異世界の村で始める獣人とのハーレム生活
第65話衝突する想い
雫の悲痛な言葉を聞きながら、俺はポカルミ村へと帰還する。雫を彼女の部屋で一度寝かした後、ポチとミルフィーナと俺の三人で集会所に集まった。
「じゃあモカさんもカグヤさんも一命は取りとめたんだな」
「ああ。ただ、私達の治療だけじゃ限界もあるだろうし、一度島の病院に連れて行った方がいいかもな」
「私もそう思います」
「村から動くのはリスクがあるけど、それは確かに必要だな」
今まで何度もお互いで治療をし合っていたが、あくまで俺達は素人。特に今回は二人とも重傷なことから、リスクを背負ってでも山を降りる必要が出てくる。
特にカグヤさんはこの島の島長だ。もしもの事が起きてしまってからでは遅い。
「シズクちゃんの方はどうなっているんだ?」
「雫は普段使わない力を使ったから疲れたんだろうな。大きな傷とかはないけど、しばらくは休ませた方がいいと思う」
「そうか。とりあえず全員無事に戻ってこれたんだよな」
「とりあえずそこは安心できますね。でも一つ考えなければならない事がありますね」
「考えなきゃいけない事?」
「私達の村の事ですよ」
「待ったミルフィーナ、それは」
「ポチ、気持ちは分かりますがこの先の事を考えると真剣に考えないといけないと思います」
俺はミルフィーナが何を言おうとしているのか分かった。
それはポカルミ村の移転。
カルマ達との戦いで確実に分かった事は、もうこの場所を隠す事が出来なくなり始めている事。それをミルフィーナも俺も、そしてポチも理解している。
「この村を手放せというのか、ミルフィーナは」
「手放せとまでは言いませんが、これ以上この村に居続ける事が何より危険な事だと思うんです。カエデ君もそう思いますよね?」
ミルフィーナはいつもの力の抜けた言い方ではなく、しっかりとした口調で俺に訪ねてくる。その様子からミルフィーナが真剣なのが伝わってくる。
「俺も真剣に考えた方がいいと思っているよ」
「カエデ、お前まで」
「だってそうだろ?今の俺達に大切な事は、皆の安全だ。一度この村を離れる事も考えるべきなんじゃないか」
「私は反対だ。ここは私達三人でずっと暮らしてきた場所なんだ。その場所から離れるなんて考えたくない!」
「あ、おいポチ!」
ポチは怒りに任せて集会所から出て行ってしまう。
「カエデ君、私は冗談のつもりで言ったつもりはないんです。この村から一度離れるのは私も辛いですが、今はそれが一番大事なんですよ」
「分かっているよ。きっとポチだってそうだと思う」
でもそれを受け入れるのが彼女は嫌なんだと思う。正直俺も心の隅ではここから離れるのが嫌だと思ってしまっている。
だから複雑な気持ちだった。
「とにかく今は時間を置いて、ゆっくり考えよう」
「はい……」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
事件から二日後、村には悪い空気が流れ続ける中で最初に目を覚ましたのはモカさんだった。
「あれ……私……」
「よかったモカ、目を覚ましたんだな」
「カエデ君……」
たまたま彼女の看病をしていた俺は、モカさんが目を覚ました事に早くに気がつく事ができた。
「あの後どうなったんですか? カルマは? シズクちゃんは?」
「カルマは雫が撃退したよ。と言っても最終的に見逃してもらう形になったけどな」
「シズクちゃんが私の為に? どうしてそんな無茶を」
「あいつはモカさんを侮辱された事に怒ったらしい。私の親友を侮辱するなんて許せなかった、だって」
「シズクちゃん……」
モカは嬉しかったのか、悲しかったのか少しだけ涙を流した。そして目を覚ましてからしばらく落ち着いた後に、改めて今回の事件について話す事になった。
「やはり私達を最初捕まえようとしたのは、偽物だったんですね」
「ああ。正体がバレた途端に逃げ出して行ったよ」
「やはりカルマの狙いは、この島ごと乗っ取ろうという考えだったんですね。偽物の島長を作り上げて」
「そういう事になるな」
「という事はこの島にい続ける事も危険になってきたかもしれませんね」
「やっぱりそう考える、よな」
「やっぱりとはどういう事ですか?」
「実はそうするべきじゃないかって、ミルフィーナが二日前に言い出したんだよ」
俺は先日の一件をモカに話す。その事によって今村では分裂の危機にある事も。
「ポチさんはこの場所を手放したくないって考えているんですね」
「ああ。でもその気持ちは分からなくもないんだ。俺もここを離れるのは嫌だって気持ちもある」
「それなら……いい機会かもしれませんね」
「いい機会?」
「誰も辛い思いをせずに今の事態を解決する方法が一つだけあります」
「それってまさか」
「私があの場所に戻る事です」
それはこの一ヶ月間練ってきた作戦を根底から覆す選択肢であり、一番最悪な選択肢だった。
「それだけは駄目だ。皆で協力するって決めたんだから、モカだけを帰すわけにいかない」
「勘違いしないでくださいカエデ君。私は捕まりに戻るわけではなく、ラビリンズを奪還する為に戻るんです」
「それだったら俺達も付いて行きますよ」
「今の状況からして、多くの人数が動くわけにはいきません。だからここは、私一人で行かせてください」
何かの決意を固めたかのように真っ直ぐに俺を見つめながらモカは言う。それだけ今回の事件が彼女にとって辛いものになったのかもしれない。
だけどそれでも俺は……。
「なら俺だけでも付いて行きますよ、モカさん」
