隷とかいりませんよ。なんでこんな若造に奴隷なんて!?」

 「貴方様方はきっとこれから巨万の富を得られます。
 これは私の先行投資なのですよ。顔つなぎ、とでもいいましょうか。
 商人としての勘が、貴方とつながりを持てと言っているのです」

 「もっと意味がわからないですよ!!」

 「S級冒険者、カレン=グリーンフィル。彼女を隷属させているのは貴方ですよね?」

 じろりと目を見つめられる。妙な迫力がある。

 「な、何のことですか? 僕はカレンさんのパーティメンバーの一人に過ぎません!」

 「素晴らしい、アレほどの心酔させるとは、しかも相手は超一流の冒険者、しかもエルフ。貴方は天才なんですよ私に言わせると。私はね、感動したんですよ、貴方の持つ才能に。貴方に預けた奴隷はどのような目をするのか、それが見たいのですよ」

 話を聞いちゃくれない……あと、絶対立ってるよねあんた、
 もー、なんで僕の周りにはこういうのが集まるの……

 「な、なんと言われようと奴隷なんて買いませんよ、そんな非人道的なことは出来ません!」

 「ヒジンドウテキというのが何かはわかりませんが、貴方が奴隷を買うと、奴隷は救われると思いますよ?」

 「救われる?」

 にやりと男が笑う。

 「ええ、ええ。ここにいる奴隷は売れなければ開拓用に使い潰されて、
 まぁ、死ぬでしょう。過酷な労働を強いられて、満足な食事も与えられず、
 素手で木を倒し、土を耕し、そしてゴミのように使い古されるでしょう。
 売れたとして売れた先はどんな家かはわかりません。
 それこそ欲望のはけ口として使われることもあるでしょう、
 口に出せないような酷いことで興奮をなさる方もいらっしゃいます。
 死よりもつらい日々が待っているかもしれません」

 いつの間にか牢屋も静かになっている。

 「しかし!! 貴方は違う。貴方は奴隷に苦しみなど与えない、
 貴方は奴隷を満たすでしょう。本当の意味で身体を、魂を満たすでしょう。
 わかるんです、貴方はそういう人だと。そして満たされた奴隷は貴方を心の底から、魂をかけて崇拝するのです。私にはわかるのです、その姿が見えるのです!!!」

 「そ、そんなはず「そんなはずはない!? そうかもしれません。しかし、
 助かるんですよ。酷い目にも合わない、非業の死の訪れない。それは貴方が一番わかっていますよね?」

 否定できなかった。
 確かに、もし奴隷を手に入れたらどうするか。
 出来る限り普通の生活を送ってもらうようにするだろう。
 望めば奴隷から開放してあげてもいい。
 さっき聞いたような過酷な環境にするようなことはない。
 それは、確かに間違いない。
 救う。そう、奴隷の人生を救うことが出来るんだ。
 冒険者として戦いに散るのとは違う。奴隷としてすり減ってゴミのように死んでいく命を救える。この手で……

 「どうなさいますか? 見ないふりをして帰るのならもう止めません。
 後ろの扉からお帰りください。ただ! もし救いたいならお選びください!
 貴方が望むなら取り置きもしますよ! 貴方だけが救えるのです!!
 さぁ!! どうしますか!! ワタル様!!」

 お願いします! 私を私を買ってください!
 俺を使ってくれ! なんでもする!!
 わ、私は字が読めます! 計算もできます!!
 ママー、ママー……

 一斉に奴隷たちがアピールをしてくる。
 もう、見捨てるなんて出来ない。

 「一度、相談をさせてください、仲間に……」

 「ええ、ええ、そうでしょう。どうぞお話くださいお待ちしております。
 こちらの魔道具をお渡ししておきます。この突起を押せば我らの仲間がお迎えにあがります。必ず戻ってきてくれると信じています。貴方は必ず!」

 気がついたらホテルの前にいた。
 ふらつく足取りで部屋に戻るとみんなが居た。

 「ワタルどうしたの!?」

 「ワタル様体調が優れないのですか? 酷い顔色です。【水の精霊ウィンディーネ彼の者の疲れを癒やし給え】」

 温かい空気に包まれ心地よい、でも、身体の問題じゃないんだ。

 「ごめん、みんなに話があるんだ……」

 僕は今日あったことと、自分の思いを伝えた。
 出来ることなら奴隷を救いたい、出来るだけ多くの奴隷を……
 話しているうちにボロボロと泣いてしまった……

 「ワタ兄考えすぎ、助けたいなら助ければいい」

 「うん、救おう! 出来ることはやろうよ、やらないで後悔するよりやって後悔しろってとーちゃんも言ってた」

 「ええ、立派な気持ちだと思います。ワタルさんの優しさをその方々にも教えてあげましょう」

 「そうなるとホテル暮らしはまずいですね、拠点を持ちましょうかこの地に、
 たぶんダンジョン攻略もそれなりの期間かかりますから、今から領主に相談してみます」

 「み、みんな、ありがとう……」

 そこからは早かった。
 ホテルには重ね重ねのお礼と、カレンさんの銘を打った剣をさし上げた。
 なんかカレンさんを利用しているみたいで心苦しいけど、
 口に出すといろいろとめんどくさいので心のなかで感謝しておいた。

