ボーイ・ミーツ・ガール・バイ・ザ・シー
007
「僕も海に――出たい」
幾度となく、否定され続けてきたその言葉。
それはきっとじっちゃんが父さんと同じようになるのを防ぐためだったのだと思うけれど。
けれどじっちゃんは目を瞑り、頷いた。
「お前ももう、独り立ちしてもいいかもしれないな。十二歳だ。そろそろ広い世界を見てもいいだろう」
「それじゃあ……!」
出ても、いいのか。海に! 大海原に!
父さんが、幾つもの海賊が夢見た、あの大海原に!
「ああ、出航して構わんよ。とはいえ、モーターボートしかないから少々現代かぶれかもしれないが」
海に、出ることが出来る。
まさかこんなにも早くそのチャンスがやってくるなんて!
僕はそんなことを思いながら、ミルディアのほうを見た。
喜んでいるのは何も僕だけじゃなかった。ミルディアも僕が海に出ることが出来るということを聞いて笑みを浮かべているようだった。
「はっきり言って、わしは正直まだ認めていないところもあるよ。……だが、いつかはこうなる時が来るとは思っていた。致し方ないとはいえ、本人の意思には何も逆らえないよ」
じっちゃんの言葉は重たく僕に突き刺さった。
そしてじっちゃんは、大きく頷いた。その眼には、涙が溜まっているように見えた。
⚓ ⚓ ⚓
そうして僕とミルディアは海にいた。
じっちゃんやその他の多くの人と別れを告げて。
なぜ急に出て行ったかというと、ミルディアの国からやってきた人たちから逃げるため。そうでもしないと、最初にリードしておかないと直ぐに追いつかれてしまう。
運がよく、夜の海を監視している兵士も居ないようだった。それにしても、港にあれほど大きな船が入港しているとなると迷惑だよなあ……。
「何を見ているのよ、ショータ」
ミルディアはずっと船を見つめている僕にそう問いかけた。
「いいや、何も見ていないよ。……ところで、この海図がほんとうに……」
「ええ、間違いないわ。今は夜だから見ないほうがいいわね。とりあえず夜通し船を動かせる?」
「うん。シルミード鉱石はたくさんもらったからエネルギーも問題ないよ。取り敢えず北……に向かえばいいのかな?」
ミルディアは手にコンパスを載せて、頷く。
「うん。北に向かえば確か島があったはず。先ずはそこまで向かいましょう。大丈夫、きっと朝まであの連中も気付かないよ。戻しに来た、とは言っていたけれど、そこまで大事にはしていないだろうから」
ミルディアはなおも冷静だった。
一体全体、どうして彼女は逃げたがっているのだろう。
きっとそんなこと、僕が質問しても教えてくれないだろうけれど。
こうして僕たちは広い海へと第一歩を踏み出した。
これが長い冒険の始まりになるとは――まだ誰も思わないのだった。
幾度となく、否定され続けてきたその言葉。
それはきっとじっちゃんが父さんと同じようになるのを防ぐためだったのだと思うけれど。
けれどじっちゃんは目を瞑り、頷いた。
「お前ももう、独り立ちしてもいいかもしれないな。十二歳だ。そろそろ広い世界を見てもいいだろう」
「それじゃあ……!」
出ても、いいのか。海に! 大海原に!
父さんが、幾つもの海賊が夢見た、あの大海原に!
「ああ、出航して構わんよ。とはいえ、モーターボートしかないから少々現代かぶれかもしれないが」
海に、出ることが出来る。
まさかこんなにも早くそのチャンスがやってくるなんて!
僕はそんなことを思いながら、ミルディアのほうを見た。
喜んでいるのは何も僕だけじゃなかった。ミルディアも僕が海に出ることが出来るということを聞いて笑みを浮かべているようだった。
「はっきり言って、わしは正直まだ認めていないところもあるよ。……だが、いつかはこうなる時が来るとは思っていた。致し方ないとはいえ、本人の意思には何も逆らえないよ」
じっちゃんの言葉は重たく僕に突き刺さった。
そしてじっちゃんは、大きく頷いた。その眼には、涙が溜まっているように見えた。
⚓ ⚓ ⚓
そうして僕とミルディアは海にいた。
じっちゃんやその他の多くの人と別れを告げて。
なぜ急に出て行ったかというと、ミルディアの国からやってきた人たちから逃げるため。そうでもしないと、最初にリードしておかないと直ぐに追いつかれてしまう。
運がよく、夜の海を監視している兵士も居ないようだった。それにしても、港にあれほど大きな船が入港しているとなると迷惑だよなあ……。
「何を見ているのよ、ショータ」
ミルディアはずっと船を見つめている僕にそう問いかけた。
「いいや、何も見ていないよ。……ところで、この海図がほんとうに……」
「ええ、間違いないわ。今は夜だから見ないほうがいいわね。とりあえず夜通し船を動かせる?」
「うん。シルミード鉱石はたくさんもらったからエネルギーも問題ないよ。取り敢えず北……に向かえばいいのかな?」
ミルディアは手にコンパスを載せて、頷く。
「うん。北に向かえば確か島があったはず。先ずはそこまで向かいましょう。大丈夫、きっと朝まであの連中も気付かないよ。戻しに来た、とは言っていたけれど、そこまで大事にはしていないだろうから」
ミルディアはなおも冷静だった。
一体全体、どうして彼女は逃げたがっているのだろう。
きっとそんなこと、僕が質問しても教えてくれないだろうけれど。
こうして僕たちは広い海へと第一歩を踏み出した。
これが長い冒険の始まりになるとは――まだ誰も思わないのだった。
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