後輩と喫茶店

識詠 碧月

後輩と喫茶店

 昼休みの鐘が鳴ると、俺は財布を片手にデスクを離れる。
 今日は何を食べようか。牛丼にラーメン、そば、うどん、定食、パスタ…
「先輩!待ってください!」
 ラーメンにするか、牛丼にするかまで絞った所で後ろから声を掛けられて振り向くとそこには後輩が居た。
「仕事の事なら休み終ってからにしてほしいんだけど…」
「違いますよ!せっかくですからお昼ご一緒しても良いですか?」
 今日の昼は1人で牛丼のメガ盛りに豚汁おしんこにしようとしたのに、想定外だ…
 だが断る理由なんて無い、後輩は最近頑張っているから労うべきだろう。
「いいぞ、食べたい物とかあるか?好きな物でいいぞ」
「いいんですか!?なら近くに最近出来た喫茶店があるんです!そこに行きませんか?」
 今日はがっつり系で行こうかと思ったが、サンドウィッチ等の軽い物も有りだな。
「よし、なら道案内よろしくな。」
「お任せください!直ぐに着きますよ!」
 その後数分歩いて、目的の喫茶店に着いた。
 テラス席が3席、店内にテーブル席が10席程度で観葉植物が飾ってある、落ち着いた雰囲気の店だった。
「ここ、1人だと入りにくかったので助かりました!」
「一見さんお断りだったりするのか?そんな風には見えないが…」
「あっそうじゃなくて…入ってもらえば分かると思います!」
 後輩は俺の手を引いて店内に引きずって行く。
「いらっしゃいませ、お客様は2名様でよろしいでしょうか?」
 ピシッと制服を着こなした受付が出迎えをしてくれる。
 後輩はいつの間にか俺の後ろに下がっていて、片手で「お願いします!」とジェスチャーを送ってきている…
「そうだ、店内席で禁煙で頼む。」
「かしこまりました、それではご案内させて頂きます」
 整った所作で席へ案内してくれる受付に付いて行き、角の席に座ると直ぐにウエイトレスが水とメニューを持ってくる。
 店内を見渡すと、カップルだったりやり手の社会人らしき人ばかりだった。
 なるほど、後輩はどちらかと言うと活発な方だからな。と納得していると
 先にメニューを開いていた後輩が固まって震えているのに気が付いて、声を掛ける。
「どうした?食べられない物でもあったか?」
「い、いえ…その…思ってたより高くて…」
 言われてメニューを開くとどれも1品1000円を越えていた…
 従業員のレベルからそのくらいはするだろうと判断していたが、後輩はそうじゃなかったようだ。
「ここの会計は俺が持つ、最近頑張ってるみたいだからな。後輩も労うのも仕事の内だ」
「先輩…!ありがとうございます!」
 それぞれサンドウィッチとパスタ、食後のデザートと紅茶とコーヒーを頼んだ。

 ・・・・・・

 料理を食べ終わり、コーヒーを飲みながら…
「先輩!私、お仕事頑張りますね!」
「あぁ、これから忙しくなるから楽しみにしてるよ」
「だから…また一緒に食べましょうね!」 

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