異世界の村で始める獣人とのハーレム生活
第69話悲痛な想い
知らなかった。
「もしかして本気で忘れてるんですか? まさかもう老化が……」
「違うそうじゃないんだ。これには事情があって」
いや、忘れていただけなのかもしれない。
「何てね、冗談ですよカエデさん。あなたが記憶がないのは知っていますから、私」
「え?」
「お姉ちゃんが亡くなる直前まで文通をしていたんですよ。だから事情は知っています。勿論お姉ちゃんが亡くなっていることも」
ルチリアに妹がいたなんて。あの惨劇で生き残ったのは二人だけだと聞いていたから、てっきり血縁関係の人はいないと思っていた。
「と言っても私達血は繋がっていませんし、住んでいる場所も違ったから会っていたとしてもほとんど覚えていなくて当然ですよね」
「血の繋がっていないって、つまり腹違いとかなの?」
「細かく言うと違いますけど、大体そんな感じです」
そう笑顔で言うルーシャちゃん。というか見れば見るほど小さいなこの子。喋り方がしっかりしているだけで、本当はまだ小学生くらいなのではないかと思ってしまう。
「また失礼な事を考えていませんでしたか?」
「え、いや、そんな事ないよ。それよりルーシャはどうしてここにいたの?」
「実は私もここで調べ物をしたくて、よく使わせてもらっているんです。カエデさんもですか?」
「そんな感じになるかな」
「抵抗は感じないんですか? だってこの場所は」
「もうそこまで知っているのか」
「言ったじゃないですか、大体の事は分かっているって」
それなら何故彼女もその場所に、わざわざ来ているのか分からない。彼女にとってもこの場所は辛い場所なではないだろうか。
「ここに来ているのは、ルチリアを弔う意味もあるんだけどさ、今度ここに避難してくる事がほぼ決まったんだよ」
「避難? どういう事ですか?」
「その辺りの事情は複雑だから、あまり話せないんだけど」
「もしかして、最近争いが絶えない事と関係があるんですか?」
「えっと、いや、それは」
恐らくルーシャちゃんが言っているのは、俺達が最近カルマと戦っているせいで、少なからず島民にも迷惑がかかっている事を言っているのだろう。
「じゃあやっぱりなんですね」
「やっぱり?」
「やっぱりカエデさんがお姉ちゃんを殺したんですね!」
「っ!?」
それはずっと考えないようにしてきた事。もしあの時この場所に調べ物をしに来なければ、ルチリアは死ぬ事はなかったのではないかと。
彼女も連れてラビリンズ王国の事を調べなければ、悲劇は起きなかったのだと。
間接的に俺がルチリアを殺してしまったのではないかと。
「ルーシャちゃん、俺は」
「気安く私の名前を呼ばないでください! 貴方が……貴方がこの世界に来なければお姉ちゃんは……お姉ちゃんは……」
俺にもたれかかるように体を寄せ、そしてその小さな拳で何度も何度も叩いてくる。
「返してくださいよ、お姉ちゃんを! 私のお姉ちゃんを返してください、カエデ!!」
ルーシャの怒りと悲しみのこもった声は、ずっと静かな書庫中に鳴り響き続けた。
「返して……返してよぉ」
俺はそれを、ただ受け止め続ける事しか出来なかった……。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
その日はルーシャの事も心配だったので図書館島に泊まる事にした。とは言えど、先ほどの事もあってか、どうにも居心地が良くない。
「……」
「……」
先程から一度もお互いに会話をしておらず、本を読んだりなどそれぞれが適当な時間を過ごしていた。
(気まずい……)
もうこの重々しい空気がかれこれ二時間近く続いている。
「帰らないんですか?」
その重さに耐えかねていると、ルーシャの方から話しかけてきた。ただ先程とは違って、とても冷たい。
「心配だから今日は泊まっていくよ。一人でこんなところに泊まったら危険だろ」
「余計なお世話です」
「それでもいいよ」
再びの沈黙。どうやら無理やり追い出す気はなさそうだった。
(俺のせい、か)
ルチリアが死んだのはルーシャからしたら俺のせいに見えてもおかしくないのは分かる。そこに俺だって責任を感じているし、モカだって同じように感じていた。
「なあルーシャ」
「……」
「お前が、その、俺を恨む気持ちは分かる。俺も恨まれて当然だとも思っている。だからその責任はちゃんと果たさせてほしいんだ」
「別に私はカエデさんを恨んでいません。だから責任を果たすとかそんな事はどうでもいいんです」
「ならどうすれば」
「ただ一つ、私のお願いを聞いてください」
「お願い?」
それで少しでも贖罪できるなら、喜んで叶えるが、一体ルーシャの願いとは……。
「私と結婚してください」
「……はい?」
何故か俺はいきなりプロポーズされました。
「今私はとある事情からこの場所に逃げ出してきたんです。でもいつかは戻らないといけないので、私の結婚相手になってくれませんか? お姉ちゃんの為にも」
「ルチリアの為にも?」
いやいやそうだとしても、結婚だなんてそんなハードルが高すぎる事はできない。
「流石にそれは無理なお願いじゃ……」
「なら、別の方法で私を助けてください。さっきも言いましたけど、今私は逃げ出してきている身なので、本当は戻りたくないんです」
「って言われても、詳しい話を聞かないと俺には」
「なら、貴方はカルマという男のの名前を知っていますか?」
「え? カルマ?」
俺はここで思わぬ人物の名前を聞き、ルチリアの事件とモカの事、そしてルーシャの事が一つに繋がっている事にようやく気付かされたのであった。
