双眸の精霊獣《アストラル》

果実夢想

#1 白き猫は悲劇をもたらす【3rd】

 昨日の雨が嘘みたいに炎天下の中、帰路につく。

 うー、六月でもさすがに暑いな。晴れ渡った青空が恨めしい。

 ただいま、ギネスに挑戦できるんじゃないかというくらい発汗してます。

 何で二日連続でびしょびしょにならなくちゃならないんだ。またシャワーを浴びないといけなくなってしまったじゃないか。

 一人で悪態をつきながら家の中へ入る。

 あやめの靴がないところを見ると、どうやらまだ帰ってきていないようだ。

 ならその間にシャワーを浴びようと思い服を脱ぎ、浴室の扉を開ける。誰も入っていないことを信じて。

「…………ッ!」

 そして、絶句した。

 いたのだ。風呂場の中に人が。しかも少女――もとい幼女が。全裸で。シャワーを浴びていた。

 シャンプーのついた、身の丈ほどもある白銀の髪。

  百七十ある俺の身長に、約マイナス五十したくらいのスモールサイズ。

 きめ細かな純白の肌、大きくてつぶらな双眸。

 そして何より人目を引くのは、頭頂の真っ白な耳と丸っこいお尻から生えた尻尾。

 そう、まるで猫のような――。

「……って、何じろじろ見てるんですか!」

 と、幼女が頬を染め、小さな容姿に似つかわしく甲高い声音で言う。やべぇ、超可愛い。

「いやぁ、ほら。俺ってロリコンだから、幼女の裸には興味あるんだよ」
「そんなことを真顔で言わないでください!…………それと、あの……その……」

 怒声が発せられた直後、突然ある一点を見つめたままこれ以上ないくらい真っ赤な顔になって俯く謎の天使。

 何だろうと思い、視線を下へ――と、そこではたと気付く。

 俺、裸じゃん。ということはこの子にも全部見えているということで……。

「…………」

 俺は恥ずかしさのあまり、無言でそっと扉を閉めた。

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