3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

9章 チュートリアルは続くよどこまでも

 「なんか昨日よりも身体が軽い気がする」

 『それが馴染むって奴じゃな。レベルアップによる能力がほんとに発揮するのは身体が馴染んでからじゃ』

 「一つくらいのレベルアップなら戦っているうちに馴染んでくるんだけどね」

 「確かに昨日より斧が軽い」

 リクちゃんが鉄の斧をぶんぶん振り回している。ぎ、ギリギリまだ見えるよ!
 みんなそれぞれ武器を動かして調子を確かめている。
 14歳の女の子のすることじゃないよね。

 朝ごはんはみんなパンとスープで倹約です。
 ちょっとお金が危ない。

 「次に武器出たら銅の武器は売ります。みんな頑張って武器をドロップしてくれ!」

 「「「はーい」」」

 Luk的に僕は望み薄だからな。グスン

 朝食も済ませ準備運動もして2階攻略へと進撃である。
 扉を開けると敵が4人、今までと違うのは集団でいる。
 バラけてないのだ、見た目はゴブリンに似てるけど身長も大きいし、
 剣と盾を装備している。

 『ふむ、これからが本番というところじゃな、それぞれの位置を把握して立ちまわるんじゃ』

 「不意打ちを受けないようにみんなが立ち位置を考えてね」

 先生のアドバイスに従う。

 「横一列になれば横からの攻撃を受けにくいと思う」

 「わかった!」

 「可能なら包み込むように囲みましょう」

 「りょ~か~い」

 最低でも一対一になるように横一文字に並んで敵に近づいていく、
 敵もこちらの意図に気がついて横に並ぶ、これで多対一になるような状況は作られにくくなる。
 周りを見ながらの戦闘はさらに難易度が上がる。
 いつ横槍を入れられないか気を使う必要がある。
 実力的に自分が抑えるべき敵が他の人のところに行ってしまうのが怖い。
 槍とかで距離を持って戦うんじゃなくて斧で近接戦に持ち込むか。
 相手も盾を持っているので迂闊な攻撃はピンチを呼ぶ。
 自分が盾を中心に立ち回っていたのでそこは十分気をつける。
 剣撃はさらに鋭く早いけど落ち着いて盾で受ける。
 盾のスキルが上がって覚えた盾突撃を試す。

 ドガン

 距離が近いとこから使ったのであまり威力は出なかった、
 盾で突っ込む。わかりやすい。
 相手も結構な威力でふらついてバランスを崩している、
 すぐに槍に切り替えてその隙をつく。
 敵との距離が離れるからこの技は槍への連携がよさそう。
 時々周囲を確認することも忘れない、
 となりのリクが敵を押し込んで突出してる。

 「リクちゃん! 前に出過ぎると横槍食らうからちょっと下がったほうがいい!」

 リクちゃんも周囲を見て少し下がる。
 うーん、パーティプレイって感じでいいね。
 カイちゃんは槍と魔法で敵を圧倒してるな、
 クウちゃんは……美しいな。あれが天才ってやつか……

 ヒュン

 ギリギリのところに剣がかすめていく、
 あぶな!
 見とれていると危ない、周囲の確認は素早く。
 クウちゃんの剣技もすごかったけど、すごかったな、あれは、うん。
 動く度に、動いてた。

 いかんいかん集中集中。
 攻撃を盾で崩して攻撃、身体もよく動く、武器も盾も昨日より軽い、
 これが成長ってやつだな。
 その後クウちゃんカイちゃんが敵を倒し少し遅れてリクちゃんも倒す。
 助けるか聞かれたけどもう少し鍛錬したいから一人で倒させてとわがままを言った。
 みんなも勉強させてもらうとか持ち上げてくる、僕の戦いなんてみんなに比べたら稚拙だろうから恥ずかしいけど、年長者として意地を見せたい。
 盾による武器の崩しもだいぶこなれてきた、
 相手の盾を強打で身体を開かせてそこに攻撃、
 なんどかやると敵も対応してくるからそれをフェイントに盾で殴る。
 そういうパターンを見せると相手は迷うから動きの精細を欠いてくる。
 チクチクと地味な攻撃を繰り返して、ハイゴブリンはダンジョンへ吸収されていった。

 『お主は思ったよりも器用じゃな、戦いの心理もわかっていると見える』

 「元の世界で格闘ゲームってのがあって結構好きだったので」

 「心理戦は場数が必要だからそういうので磨いたのね」

 また僕だけレベルが上った。いくらなんでもテンポが良すぎない?

     ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■

  イチノセ ワタル
 Lv6→7 【初級冒険者】
 HP 174→182
 MP 54→58
 Str 15→17
 Agi 13→14
 Vit 14→16
 Int 15→17
 Luk 13→14

 【スキル】 女神の盾 勇者の卵 器用Lv2 観察Lv3 神の料理人
 言語理解 大器晩成() 魔力操作Lv2 微小魔力操作Lv2 
 盾技Lv2New!

     ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■

 気持ち成長が早くなってきている気がする、まだこのくらいじゃこんなもんなんだろうけど。新しいスキルはウキウキするね、早く試したい。
 ま、名前でネタバレなんだけどね盾巨大化だもん。
 使うと盾が大きくなった。念じてやるよりごく短時間に大きくなる。
 40cmくらいの円形の盾が普段の姿なんだけど、スキルを使うと一瞬で1mくらいのスクエアシールドになる。その状態でもう一回スキルを使うと全身を覆えるぐらいの大盾になる。3回めは使えなかった。
 念じての変形は消費も激しいし隙も大きい。
 にゅいーんってぐらいのスピードで変化できるように実戦でしたけどね。
 盾を剣みたいに使うのは念じて変えるしか無い。
 ん、まてよ。このスキル攻撃にも使えるんじゃ? 試してみよう。

 次の扉の先は予想通りコボルトさんだった、大きくなってたくましくなっていた。武器は細身の剣、レイピアっぽい。盾はなし。
 作戦はさっきと同じ、戦闘開始だ!

 ここで僕はさっき考えたことを実行してみる。
 相手はスピードタイプ少し距離があるところから一気に接近しながら攻撃してくる、
 落ち着いて剣で攻撃を払い、盾を相手に突きつけて盾巨大化を連続で使う。

 バガン!

 いい音をして巨大化した盾が敵を弾き飛ばす。
 いきなり盾が巨大化するなんて思っていない相手にとっては不意打ちになるね。うまくいった。うまく行き過ぎた、敵さん左目が酷いことに……
 片目で距離感が掴めなくなったコボルトさんは自慢のスピードを活かせなくなった、レイピアで牽制されるとやりづらいんだなってのもわかった。
 距離感がつかめない相手なら槍で距離をとって戦う。
 槍で牽制をフェイントにもう一度一気に懐へ入って顎へ巨大化パンチを食らわせてコボルトは星になった。
 初めてレベルが上がらなかった。

 「スキルをああいう使い方するのね、ワタルくん面白いわね」

 『あれは初見じゃまず避けられんな、盾のスキル自体もレアじゃしな』

 「痛そうだねアレ」

 「顔がすごい腫れ方してましたね……」

 「可哀想だった」

 僕が悪者みたい、たしかにお岩さんみたいなコボルトは痛々しかった。
 なんにせよ全員無事に勝利した。

 「ところでさ、次は少しまとまって戦ってみない?」

 「いいよー」

 「リクちゃんと僕が前衛で、クウちゃんが遊撃的な中衛、カイちゃんが後衛な感じで」

 「ワタ兄、もう ちゃん はいらない。呼び捨てでいい」

 「そうだよ、リクでいい!」

 「わかった、リク、カイ、クウ、次はそういう手はずでやってみよう!」

 「「「おーー!」」」

 もう説明しなくてもわかるよね。オークだよ、でもね、太ってないの。
 ムキムキなの。超怖い。武器も青龍刀、でかいの。超怖い。

 最初から盾巨大化を一度使って戦い始める。
 前衛は敵の攻撃を後衛に流さないようにしっかりと戦線を維持するのが大事。
 攻撃は余裕がアレばする。何よりもとどまることに意識を置く。
 そうすることで中衛や後衛が攻撃に集中できる。

 「ん?」

 なんか、変だな。僕こんな知識持ってたかな?
 そんなことをちょっと考えたけど、オークの猛攻で集中を余儀なくされる。
 この刀反っている刀身を利用してなぎ払う感じで切ってくるんだけど、
 捌きにくい。崩しにくい。非常に厄介。

 「ワタル! ちょっと二人の攻撃捌くのはきつい!」

 確かに斧との相性は悪いな。

 「作戦変更だ! クウと交代してくれ!」

 「わかった!」「は~い!」

 素早くリクとクウが入れ替わる、クウは見事に2体の攻撃を捌いている。
 リクが横から一体に攻撃を喰らわせる。
 カイは後ろから槍と魔法で攻撃をする。槍に魔法をまとわせたりしてる、なにそれかっこいい。
 クウは二体を相手にしてなお敵に攻撃まで加えてる。
 僕は防戦一方です。二体からの攻撃を防ぐって本当に難しい。
 開けた場所だとこのパーティの力量から一対一を創りだして戦ったほうがいいな。
 細い場所とか地形を選べばもう少し有効な手が取れるんだけどね。
 って、また。僕そんなこと知ってたっけ?

