優しい希望をもたらすものは?

ノベルバユーザー173744

優希先生の授業です。詳しい人もいます。

それからは、5人と軽く自己紹介をする。

「あ、僕たちは、城北中学校の3年、守谷主李もりやかずい菊池実里きくちみのり、この二人が姉妹で、曽我部優希そがべゆうきと二年生の竜樹たつきです」
「あ、俺は安部祐也あべゆうや大学1年。そして、同級生の清水穐斗しみずあきと。先輩の3年生、一条糺いちじょうただす先輩と、2年生の一条日向いちじょうひなた先輩に松尾醍醐まつのおだいご先輩だよ」

紹介していると、曽我部姉妹は拳を握りしめ、しかも相手側の唯一の女性糺も同様に、

「い、一条さんは糺って、糺の森からですか‼素敵です‼」
「醍醐さんの醍醐は醍醐寺からですか‼豊臣秀吉の醍醐寺の大花見‼」
「菊池くんの『ち』は、『池』?『地』?」

実里は目を遠くする。

同類だ‼この三人‼

しかしその横で、主李は、

「あれ?日向先輩と、糺先輩って……日向糺ひなたただす……?」

年齢未詳、性別未詳、マスコミシャットアウトの新進気鋭の作家である。
とても緻密な情報と、感性に優希も実里からも勧められ読んだのだが、とても感動したのを覚えている。
最初は借りていたのだが、今日帰りに買いに行こうと思っていたのだ。

「えっ?」

優希と竜樹と実里が二人を見る。

「え、嘘~‼」
「本読んだです~‼」
「俺、貸したよな?えぇぇ?」
「いや、俺、もっと読みたくて、今日買いに行こうと思ってて……」

貯金崩した……と告げる主李に、二人ではなく醍醐が、

「これは内緒ですよ?この二人夫婦なんです。それに、家族から逃げているので」
「か、駆け落ち‼すごいです‼」

白馬の王子さま症候群か?

と思った醍醐と日向の前で、優希は、

「だって、結婚ってものすごいパワーが要りますよ?それに、婚姻届にはある程度必要な書類とか用意しなくてはいけませんし、二人で住むところとか、生活も考えなくては行けません。それに、日向先輩も糺先輩もそれだけの覚悟もいったでしょうし、将来までいたいって思えたってことはすごいと思います‼」

と言いきった。
絶句する醍醐と主李と実里に、竜樹は、

「二人で書かれてるんですか?」

とこてんっと首をかしげ、糺は照れくさそうに答える。

「情報と言うか、色々探すのはひなちゃんが多いの。私は書くことが多いの。それに、炊事洗濯掃除も分担なのに、頼っちゃって……」
「それは、執筆と大学と重なったときだろう?大丈夫だ」
「ひなはツンデレなんですよ。目付きは悪いですが、優しいですよ」

醍醐の一言に、頬をうっすら染めて、つんっとそっぽを向く。

「うるさい‼」
「先輩。一緒に回りませんか?そして、一緒に食事に行きませんか?」

祐也の一言に、糺がずいっと前に出る。

「ちょっと待って~‼その前に菊池くんの『池』か『地』かぁぁ~‼教えてぇぇ‼」
「……池です」
「やったぁぁ‼メモメモ~( 〃▽〃)」
「個人情報は駄目だぞ?すぅ」
「大丈夫~‼」

『地』と『池』か大事なのか?

と思う、実里であった。



アーサー・コナン・ドイルの時代は、ヴィクトリア女王、生没年1819~1901年、在位1837~1901年と重なっている。
ヴィクトリア女王は現在のエリザベス女王……正式には現在のエリザベス二世女王陛下に在位期間が越えるまでは、イギリス国王のなかでもっとも長く即位した女王である。

「アッ!これは、ヴィクトリア王朝時代のドレスの変化ですね。1840~50年代はペチコート、コルセット、シュミーズと言う具合に、フルセットです。その後はコルセットがクリノリンに変わったくらいです。ペチコートは飾り用の下着で、コルセットはウエストを絞って、細く見せるそうです。『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラが最初の時に絞めているシーンがあるのですが、細くて45センチほどまで絞ったそうですよ?」
「よ、45センチ‼」
「はい、日本だったら大黒柱にしがみついて、『息を吐きなさい‼せーの‼』で絞めるんです。ひどいときにはあまりの苦しさに気絶するそうです」

主李はくらくらする。

「そこまで絞ったら、気絶すると思う……」
「それに、日本の十二単じゅうにひとえと言うか、皇后陛下の正装である御五衣おんいつつぎぬ唐衣からごろももかなり重いそうです。昔は髪も長く伸ばしていたので、かなりの重さになったと思います。で、クリノリンは、鯨の髭や針金等で作られたもので、コルセットに変わったのです。シュミーズは内側に着込むものですね……」

説明していく様子を、感心する主李。

「うわぁ……こんなに大変なのか……」
「産業革命も関わってくるので、それまでは大量生産もできませんでしたから、手作りにこだわっているんですよ。今だったら当たり前のミシンも1850年頃です。今回はヨーロッパでもイングランドを中心ですので、違うのですが、ドイツのシュタイフ社の創始者マルガレーテ・シュタイフと言う方は、ミシンを使って、ぬいぐるみやテディベアを作ったんです」
「シュタイフ社で一番最初に売れたのは象の針刺しなんだよ」

今までずっとおとなしかった穐斗が口を開く。

「で、テディベアは1902年」
「わぁぁ‼ご存じなんですか?」

優希に、エヘヘと照れたように、

「僕のお母さん、テディベア作家なの」
「えぇぇ‼すごい‼テディベアですか‼作ってみたいです‼」
「あ、えっと、キットもあるから作る?」
「えっ‼出来るんですか?」

穐斗は優しいよりも可愛らしく笑う。

「うん。今度僕のうちに来る?あ、皆でね?」
「わぁぁ‼うれしいです。あ、穐斗さん。でも、構わないんですか?」
「良いよ」

目をキラキラさせる優希である。

「……シュタイフ社のテディベアって、テディガールが綺麗で、大好きです‼それにアルフォンゾとエリオットです」
「あ、お母さん、テディガールのレプリカを家に飾ってる。あ、僕は実家、別の地域だから……」
「わぁぁ‼欲しいなぁって思うんですけど、とっても……」
「うんうん。お母さんも言っていたけど、解る~‼」
「でも、メリーソート社のテディベアのチーキーも不思議で可愛いです‼あの、入り口の売店にチーキーがいたので、見て帰ろうかなって」

エヘヘ……。
優希は照れ笑う。
主李と実里と竜樹は知らないが、5人は、あぁと頷く。
チーキーは、限定100体など少ない数が多い。
シュタイフ社でも限定は少ないが、それでも厳密に『テディベア』に分類できる、手足が動く、首が動く、首の後ろにこぶがあると言った特徴のテディベアは大きさによって値段は変わるが、それでも中学生のお小遣いでは買えない。
チーキーもそれぞれ値段が変わっていくのだ。

「じゃぁ、後で見てみましょう、ね?」

糺の言葉に、にっこり笑う。

「はい‼じゃぁ、一杯お話ししますね‼」

大学生も舌を巻く説明会が始まったのだった。
しかしありがたいのは、まだ周囲に気を使って、それでも問いかけられたら説明するスタイルを貫く姿である。



「俺たちより大人だな……」

日向が醍醐に呟いたのだった。

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