3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

4章 オアシスの街サラフ

 私はいつもの様に教会で祈りを捧げる。
 この世界バスタールを見守ってくださる偉大なる女神ヴェルダンディ様へ。
 日々の祈りは欠かすことの出来ないお勤め。
 毎日を平穏に暮らすことが出来るのも女神様の加護のおかげ。
 この厳しい砂漠に恵みのオアシスを与えてくださり、
 この街、サラスの教会で一日無事に過ごせることを祈る。

 この行為は毎日繰り返され、いつもと同じように終わるはずだった。
 しかし、今日この日だけは違った。

 【バスタールの地に生きる愛すべき人の民よ、
 悪しき存在が遥か北の地に生まれた。
 悪しき存在は圧倒的な力を持つ。
 我が力を持ってしても人の集まるところを守るので精一杯だ。
 人の子らよ、加護の下を離れるな、
 我が試練を乗り越えし勇者が悪しき存在を倒すその日まで。

 あー、つかれ、あ、まだつなが】

 奇跡を体感した。
 神の声を聞いたのだ。
 そして、台座に神々しい光が集まり、彼の者たちが現れたのだ。
 一人の青年、白き狼、黄金のフェレック、そして3人の少女。


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 「イテテテテ……いきなりだもんなー……」

 キョロキョロと辺りを見渡す。目の前で目を見開いているシスターっぽい人、
 周囲も教会っぽいね、てか。暑い。
 バイセツさんもメディアスさんもいるし、3人も無事だね。
 そんなこと考えると3人も順番に目を覚まし始めた。

 「……ここは……?」

 「夢のなかで神様が言っていた塔?」

 「セイちゃん……絶対に助けてあげる!」

 話を聞くとあの女神様3人には夢のなかできちっと説明をしてくれていたらしい。ずるいぞ。

 「女神の使い様!!」

 んでこの人はさっきから僕たちを土下座スタイルで崇み続けている。

 「も、もういいですよ! 頭を上げてください!」

 「ははーーーー!!」

 だめだこりゃ、その後なんとかまともに話してもらえるようになるのに30分ぐらいかかった。

 この残念なシスターはサラスの街の教会を管理しているラスタさん。
 親がもともと教会の管理をしていたんだけど今は王都に呼ばれてお留守番中らしい。

 「まだまだ若輩であります!」

 軍隊か?
 ちょっと残念だけど、多分同い年ぐらいで愛嬌のあるかわいい顔立ちをしてる。綺麗というより可愛い感じ。ちょっと好み。
 背は150くらいかな? シスター法衣がコスプレっぽく見えるね幼くて。

 「お兄さんが勇者さんなんだよね?」

 「えっと、君はリクちゃんだっけ? 一応そうだね。ワタル、イチノセ ワタルって言います。」

 「私達を守ってくれてありがとうございます。」

 「ありがと」

 「エルンの中に私達を治してくれた人がいるんだよね?」

 「ええ、エルンちゃんはちゃんと私と一緒にいるわよ。3人のこと本当に心配してたのよ」

 中身はメディアスさんだけど3人は代わる代わる抱きしめていた。リクちゃんはちょっと涙目だ。

 「申し訳ないんだけど、夢で見た話ってのを教えてくれない? 
 僕達にはあんまり説明してくれなかったんだ女神様」

 「あ、はい。」

 3人を代表してカイちゃんが説明してくれた。

 セイちゃんがさらわれたこと、
 さらったのは魔神であり、すごく強いこと、
 魔神は最果ての地、黒龍の巣に結界をはって閉じこもっていること、
 セイちゃんが魔神に乗っ取られるかもしれない、ただ一度ラビートと同化したことと、セイちゃんの聖女としての力に対抗して乗っ取るのは女神の見立てで10年後にはなるだろうこと、
 魔神はこれから悪い部下をいっぱい作って人を襲い、その恐怖とかで力をつけていくだろうってこと、
 私達3人がお兄ちゃんと協力してその魔神を倒さないといけないこと、
 そのための基本的な力をつけるためにこのオアシスのそばに作った塔のダンジョンを攻略しないといけないこと、
 3本の塔を順番に攻略していき、最後に真ん中の塔を攻略するころには魔神との戦いに耐えられる力を得ることが出来るだろうということだった。