「もしかして本気で忘れてるんですか? まさかもう老化が……」
「違うそうじゃないんだ。これには事情があって」
いや、忘れていただけなのかもしれない。
「何てね、冗談ですよカエデさん。あなたが記憶がないのは知っていますから、私」
「え?」
「お姉ちゃんが亡くなる直前まで文通をしていたんですよ。だから事情は知っています。勿論お姉ちゃんが亡くなっていることも」
ルチリアに妹がいたなんて。あの惨劇で生き残ったのは二人だけだと聞いていたから、てっきり血縁関係の人はいないと思っていた。
「と言っても私達血は繋がっていませんし、住んでいる場所も違ったから会っていたとしてもほとんど覚えていなくて当然ですよね」
「血の繋がっていないって、つまり腹違いとかなの?」
「細かく言うと違いますけど、大体そんな感じです」
そう笑顔で言うルーシャちゃん。というか見れば見るほど小さいなこの子。喋り方がしっかりしているだけで、本当はまだ小学生くらいなのではないかと思ってしまう。
「また失礼な事を考えていませんでしたか?」
「え、いや、そんな事ないよ。それよりルーシャはどうしてここにいたの?」
「実は私もここで調べ物をしたくて、よく使わせてもらっているんです。カエデさんもですか?」
「そんな感じになるかな」
「抵抗は感じないんですか? だってこの場所は」
「もうそこまで知っているのか」
「言ったじゃないですか、大体の事は分かっているって」
それなら何故彼女もその場所に、わざわざ来ているのか分からない。彼女にとってもこの場所は辛い場所なではないだろうか。
「ここに来ているのは、ルチリアを弔う意味もあるんだけどさ、今度ここに避難してくる事がほぼ決まったんだよ」
「避難? どういう事ですか?」
「その辺りの事情は複雑だから、あまり話せないんだけど」
「もしかして、最近争いが絶えない事と関係があるんですか?」
「えっと、いや、それは」
恐らくルーシャちゃんが言っているのは、俺達が最近カルマと戦っているせいで、少なからず島民にも迷惑がかかっている事を言っているのだろう。
「じゃあやっぱりなんですね」
「やっぱり?」
「やっぱりカエデさんがお姉ちゃんを殺したんですね!」
「っ!?」
それはずっと考えないようにしてきた事。もしあの時この場所に調べ物をしに来なければ、ルチリアは死ぬ事はなかったのではないかと。
彼女も連れてラビリンズ王国の事を調べなければ、悲劇は起きなかったのだと。
間接的に俺がルチリアを殺してしまったのではないかと。
「ルーシャちゃん、俺は」
「気安く私の名前を呼ばないでください! 貴方が……貴方がこの世界に来なければお姉ちゃんは……お姉ちゃんは……」
俺にもたれかかるように体を寄せ、そしてその小さな拳で何度も何度も叩いてくる。
「返してくださいよ、お姉ちゃんを! 私のお姉ちゃんを返してください、カエデ!!」
ルーシャの怒りと悲しみのこもった声は、ずっと静かな書庫中に鳴り響き続けた。
「返して……返してよぉ」
俺はそれを、ただ受け止め続ける事しか出来なかった……。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
その日はルーシャの事も心配だったので図書館島に泊まる事にした。とは言えど、先ほどの事もあってか、どうにも居心地が良くない。
「……」
「……」
先程から一度もお互いに会話をしておらず、本を読んだりなどそれぞれが適当な時間を過ごしていた。
(気まずい……)
もうこの重々しい空気がかれこれ二時間近く続いている。
「帰らないんですか?」
その重さに耐えかねていると、ルーシャの方から話しかけてきた。ただ先程とは違って、とても冷たい。
「心配だから今日は泊まっていくよ。一人でこんなところに泊まったら危険だろ」
「余計なお世話です」
「それでもいいよ」
再びの沈黙。どうやら無理やり追い出す気はなさそうだった。
(俺のせい、か)
ルチリアが死んだのはルーシャからしたら俺のせいに見えてもおかしくないのは分かる。そこに俺だって責任を感じているし、モカだって同じように感じていた。
「なあルーシャ」
「……」
「お前が、その、俺を恨む気持ちは分かる。俺も恨まれて当然だとも思っている。だからその責任はちゃんと果たさせてほしいんだ」
「別に私はカエデさんを恨んでいません。だから責任を果たすとかそんな事はどうでもいいんです」
「ならどうすれば」
「ただ一つ、私のお願いを聞いてください」
「お願い?」
それで少しでも贖罪できるなら、喜んで叶えるが、一体ルーシャの願いとは……。
「私と結婚してください」
「……はい?」
何故か俺はいきなりプロポーズされました。
「今私はとある事情からこの場所に逃げ出してきたんです。でもいつかは戻らないといけないので、私の結婚相手になってくれませんか? お姉ちゃんの為にも」
「ルチリアの為にも?」
いやいやそうだとしても、結婚だなんてそんなハードルが高すぎる事はできない。
「流石にそれは無理なお願いじゃ……」
「なら、別の方法で私を助けてください。さっきも言いましたけど、今私は逃げ出してきている身なので、本当は戻りたくないんです」
「って言われても、詳しい話を聞かないと俺には」
「なら、貴方はカルマという男のの名前を知っていますか?」
「え? カルマ?」
俺はここで思わぬ人物の名前を聞き、ルチリアの事件とモカの事、そしてルーシャの事が一つに繋がっている事にようやく気付かされたのであった。
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