龍と友達になった少年

榊空

少年の過去4

大地の家にソラが住むという話しになった次の日、ソラは病院から連れ出されて、家の前に大地と二人で立っていた。

「ここが、今日からソラが僕たちと一緒に住むことになる家だよ。小さい場所でごめんな」 
「い、いえ、僕の家も同じくらいでしたし。えっと……」
「ん? あー、大丈夫だ。弟にはもう今日来るって伝えてあるから」
「そ、そうなんですか。え、えっと……、今日からよろしくお願いします」
「あはは、よろしくね。よし、じゃあ、入ろうか」
「は、はい」

 大地がドアを開けて、家のなかに入っていく後ろを、少し緊張した様子でついていく。人の家だから落ち着かないのか、きょろきょろと辺りを見渡しながら恐る恐ると入っていく。

「そんなに見ても別になにもないよ?」
「あ、いえ」

 大地がソラのきょろきょろとした様子に微笑みながら、話しかけると急に部屋のドアが開く。

「兄ちゃんおかえり!」
「お、海、ただいま。そうだ、今日から家に住むことになったソラだ。この前言ったろ?」
「おー! お前がソラか! 今日からよろしくな!」
「あ、う、うん。よろしくおねがい……」

 海と呼ばれた子供が嬉しそうな顔で、話しかけるとソラに敬語で頭を下げながら、緊張でガチガチに固まっていた。

「かたいかたい、確か俺と同じ年なんでしょ? 敬語とか使わないでいいよ!」
「え、えっと、その、よろしく」
「おう! よろしくな!」

 そんな様子のソラを見て、海は笑いながらソラの肩を叩く。ソラは肩を叩かれて顔をハッとさせたあと、恥ずかしそうな顔で手を差し出す。海は差し出された手を取って、固い握手した。

「よしよし、なんか仲良くなれそうだな。えっと、妹の美樹はどこにいる?」
「美樹ならまだ上で寝てるよ?」
「まだ、寝てるのか……。まぁ、まだ幼いからしょうがないのかな?」
「よし、ソラ! 美樹を起こしにいこうぜ!」
「え? でも、まだ寝てるんでしょ?」
「まだ寝てる方が悪いんだよ。というか、もうそろそろお昼だしちょうどいいだろ?」
「あー、まぁ、お昼を食べれないのは嫌だろうしね。じゃあ、行こっか!」
「よし、行こう!」

 止める間もなく二回の美樹がいる部屋に走っていった二人を見て、大地は不安そうな顔をさせながら頭をかく。

「あー、行っちまった……、ソラとは今日はじめて会うんだけど、大丈夫なのかな……。結構人見知りな子なんだが」


ま、なんとかなるだろ。と楽観視した言葉を呟きながらリビングの方に向かって昼食の準備を始めた。それと同時に二回の部屋の方から女の子の悲鳴が聞こえた。

「あー、ダメだったのかな?」

 笑いながら悲鳴が聞こえた方に目を向けると、小さくて幼い少女が目に涙をためた状態で走ってくる。

「おー、よしよし。美樹、どうした?」
「大地お兄ちゃん……、みきが部屋で寝てたら、海お兄ちゃんと知らないお兄ちゃんが私の布団をとったの!」
「よしよし、ごめんね。怖かったね」
「あ、兄ちゃん、美樹起こしたよ」
「大地さん。すみません。妹さんがどっか行っちゃいました」
「あはは、ここにいるから大丈夫だよ」
「うー、だれ? 大地お兄ちゃん?」
「美樹には伝えてなかったっけ? 海に教えてっていったはずなんだけど……」

 大地が海を見ると、海が目をそらす。その光景を見た大地は軽くため息をつき、海の頭にチョップをした。

「まったく、教えといてって言っただろうに」
「いや、忘れてて……、ごめん」
「まぁ、いいけどな。次からは気を付けろよ?」
「わかってるよ」
「あー、美樹。今日から一緒に住むことになったソラだ。ほら、自己紹介自己紹介」
「えっと、ソラっていいます。よろしくね?」
「う、うん。ソラお兄ちゃん、よろしくお願いします」
「あ、うん。よろしくね? えっと……」
「美樹でいいよ?」
「じゃあ、よろしくね。美樹」
「うん! ソラお兄ちゃん!」
「じゃあ、またご飯つくったら呼ぶから遊んでおいで」

 大地が笑って見送ると、海と美樹は仲良く外に走っていった。走り去っていった海たちを見て、呆けた表情をしている。ふと大地の方を見ると手を横に振ってきた。そんな大地を見たソラは嬉しそうな顔で海たちを走って追いかけていった。 

「さてと、今日の夜は豪華にする予定だし、昼は普通のご飯でいいよな、なに作ろうかな」

大地は昼御飯を作るときに、困ったような顔をしながらも、楽しげな気分で料理を作り始めた。

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