 「一体倒した、次行くね!」

 「任せた!」

 「こっちも一体終わりました。ワタルさん援護します!」

 二対一だと完全に圧倒するね。
 その後はあっという間に殲滅させた。

 全員仲良くレベルアップした。

 「バイセツさん、なんか自分の知識になかったような戦略? 戦術? 
 的なものが思いつくんですけど……寝てる間になんかしました?」

 『しとらんわい! あー、たぶんあやつの記憶じゃないかな?』

 「ウォルにはいろんなことを教えましたから、
 ちゃんと生かさないで突っ込んでおしまいにすることだらけでしたけど……」

 「あー、なるほど。やっと勇者の力が生かされてくるんですね!」

 『案外あやつよりもきちんとそういうことを考えて実行するから強くなるかもしれんぞ』

 「ほんとにウォルは人の話を聞きませんでしたからね……」

 苦労なさったんですね。

     ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■

  イチノセ ワタル
 Lv7→8 【初級冒険者】
 HP 182→188
 MP 58→61
 Str 17→18
 Agi 14→16
 Vit 16→18
 Int 17→19
 Luk 14

 【スキル】 女神の盾 勇者の卵 器用Lv3New! 観察Lv3 忍耐Lv1New!
 神の料理人 言語理解 大器晩成() 魔力操作Lv2 微小魔力操作Lv2 
 盾技Lv2 生活魔法New!

 リク
 Lv4→5 【戦斧の戦士】New!
 HP 600→810
 MP 110→150
 Str 52→70
 Agi 46→58
 Vit 41→58
 Int 27→35
 Luk 30→40

 【スキル】 聖斧の力 頑丈Lv2 根性Lv2New! 魔力操作Lv3New! 
 斧技Lv3New! 見切りLv3New! 忍耐Lv5 身体強化魔法New!
 溜め攻撃Lv2 自己活性Lv3New! 鑑定 マジックボックス【極大】

 【称号】決意し者 

 カイ
 Lv4→5 【魔槍の戦士】New!
 HP 380→440
 MP 500→700
 Str 26→38
 Agi 40→55
 Vit 28→36
 Int 60→82
 Luk 39→48

 スキル 聖槍の力 聡明Lv1 忍耐Lv5New! 天賦の魔力 
 魔力操作Lv4New! 魔力増幅Lv4New! 魔装武具New!
 回復魔法Lv3New!  水魔法Lv2 火魔法Lv2New!
 風魔法Lv3New! 土魔法Lv2New! 槍術Lv3New! 鑑定 マジックボックス【大】

 【称号】決意し者

 クウ
 Lv4→5 【天才剣士】
 HP 740→860
 MP 540→620
 Str 41→55
 Agi 60→84
 Vit 36→48
 Int 56→70
 Luk 95→110

 スキル 聖剣の力 天才 直感Lv3New! 洞察Lv2New! 忍耐Lv5New! 
 魔力操作Lv3New! 環境魔力利用Lv3New! 剣技Lv5New! 見切りLv4New! 
 光魔法Lv3New! 闇魔法Lv2New! 空間魔法Lv2 時空魔法Lv2New! センス○ 
 鑑定 マジックボックス【無限】

 【称号】決意し者
     ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■

 キタ!お約束便利魔法キタ!!しかも最初から【浄化】だ!
 嬉しい!
 しかし、ステータスの伸びの差がすさまじいね。
 この世界の普通の人ってどんなもんなんだろ、この塔終わったら冒険者ギルドで一度聞いてみるか。

