双眸の精霊獣《アストラル》
#1 白き猫は悲劇をもたらす【5th】
「猫の……擬人化?」
「はい。信じられないかもしれませんが、事実です。わたしが雨の中ダンボールに入っていたのは、助けを求めていました。蓮さんのような、優しい人を」
「な、何だよ……それ」
戸惑う俺に、ミラ(?)は更に説明を続ける。
「わたしは今、命を狙われています。最初は応戦しようとしていたんですが、やはり敵うはずもなく逃げてきました。そもそも精霊獣は、パートナーとなる存在がいてこそ真の力を発揮できるんです。でもわたしにそんな人はいません。だから、決めたんです。わたしを拾ってくれる方をパートナーにしようって」
「――ふざけんなッ!」
気づけば、俺は叫んでいた。
「何でお前が、命を狙われなきゃならねぇんだ!? それと拾ってくれる方をパートナーに……って、俺を騙してただけじゃねぇか!」
分かってる。今更責めてもどうにもならないって。
だけど、止められなかった。やめろやめろと心が告げているのに、俺の口は勝手に言葉を紡ぎ出す。
「そんなの、アニメの中だけにしてくれ! 信じられねぇよ!」
「すいません。でも信じてください! 早くしないと殺されてしまうわたしにとって、手段は選んでいられなかったんです。それに猫の姿なら、敵の目も欺けるかと思ったので」
確かに、その通りなんだろう。何より、深刻な様子のミラが嘘をついているようには見えなかった。
でも、駄目だ。止めたくても、止められない。
「俺はただ、猫が飼い主に捨てられたと思ったんだ。そんな姿が、まるで昔の俺を見ているみたいで……放っとけなくて、だから拾ってきただけだ!」
そしてついに、言ってしまった。その決定的な一言を。
「なのに俺を、そんな意味の分からないことに巻き込むつもりなら――ここから出て行ってくれッ!」
やってしまった……と思った時にはもう既に遅かった。
ミラはどこか憂いを帯びた顔付きで、静かに立ち上がる。
「……すいません、でした。さようなら。蓮さん、あやめさん」
生気のない声音で呟き、ミラは家を出ていく。
「ぁ――」
俺は声にならない声を漏らすも、ただその酸楚な背中を見つめるばかり。
何で、こうなったんだろう。
ついこの間まで俺とあやめの二人だけだったのに、ミラがいなくなった途端、何故か部屋が広く感じた。
もうミラとは会えないのかもしれない。俺がしたことは間違っているのかもしれない。
そんな考えを掻き消し、自室に戻る。
「兄貴ぃ、言いすぎだよぉ! 本当によかったのぉ!?」
後ろで喚くあやめをひたすら無視して。
「はい。信じられないかもしれませんが、事実です。わたしが雨の中ダンボールに入っていたのは、助けを求めていました。蓮さんのような、優しい人を」
「な、何だよ……それ」
戸惑う俺に、ミラ(?)は更に説明を続ける。
「わたしは今、命を狙われています。最初は応戦しようとしていたんですが、やはり敵うはずもなく逃げてきました。そもそも精霊獣は、パートナーとなる存在がいてこそ真の力を発揮できるんです。でもわたしにそんな人はいません。だから、決めたんです。わたしを拾ってくれる方をパートナーにしようって」
「――ふざけんなッ!」
気づけば、俺は叫んでいた。
「何でお前が、命を狙われなきゃならねぇんだ!? それと拾ってくれる方をパートナーに……って、俺を騙してただけじゃねぇか!」
分かってる。今更責めてもどうにもならないって。
だけど、止められなかった。やめろやめろと心が告げているのに、俺の口は勝手に言葉を紡ぎ出す。
「そんなの、アニメの中だけにしてくれ! 信じられねぇよ!」
「すいません。でも信じてください! 早くしないと殺されてしまうわたしにとって、手段は選んでいられなかったんです。それに猫の姿なら、敵の目も欺けるかと思ったので」
確かに、その通りなんだろう。何より、深刻な様子のミラが嘘をついているようには見えなかった。
でも、駄目だ。止めたくても、止められない。
「俺はただ、猫が飼い主に捨てられたと思ったんだ。そんな姿が、まるで昔の俺を見ているみたいで……放っとけなくて、だから拾ってきただけだ!」
そしてついに、言ってしまった。その決定的な一言を。
「なのに俺を、そんな意味の分からないことに巻き込むつもりなら――ここから出て行ってくれッ!」
やってしまった……と思った時にはもう既に遅かった。
ミラはどこか憂いを帯びた顔付きで、静かに立ち上がる。
「……すいません、でした。さようなら。蓮さん、あやめさん」
生気のない声音で呟き、ミラは家を出ていく。
「ぁ――」
俺は声にならない声を漏らすも、ただその酸楚な背中を見つめるばかり。
何で、こうなったんだろう。
ついこの間まで俺とあやめの二人だけだったのに、ミラがいなくなった途端、何故か部屋が広く感じた。
もうミラとは会えないのかもしれない。俺がしたことは間違っているのかもしれない。
そんな考えを掻き消し、自室に戻る。
「兄貴ぃ、言いすぎだよぉ! 本当によかったのぉ!?」
後ろで喚くあやめをひたすら無視して。
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