 「うーん、完全にRPGゲームだな……」

 僕はそうつぶやいたけど、だれも理解できなかった。そりゃそうか。

 「とりあえず、その塔まで行ってみようか。ラスタさん塔ってどこにあるの?」

 「は! 昨日までは何もなかったオアシス北の砂漠に突如塔が現れたと先程から騒がしくなっております!」

 もう突っ込まないぞ。




 「たけーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 「高いね~」

 3本の塔に囲まれて中央の塔がそびえ立つ。
 3本の塔にはそれぞれ剣と槍と斧をかたどった扉がある。
 中央の塔にはその3つの印が刻み込まれた巨大な扉があった。

 「さて、定石通り塔攻略の準備と作戦を組みますか。」

 「そうね、策はきちんと組んでいったほうがいいわ、助けてあげたいとこだけど、この体はMPが回復しないみたいなの。だから知恵を貸すわね」

 『儂も戦い方なら教えるぞ!』

 バイセツさんの声は僕だけじゃなくて3人にも聞こえるようになっていた。
 他の人にはワンとしか聞こえないらしい。

 「女神さんは剣、槍、斧の順番がオススメって言ってました」

 「途中に休憩は挟めるようにサービスしてるから~って~」

 「私たちには武器を作る力があるからそれで戦いなさいって、でお兄さんには守る力を与えたって……」

 「これかぁ、あ、あとお兄さんってくすぐったいからワタルでいいよ」

 僕は女神に渡された盾を見つめた、小型の盾、これで守るったってなぁ。
 なんとなく盾に力を入れてみるようい意識してみるとググッと盾が大きくなった。

 「お、これはもしかして……」

 盾の形状が変わるように念じると盾がそれに応じて変化する。
 調子に乗って大きくしたら、滅茶苦茶疲れた。

 「こ、こういう、作りなのね……ハァハァ……」

 『どうやらHPやらMPやらを使っておるようじゃの』

 「なるほど、これを使っているだけで訓練になりそうね」

 「あ! そういえば盾に便利機能つけたって言ってました。鑑定とマジックボックス代わりになるそうです!」

 カイちゃんが教えてくれたとおり、物に向かって念じると盾にしまえた。
 頭の中の収納物データみたいなのを思うと取り出せた。
 この世界にはマジックボックスっていう不思議なスキルがあって、
 ものを入れたり出したり出来てかなり貴重なスキルらしい。これはラッキー、
 異世界転生もののテンプレだけどね。
 もう一つも異世界転生物の代名詞、鑑定スキル。
 これも実在していて持ってるだけで国とか商人とかに引っ張りだこなスキルなそうだ。
 同じように盾を向けると頭の中にデータが出る感じ。便利便利。
 同じようにステータスを確認できたので戦力確認だ。

 イチノセ ワタル
 Lv1 高校生
 HP 120
 MP 30
 Str 7
 Agi 6
 Vit 7
 Int 7
 Luk 10

 スキル 盾操作 勇者の卵 器用 神の料理人 言語理解 大器晩成()

 リク
 Lv1 村娘
 HP 210
 MP 30
 Str 9
 Agi 9
 Vit 8
 Int 6
 Luk 15

 スキル 聖斧の力 頑丈 根性

 カイ
 Lv1 村娘
 HP 150
 MP 100
 Str 7
 Agi 9
 Vit 5
 Int 12
 Luk 13

 スキル 聖槍の力 聡明 天賦の魔力

 クウ
 Lv1 村娘
 HP 310
 MP 220
 Str 11
 Agi 13
 Vit 10
 Int 18
 Luk 50

 スキル 聖剣の力 天才 直感 

 バイセツ
 表示不可

 メディアス
 表示不可


 えっ……僕のステータスひくすぎ……
 クウちゃんすげぇ。

 みんなに教えてあげた。
 盛り上がっている。
 バイセツさんは戦えないことを悔やんでる。
 メディアスさんは戦術考えている。
 僕は落ち込んでいます。

 とりあえずメディアスさんの提案で今日は塔へ行く準備をきちんと整えて、
 明日から万全を期して探索していくことになった。

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