龍と友達になった少年

榊空

少年の過去2

 少年が目を覚ました時に見えたのは知らない天井だった。

「ここは、どこ?」

 周りを見渡す少年の目に映ったのは、一人の男だった。その男は眠っているらしく、腕を組んだまま椅子に座り目を瞑っている。

「だれ?」

 少年は見たことない男の姿を見て、何故かお礼を言いたくなった。

 ーーなんで、ぼくはありがとうって思ったんだろ?

 不思議な気持ちになった少年だったが、それでも意外にこの気持ちに不快感は感じなかった。

 そんなとき、急にドアが開く。

「大地! 起きろ、任務だ!」
「ちょ、ルカさん! 病人が寝てるんですから静かに……」
「寝てるんだったらいいだろ? ユマは大袈裟だなぁ」
「普通は静かにするものなんですよ。って、あ……」
「ん? どうかしたか?」
「あの、だれ? ですか?」

 ドアを開けて入ってきたのは、背が高く、赤い髪がキレイだが口調が乱暴な女の人と、背が低く、青色の髪をした丁寧な口調の優しそうな女性だった。
 そんな女の人たちは起き上がっている少年を見て、最初嬉しそうな顔をした後、申し訳なさそうな顔で頭を下げる。

「あー、悪い! まさか、起きてるとは思わなくてよ!」
「あの、ごめんなさい! えっと、私の名前はユマで、それで、この人がルカっていうの、怖い人じゃないから大丈夫だからね」
「ルカだ! よろしくな! それと、そこで寝ている男は大地って言う名前だ」
「うるさいと思ったらお前か、ルカ……」
「なんだ、起きてたのかよ」
「起きてたよ、全く……」

 大地と呼ばれた男は、ルカを見ながらため息をついた後、少年の方を見て固まった。

「起きてたのか! 良かった!」
「は、はい。ありがとうございます。でも、その……、なんでぼくはここに?」

 大地は少年が起きていたことに今気付いたのか、嬉しそうに少年の頭を乱暴に撫でる。だが、その後の少年の言葉に、大地は言葉に詰まった。

「あ、うん。そうだな……、君は、どこまで覚えている?」

 その言葉に詰まったのは今度は少年の方だった。

「えっと、僕は……。たしか、そうだ! 僕の誕生会! 今日は誕生日だからって、お母さんとお父さんがお祝いしてくれたんだ!」
「そうか、えっと、それからの記憶はあるかい?」

 大地は少年の嬉しそうに話してる姿を、笑顔で聞いていた。それでも、確かめなければならないことがあるため、笑顔で表情を隠しながら問いかける。

「それから? それから、それから……、急に意識が無くなって、そしたら冷たい部屋にいて、お母さんがいて、お母さんが、僕の、首を……」
「もういいよ、ごめんな。嫌なことを思い出させて、もう大丈夫だから。今日のところはここで寝ててくれ、おやすみ」

 大地はつらそうな表情を隠しきれなくなったのか、少年の頭を優しく撫でた後、ベッドを整えて少年を寝かせる。

「うん、ありがとう。お兄ちゃん」
「別にいいさ、おっと、そうだ! 名前を聞いても良いかい?」
「あ、僕の名前はソラです」
「そうか、ソラ! また、後でくる! そこの赤い女が怖い顔してるからな、早く行かないともっと怖い顔になるんだぜ?」
「いや、しねぇぞ? 勝手に決めんなよ、俺はこんなに可愛い顔してるのに傷付くぜ?」 
「あー、はいはい。悪かった悪かった」
「あはは、ごめんねソラくん。怖いのは顔だけだから本当は優しいんだよ?」
「な、ユマまで! ひどいぜ、傷付いた……」
「あはは、お姉ちゃんたちも面白い人なんだね」
「お、やっと、笑ったな? そんな感じで良いんだよ、子供なんてな」

 ルカはソラの頭の上に手のひらをポンっとのせると、がさつに撫でる。

「じゃ、ちょっとこのバカは借りていくな?」
「誰がバカだ、全く……」
「大地さんを少しの間借りますね? 私たちの任務が終わったら一緒に来ますから、また会いましょう」
「うん! バイバイ! またね?」

 ソラの元気そうな様子に安心したのか、二人はほっとした顔で病室を後にする。

「行っちゃった……、優しい人たちだったなぁ。……お母さんぼくが何かわるいことしちゃったのかな? だから、あんなことになったのかな……。お母さんごめんなさい……」

 元気な様子を見せたとしても、一人になったときに襲いかかってくる不安は誰にでも平等である。ソラは一人で、ごめんなさいと謝りながら涙を流し、泣きつかれたのかそのまま眠ってしまった。




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