 すぐに領主である侯爵様は空いているそれなりに大きな土地を探してすぐに手続きをするよう働きかけてくれた。
 場所こそ西南の一般地区だがかなりの広さの土地を手に入れた、もともと数軒の家があったんだけど同じPTのメンバーがダンジョンから帰らずに手付かずになっていたのを更地にしたばかりという侯爵預かりの土地だった。
 カレンさんパワーで格安で譲って頂いてしまった。
 大体1500㎡くらいかな?
 この辺りの相場でこの広さだと5000万ゼニーくらいなところを2000万ゼニーで買えた。
 周囲を囲う壁や建物も、カイの魔法と僕の土壌、地殻操作で作る。
 現代で言うところのワンルームのアパートみたいな作りにする。
 光を取り入れる窓も珪砂を抽出してカイの合成魔法で作る。土壌操作万能説。
 流石にちゃんと暮らす家はきちんと建ててもらおう。
 取り敢えずしばらく僕達が過ごすところと奴隷の方々に住んでもらうところを魔法で作り上げた。
 その後は手分けして最低限の生活道具を買い付ける。
 大量に購入したので運送設置はやってくれたそうだ。

 僕は魔道具を使い、奴隷商のところへ行く。

 「お帰りなさいませ、それで、どうなりました?」

 「全員だ」

 「ほぅ……」

 「今すぐには無理かもしれないけど、全員救う!」

 「クックック……素晴らしい! 素晴らしいですぞ!! まさかそこまでの懐をお持ちとは!! 素晴らしい!! 神よ! この出会いに感謝いたします!!」

 その後残っているギルドに預けた金も全ておろして手持ちのゼニーで買えるだけの奴隷を購入した。
 ここには居ない奴隷もいずれ救うから集めるように奴隷商に伝えた。

 手続きは、大変だった。
 僕の血を使うんだけど、件数が多くて結構さくっと指を切って行った。
 なんども証文に押すから痛い。
 これだけの大商いだ、物凄く安くしてもらったそうだ。

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 以下購入した奴隷一覧(外見的な人間での年齢適当です。謎のアルファベット付き)
 エルフ 女性 168歳 (16歳AA) 1500万 ディード
     男性 319歳 (30歳) 200万 ケイナス
 ドワーフ 女性 64歳 (25歳G) 180万 バレッタ
      男性 78歳 (28歳) 180万 ギム
 獣人 オオカミ族 男性 24歳 (同) 100万 ラルフ
          女性 20歳B (同) 200万 ニーサ
    犬族    女性 22歳H (同) 150万 リザ
          男性 6歳  (同) 320万 ロポム
    ネコ族   女性 18歳C (同) 180万 シーラ
          女性 10歳 (同) 150万 ケイナ
          女性 6歳  (同) 320万 ノーラ
 人間       男性 20歳     180万 ワーレン
          男性 10歳     250万 ファーレ
          女性 24歳D     100万 ミーシャ
          女性 20歳E     150万 ナッツ
          女性 18歳B     200万 マリーン
          女性 16歳A     240万 サラ
          女性 14歳B     280万 コハル
          女性 8歳      360万 ステファニー
          女性 6歳      500万 ローザ

 ※魔力が強い種族は成長して身体が出来上がると老化のスピードが落ちる傾向があります。人間にしてもそうです。

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 貯金の大部分を使用した。来月になればまたある程度収入は入るけど。
 金額とか聞いている時に人の業に吐き気を催した。
 偽善者な自分にも嫌気がした。
 それでも奴隷の人達の嬉しそうに何度もお礼を言われるのは、
 救われるような気がした。
 奴隷の証は首輪だ、もし逃げたり主に害をなそうとすると、
 締め付ける。それでも辞めないと物理的に首になる。
 この人数をゾロゾロ連れて行くと目立ちすぎるので馬車で運んでくれるそうだ。うちの店はアフターサービスも万全ですから。と店主は言った。
 今更だけど店主の名前はパルゾイって言うらしい。
 今後も奴隷を集めて連絡をしてくれるそうだ。



 「す、凄い人数だね」

 「部屋は足りますね」

 「生活必需品はきちんと用意した。大丈夫」

 流石に目の前にこの人数がいるとみんなも少し驚いている。

 「エルフの奴隷ですか、別の部族でしょうが、
 ワタル様に救われて幸運ですね」

 『突発的に突っ走るのはウォルと一緒じゃな』

 「あの子も良く悩んでたわね、ワタル君も苦労するわね」

 奴隷たちは口をパカーンと開けている。
 そりゃそうだ、一人一室。すべての部屋に生活用の竈、照明設備、
 それなりのベット、自由に使える井戸、水場。
 いきなりそれを、はいどうぞ。と与えられたのだ。

 「申し訳ないのですが小さい子供達は年上の方が面倒を見ていただけないでしょうか?」

 いつまでも突っ立ってても仕方ないので提案する。
 その発言がきっかけで全員ズサーーーーって感じで土下座する。

 「「「「我ら一同身命をとしてワタル様のために働きます!!」」」」

 なに、練習したの君たち!?