彼女を一人にする事はできなかった。
「じゃあモカさんもカグヤさんも一命は取りとめたんだな」
「ああ。ただ、私達の治療だけじゃ限界もあるだろうし、一度島の病院に連れて行った方がいいかもな」
「私もそう思います」
「村から動くのはリスクがあるけど、それは確かに必要だな」
今まで何度もお互いで治療をし合っていたが、あくまで俺達は素人。特に今回は二人とも重傷なことから、リスクを背負ってでも山を降りる必要が出てくる。
特にカグヤさんはこの島の島長だ。もしもの事が起きてしまってからでは遅い。
「シズクちゃんの方はどうなっているんだ?」
「雫は普段使わない力を使ったから疲れたんだろうな。大きな傷とかはないけど、しばらくは休ませた方がいいと思う」
「そうか。とりあえず全員無事に戻ってこれたんだよな」
「とりあえずそこは安心できますね。でも一つ考えなければならない事がありますね」
「考えなきゃいけない事?」
「私達の村の事ですよ」
「待ったミルフィーナ、それは」
「ポチ、気持ちは分かりますがこの先の事を考えると真剣に考えないといけないと思います」
俺はミルフィーナが何を言おうとしているのか分かった。
それはポカルミ村の移転。
カルマ達との戦いで確実に分かった事は、もうこの場所を隠す事が出来なくなり始めている事。それをミルフィーナも俺も、そしてポチも理解している。
「この村を手放せというのか、ミルフィーナは」
「手放せとまでは言いませんが、これ以上この村に居続ける事が何より危険な事だと思うんです。カエデ君もそう思いますよね?」
ミルフィーナはいつもの力の抜けた言い方ではなく、しっかりとした口調で俺に訪ねてくる。その様子からミルフィーナが真剣なのが伝わってくる。
「俺も真剣に考えた方がいいと思っているよ」
「カエデ、お前まで」
「だってそうだろ?今の俺達に大切な事は、皆の安全だ。一度この村を離れる事も考えるべきなんじゃないか」
「私は反対だ。ここは私達三人でずっと暮らしてきた場所なんだ。その場所から離れるなんて考えたくない!」
「あ、おいポチ!」
ポチは怒りに任せて集会所から出て行ってしまう。
「カエデ君、私は冗談のつもりで言ったつもりはないんです。この村から一度離れるのは私も辛いですが、今はそれが一番大事なんですよ」
「分かっているよ。きっとポチだってそうだと思う」
でもそれを受け入れるのが彼女は嫌なんだと思う。正直俺も心の隅ではここから離れるのが嫌だと思ってしまっている。
だから複雑な気持ちだった。
「とにかく今は時間を置いて、ゆっくり考えよう」
「はい……」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
事件から二日後、村には悪い空気が流れ続ける中で最初に目を覚ましたのはモカさんだった。
「あれ……私……」
「よかったモカ、目を覚ましたんだな」
「カエデ君……」
たまたま彼女の看病をしていた俺は、モカさんが目を覚ました事に早くに気がつく事ができた。
「あの後どうなったんですか? カルマは? シズクちゃんは?」
「カルマは雫が撃退したよ。と言っても最終的に見逃してもらう形になったけどな」
「シズクちゃんが私の為に? どうしてそんな無茶を」
「あいつはモカさんを侮辱された事に怒ったらしい。私の親友を侮辱するなんて許せなかった、だって」
「シズクちゃん……」
モカは嬉しかったのか、悲しかったのか少しだけ涙を流した。そして目を覚ましてからしばらく落ち着いた後に、改めて今回の事件について話す事になった。
「やはり私達を最初捕まえようとしたのは、偽物だったんですね」
「ああ。正体がバレた途端に逃げ出して行ったよ」
「やはりカルマの狙いは、この島ごと乗っ取ろうという考えだったんですね。偽物の島長を作り上げて」
「そういう事になるな」
「という事はこの島にい続ける事も危険になってきたかもしれませんね」
「やっぱりそう考える、よな」
「やっぱりとはどういう事ですか?」
「実はそうするべきじゃないかって、ミルフィーナが二日前に言い出したんだよ」
俺は先日の一件をモカに話す。その事によって今村では分裂の危機にある事も。
「ポチさんはこの場所を手放したくないって考えているんですね」
「ああ。でもその気持ちは分からなくもないんだ。俺もここを離れるのは嫌だって気持ちもある」
「それなら……いい機会かもしれませんね」
「いい機会?」
「誰も辛い思いをせずに今の事態を解決する方法が一つだけあります」
「それってまさか」
「私があの場所に戻る事です」
それはこの一ヶ月間練ってきた作戦を根底から覆す選択肢であり、一番最悪な選択肢だった。
「それだけは駄目だ。皆で協力するって決めたんだから、モカだけを帰すわけにいかない」
「勘違いしないでくださいカエデ君。私は捕まりに戻るわけではなく、ラビリンズを奪還する為に戻るんです」
「それだったら俺達も付いて行きますよ」
「今の状況からして、多くの人数が動くわけにはいきません。だからここは、私一人で行かせてください」
何かの決意を固めたかのように真っ直ぐに俺を見つめながらモカは言う。それだけ今回の事件が彼女にとって辛いものになったのかもしれない。
だけどそれでも俺は……。
「なら俺だけでも付いて行きますよ、モカさん」
彼女を一人にする事はできなかった。
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