 「あの青竜刀って戦いにくい」

 リクが不満そうに告げる、

 『ああいう刀は斬撃を横から叩いてやるのじゃ、
 薄いからリクの一撃ならかなり武器にダメージを与えられるじゃろ』

 「潜り込まれると連続で攻撃されやすいから少し距離を離して一撃離脱も有効ね」

 「魔法をもっと有効に使わないと……種類が多くて……」

 「そうね、見てると同じ魔法系列だし特徴を教えてあげるわ」

 「早く剣出ないかな、次出たら両手に持ってみたい。たぶん、出来る」

 『右手と左手で持ち帰るだけでも相手からすると厄介じゃ、
 クウは左右を物ともしないから今のうちからでもそういう練習をするといい』


 みんなが高いレベルのお話をしている。
 置いてけぼり感が半端ない。
 でも、盾面白いね。実はすんごい楽しい。
 武器もいろいろ交換して試す作業は性に合ってる気がする。
 僕飽きっぽいからね。

 次の部屋に入る前、みんなが少し緊張していた。
 そうだね、スライムに痛い目見させられたからね。トラウマだね。

 みんなの予想に反して一階のボスの鎧達だった。
 数が5人に増えていた。両手持ちの幅広い剣だ。
 誰かが二人受け持たないといけない。

 「クウ、出来る?」

 「頑張る!」

 このやり取りだけで自分のやるべきことをわかってくれる。
 頼もしい。年下の女の子だけど。

 「確実に一人が一体引きつけよう!」

 クウは素早く2体に突っかけてタゲを奪う。
 天性のものだな位置取りも全体が見れて余計な邪魔が入りにくい位置を取る。
 カイとリクもきちんと一体を引きつけている。

 「お前の相手は僕だぞっと!」

 素早く突撃と強打で他のみんなと距離を取る。両手持ちの大剣に標準サイズだと心もとない、
 一回巨大化を使う。
 まともに受けると強い衝撃を受けて次の動きがうまく行かない。
 正面から受けずにあくまでも避けるのをしっかりと、

 結果:攻撃する暇がありません。

 強いよこの敵。
 槍で突いても僕の力じゃ効かない。
 剣も同じ、斧も同じ。
 これはどうあがいても僕じゃ倒せない。
 攻撃を防いで時間稼ぎです。盾も大型にして防御に徹してます。

 「おまたせ!」

 そうこうしてるうちに自分の敵をやっつけたリクがクウと合流して、
 カイも合流して全部片付けて援軍に来てくれました。パーティっていいね!
 四対一だと瞬殺。パーティっていいね!

 「ありがとー、助かったよ!」

 「ワタルは水臭いぞ、仲間だろ!」

 『それにしてもカイの状況判断は良かったな、
 すでに二対一になっていたところに助けに行って三対一を作る。
 二対一を二箇所に作るより確実じゃな。』

 「前提として一対一が無理なく成り立っているってのが必要なのは忘れないでね」

 先生たちのありがたいお言葉をしっかりと聞く。
 ありがたいことに3人とも宝箱が出てくれた、でも鉄シリーズだった。
 前の斧と槍を僕が使わせてもらって、クウは二刀流を試すことになった。
 これで銅シリーズを売れる。良かった。お金が厳しくてね。

 『それにしてもこのダンジョンは非常によく出来ておる、
 いろいろな武器の対応を学ばせ戦況判断を学ばせ、素晴らしいな』

 「今後は新人育成に有効に使われるといいわね」

 たしかにたしかにヴェルダンディ様に感謝です。
 そして今回はレベルアップです。やったぜ!

     ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■

  イチノセ ワタル
 Lv8→9 【初級冒険者】
 HP 188→196
 MP 61→66
 Str 18→20
 Agi 16→17
 Vit 18→20
 Int 19→20
 Luk 14→15 

 【スキル】 女神の盾 勇者の卵 器用Lv3 観察Lv4New! 忍耐Lv1
 神の料理人 言語理解 大器晩成() 魔力操作Lv2 微小魔力操作Lv2 
 盾技Lv2 生活魔法

     ■   ■   ■   ■   ■   ■   ■

 「もう、僕の攻撃だと敵に通用しないんだよなぁ……」

 「武器が強くなれば行けるんじゃない?」

 「戦った感じだと銅の武器が鉄に変わって大きく変化があるとは思えないんだよね残念ながら……」

 『鍛えていくしか無いじゃろうな、お主は成長は早いからそのうち有効なスキルでも出るじゃろ、
 10レベルごとに強めのスキルが出ることも多いからの』

 「ワタルくんはいっそ防御に徹するって選択肢もあるし。
 今はしっかりと力をつけていきましょう」

 おお、10レベルになるのが楽しみだ!
 次はたぶんこの階層のボスだな。
 気合を入れていこう。

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