 「えーっと、あんまりかしこまらないでね、僕がしたくて勝手にしたんだし、
 もしかしたらみんなに苦労させちゃうかもしれないから……」

 一応生活のあてはある。
 裏庭を農地にしてのバイアングの実の生産だ。
 普通のバイアングの実でも高級品だが、僕のは特別製だ。
 カレンさん曰く、いくら出しても欲しい人は山ほどいるそうだ。
 さらに、僕には農業チーがある。
 試しにちょっと5メートル四方の畑を作る。
 実を取り出してちょいちょいっと植える。
 ちょちょいっと発育操作をする。
 あ~ら不思議、今植えたバイアングの実が100倍になりました。
 この調子である。
 流石にこれだと仕事にならないから、後は普通に世話してもらおう。
 適度に畑を作る。最初の苗から実を回収して種を植えてもらおう。
 振り返るとさらに奴隷さんたちは口をパッカーンと開けていた。

 「あ、みなさん実を取って残りの畑に植えといてください食事の用意しますんで、あ、あと服も用意しないとね買い出しも頼もうかな」

 かなりお金は使ったけど、それでもまだ百万位は残っている。

 敷地内の適当なところに野外バーベキュー場みたいな設備を作る。
 地殻操作使うと井戸なんかも簡単に作れる。
 雨の日のために4本の柱で支える形で上も塞いでおく。
 作り付けになるけどテーブルと椅子というかベンチも設置する。
 ここも同じように支えと屋根だけつける、
 そのうちちゃんと母屋に食堂を作るまでのつなぎだからね。

 もともとの予定だったバーベキューだ。
 食材は大量に買ってあった。
 そもそもこの買い出しでパルゾイさんに目をつけられてしまった。
 まぁ、最初からあの人は目をつけてたみたいだけど。
 今日は歓迎会も兼ねて腕によりをかけるぞ!
 慌てて手伝おうとする女性陣に、今日は僕に作らせて、命令だよ。って
 休んでてもらう。汗を流したり着替えたりしておいでって伝えたら泣かれた。
 ついでに用意し始めたらあまりの手際に口パッカーン再びになっていた。



 「なんじゃこりゃーーーーーーー!!」

 一口食べてドワーフのギムさんが雄叫びを上げた。

 「こ、こんな美味しいものこの世界にあるのか!?」
 「おいしいねー」「ねー」
 「これも、これも、これも……」

 オオカミ族のラルフさんも串焼きにむしゃぶりついている。
 ちょっと張り切りすぎたかなって思ったけど。
 大丈夫そうだね。みんなモリモリと食べてくれている。
 カレンさんもディードさんやケイナスさんと話してくれている。
 あの病気がなければほんとにしっかりとした素晴らしい人なんだよね、
 お世話になります。感謝を込めて見つめてると、
 目があってぐにゃりと顔がゆがむ。これがなければねぇ……いや、感謝感謝。

 「食べながらでいいですけどきいてください。
 一応集団生活をするので簡単な決まり事だけ決めます」

 僕が話し始めるとみんな必死に聞いてくれる。緊張するなぁ。

 「まず、種族が違えどみんな家族なので助け合っていきましょう。
 小さい子は年長者が面倒を見てあげてください、
 教育のために必要な物も言ってください提供します。
 皆さん自身も農作業とか仕事をしてくれれば、
 空いた時間はやりたいことを見つけてくれて構わないです。」

 ざわざわしだす。カレンさんがんっんと咳づくと静かになる。

 「しばらく資金をためたら希望する人は奴隷から解放もします。
 ただ、読み書きやその後の生活に必要な技術は手に入れてからにしてください」

 さらにざわつく、仕方ないね。カレンさんが怒ろうとするけど手で抑える。

 「ここで暮らして仕事をしてもらったりもしますが、奴隷だからと卑屈にならずに人として生活してください。困ったことが有れば僕か、
 僕の仲間たちに相談してください。みんな家族みたいなものです、
 協力していきましょう」

 感極まって泣き出す人まで出てしまった、
 そしてまた一同土下座である。

 年齢的に代表っぽくなったケイナスさんが一歩前に出て跪く。

 「この身体の一片残らず、魂の一欠片残さずワタル様のものでございます。
 どうか我らの忠信をお受けください」

 「あああ……もう、そういうのは程々で……」

 柱の陰からパルゾイさんがハァハァ言いながら覗いていたことには、
 クウとカレンさんしか気がついていなかった。


 

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