JKは俺の嫁

ノベルバユーザー91028

第13話 学園の七不思議②



長い歴史と伝統を誇る、『私立桜ノ宮学園』に代々伝わる七不思議には以下のものがある。


1.理科室の笑うホルマリン漬け
2.美術室の動くダビデ像
3.プールで泳ぐ謎の人影
4.家庭科室の幽霊
5.体育館でバスケットするナニカ
6.ひとりでに鳴り出すトイレの音姫
7.まだ明らかにされていない7つ目


そう。6つ目までは目撃証言があるのに、7つ目を発見できた者はまだいないのだ。そして、理央達三人はまだ見ぬ7つ目を見つけるために夜の学校に居残っていたのだった。
–––––だが。


赤銅色に輝く半分以上欠けた月が、ぼんやりと光を放っていた。空の大部分が分厚い雲に覆われ、今にも雨が降り出しそうに思える。
ホーホーと何処かから梟の鳴き声が虚ろに響き、ザァ……と生ぬるい風が吹き渡る。カサカサ梢が立てる音もまた、厭な空気を醸し出していた。


住宅街の真ん中に、ぽつんと立つ桜ノ宮学園の校舎の中を三人の女子生徒が歩いていた。三嶋叶子、篠原紗英、春田理央の残念美少女三人組である。
「結局さ、7つ目がどこで見られるかがわかんないと見当もつかないよね。あーあ、今回はムリそうかなー」
ぐるぐると校舎の中を歩き回りながら、理央が残念そうに呟く。
「分かるぅ、てゆーか疲れたしもー帰ろーよー」
今ドキの若者らしく、享楽的な一面がありつつも飽きっぽい紗英は、眠そうに目を擦っている。
「ちょっともー何言ってんのさ、そこのお二人さんは!祭りはまだまだこれからでしょーが!飽きんの早すぎぃ!」


しかし、言い出しっぺである叶子だけが異常なほどに燃えていた。
学園関係者(生徒や保護者、教師など)相手に校内の情報を売りつける「情報屋」をこっそり営む彼女は、今回見つけた7つ目の不思議も「商品」にするつもりなのである。ゆえに躍起になっていた。
しかし、巻き込まれた形になった理央と紗英にとっては、心の底からどうでもいいことだ。さっさと終わらせてくれないかなあ、くらいにしか思ってない。


「そういえば、私達って完全に7つ目狙いだけど、他の不思議って裏取れてるの?」
ふと疑問に思ったことを理央が尋ねると、叶子は自慢げに答えた。
「ふっふっ、当たり前っしょ!全部正体は掴んでるし、あんたが気にかけてた家庭科室の幽霊についてもきちんと調べ上げてますよっ」
「えっ、ちょっとそれ本当⁉︎……なら、家庭科室に出るのは一体何者なの?」
「かのん」
「えっ、……え?」
そして彼女はニンマリと笑いながら、家庭科室の噂について真実を明かした。
初耳にもほどがあるネタの数々に、理央は開いた口が塞がらない。
「だから、かのんだってば。あいつが夜にこっそり忍び込んで、一人でお菓子作ってた……っていうのが真相。どう、これでスッキリした?」
「ええー……、あいつは一体何をやってるんだか。たまに寝不足っぽいのはそういうことだったのね。はぁ、ほんとにもう仕方ないんだから」
頭痛が痛いみたいな顔でため息を吐き、くだらないオチに理央は肩を落とした。それなりの謂れを期待したというのに、現実というのはちょっとしょっぱすぎるではないか、と言いたげだ。


「他は?他は何かあんの?」
紗英からワクワクと期待に満ちた眼差しを向けられ、叶子はうっと後退する。どうやら他の不思議についてもオチはショッパイらしい。誠に残念すぎる。
「……ええっとね。他、他かぁ……。そのう、理科室のアレはホルマリンに漬ける前にうっかり触って笑ったみたいに変形した、っていうのが真相で……、」
プールの件は水泳が趣味な体育教師がこっそり練習していた。
美術室の噂については、そもそもアレは絡繰仕掛けなので誰でも動かせる。
トイレの音姫が勝手に鳴り出すのは、単なる故障なのでとっくに学校側へ連絡済みとのこと。
体育館でバスケしていた者は地元の不良が忍び込んでプレイしていたのがバレただけらしく、これも解決している。


「……だから、私は7つ目に掛けてんのよ。もしコレがホンモノだったら絶対ネタになるもん。頼むっ、これだけはオカルトなオチでありますよーに!」
ついに願掛けし始めた叶子は、恐ろしいまでに真剣な眼差しを虚空に向けている。よほど今回のネタが「売れる」と確信しているらしい。
「でもぉ、なんでカナっぺって情報屋なんてしてんのー?ウチ的にはチョイダサくね?っていうかー」
理央としては紗英の口調もどうかと思っていたが、確かにその疑問には頷けた。最初にそれを聞いた時には思わず中二病か何かかと笑いそうになったくらいだ。
「ええっ、ちょおマジでそれ訊いちゃう??あんまきにせんといてよぉ……」
どうやらあまり知られたくない事情があるようだ。ジョークで誤魔化してはいるが、表情は「関わるな」とハッキリ告げている。
「……まあ、追及するなって言われたらしないけどさ。あんまり危ないことに首を突っ込んだら駄目だよ?」
「そーそー!やっぱ心配するしい。カナっぺってたまーに迂闊なとこあるし!」
クラスメイト二人に指摘され、彼女も照れたように頭を掻いた。
「うう、すまんのう……。まあ、あんた達に火の粉が降りかかんないよーにはしとくから。それにしても、それっぽいのは全然見当たらないねぇ……」
「確かに……。やっぱり7つ目なんかないのかな?」
「ヤバイよ理央、カナっぺ!もうすぐ10時になっちゃう!うええん、見たいドラマあったのにぃー!」


特別教室など、怪しそうなところはだいたい確認したが、もしかしたら漏れがあったのかもしれない。
と、そこで思い出したかのように理央が二人に問いかけた。
「ねぇ……あのさ、一つ聞きたいんだけど、私達って自分の教室は見たっけ?」
愕然と叶子が目を見開く。紗英も不意を突かれたように口をぽかんと開けた。
「あ、そういや……全然見てないかも」
「うわっ、まさかと思うけどウチらの教室に出るのっ?えぇ、やだよそんなの、ネタになんかなんないじゃーん!」
制服スカートのポケットから各教室の鍵束を取り出し、ゴクリと息を呑みながら叶子は言い放った。


「よしっ。二人とも、確認しにいくよ」

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